退職代行

退職代行モームリ事件は何が問題?サービス選びで確認したい7つの注意点

毎日満員電車に揺られ、「今日も会社に行きたくない」とため息をつく。限界を迎えて、お守り代わりに調べていた退職代行サービス。

そこに飛び込んできた「退職代行モームリの事件」というニュース。

「え、退職代行を使ったら私も捕まるの?」
「弁護士監修って書いてあるのにダメだったの?」
「どこを信じればいいか分からない…もう自分で退職を言うしかないのかな」

そんな風にパニックになり、絶望していませんか。
痛いほどわかります。私もかつて、毎日の激務と理不尽な上司に精神をすり減らし、辞める勇気が出ずに夜な夜なスマホで「退職代行 安全」と検索し続けていた一人ですから。

結論からお伝えすると、退職代行というサービス自体が違法になったわけではありません。
ただ、今回の事件でハッキリしたのは、「知名度があるから」「弁護士監修と書いてあるから」という表面的な理由だけで業者を選ぶと、足元をすくわれる可能性があるという厳しい現実です。

もうこれ以上、会社で消耗したくない。でも、業者選びで失敗して新たなトラブルを抱え込むのだけは絶対に避けたいですよね。

この記事では、法律の難しい話は極力抜きにして、同じく悩める会社員だった私の視点から「モームリ事件で何が起きたのか」、そして「会社と揉めずに、明日から出社しないための確実な業者の選び方」を泥臭く紐解いていきます。

まずは、契約前に絶対に確認してほしい7つのポイントを先にお見せしますね。

【重要】退職代行を契約する前に確認したい7つの注意点
1. 運営会社と運営主体(誰がやっているか)が明記されているか
2. 契約相手と料金の支払先は誰か
3. 実際に会社へ連絡するのは誰か
4. 対応範囲と対応できない内容がハッキリしているか
5. 交渉(有給消化など)が必要になった場合の対応が明確か
6. 返金条件・追加料金・サポート終了時期が明確か
7. 自分の状況が「法律トラブル」に該当していないか

このチェックリストの本当の意味。そして、あなたに合った安全な依頼先はどこなのか。
焦る気持ちを少しだけ落ち着けて、一緒に確認していきましょう。

退職代行モームリ事件では何が起きたのか

「逮捕」「有罪」といった強い言葉だけがネット上で一人歩きしていますが、まずは事実を冷静に整理しましょう。
焦って「退職代行は全部危険だ!」と思い込むのは、せっかくの「逃げるための選択肢」を自分から捨ててしまうことになります。

事件の経緯を時系列で整理する

そもそも、なぜ大手の退職代行サービスが摘発されたのか。これまでの経緯をざっくりと時系列でまとめました。

時期 出来事
2024年頃〜 モームリ運営会社が、法的トラブルを抱えた利用者を特定の弁護士に紹介。その見返りとして紹介料(広告費名目など)を受け取っていたとされる。
2026年2月 警視庁が弁護士法違反(非弁提携など)の疑いで、モームリ運営会社の当時の代表や、紹介を受けていた弁護士らを逮捕。
2026年4月 モームリが新規の退職代行受付を再開。
2026年8月4日(現在) 紹介を受けた弁護士と弁護士法人に対して、東京地裁で有罪判決が出ている。モームリの元代表者らについては裁判が進行中(8月28日に判決予定)。

ニュースを見て「退職を代行すること自体が罪になったの?」と勘違いした人も多いかもしれません。でも、実はそうではないんです。

退職代行を使うべきケース・使わなくても辞められるケース

問題になったのは弁護士への利用者紹介と紹介料

この事件の核心は、「退職の電話を代わりにしたこと」ではありません。
問題視されたのは、「弁護士資格を持たない民間企業が、法律のトラブルを抱えたお客さんを特定の弁護士に紹介し、その紹介料を受け取っていたこと」です。

法律の世界では、弁護士ではない人や法人が、報酬目的で法律事件の間を取り持つこと(周旋)を厳しく禁じています。要するに、「うちのお客さんを紹介するから、バックマージンをちょうだいね」というやり取りが弁護士法違反に問われた、というのがこの事件の本質。

だからこそ、利用者であるあなたが「退職の意思を伝えてもらうこと」自体が罪に問われているわけではないのです。そこは安心してください。

有罪判決が出た部分と裁判中の部分を分けて考える

ここで注意したいのは、「誰がどう裁かれているのか」という現在地です。
執筆時点(2026年8月4日)では、お金を払って紹介を受けていた側の「弁護士と弁護士法人」にはすでに有罪判決が出ています。

一方で、モームリの運営会社や元代表者に対する判決は2026年8月28日に予定されており、まだ確定していません。
ネットの書き込みを見ると、すべてが「有罪確定の悪徳業者」のように書かれていたりしますが、裁判の進行状況と認定された事実は分けて考える必要があります。

私たち利用者が気にすべきなのは、業者の叩き合いではなく「じゃあ、これからどうやって安全なサービスを見分ければいいのか」という一点だけです。

モームリは現在も利用できるのか

「で、結局モームリは今やってるの?」という疑問について。
事実として、2026年4月に新規受付を再開しており、サービス自体は現在も利用可能です。

ただ、「営業しているから、自分のケースでも完全に安全に使えるか」というのは全く別の話。現在の利用規約や運営体制がどう変わったのか、自分の抱えている悩みが「法律のトラブル」に発展しそうにないか。そこを慎重に見極める必要があります。

「みんなが使ってるから大丈夫だろう」と思考停止して依頼するのは、過去の私を含め、失敗する人の典型的なパターンです。

モームリ事件は「退職代行自体が違法」という話ではない

モームリの事件を知って、「やっぱり自分で退職届を出すしかないのか…」と絶望しているあなたへ。
もう一度言いますが、退職代行サービスそのものがこの世から消滅したわけでも、すべてが違法になったわけでもありません。

民間業者がやってもいいことと、やってはいけないことの「境界線」を、ここでスッキリさせておきましょう。

退職意思を本人の代わりに伝えること

あなたが「明日から会社に行きたくありません。退職します」というメッセージを書いた手紙を、友達に代わりに持っていってもらう。これ自体は全く違法ではありませんよね。

これと同じで、民間企業の退職代行が「〇〇さんが退職したいと言っています」と、あなたの言葉をそのまま会社へ伝える(伝達する)行為自体は、弁護士法違反にはなりません。
単なる「使者」として動く分には、民間業者でも問題なく機能します。

退職条件を伝えることと交渉することの違い

トラブルになりやすいのは、会社側が「はい、わかりました」と素直に引き下がらないケースです。

「有給を全部消化してから辞めたいです」と業者が会社へ伝える。
会社側が「いやいや、引き継ぎもしてないのに有給なんて認めないよ」と反発する。

ここで、業者が「法律では有給の権利が認められています!消化させてください!」と会社と言い合いを始めたらアウト。これが「交渉」です。
伝達(伝えるだけ)はOKでも、交渉(条件について話し合い、法的な主張をする)は、原則として弁護士か、実態のある労働組合しかやってはいけないルールになっています。

非弁行為と事件の周旋をわかりやすく説明する

少しだけ難しい言葉が出ますが、自分の身を守るために「非弁行為(ひべんこうい)」と「周旋(しゅうせん)」という言葉だけは覚えておいてください。

  • 非弁行為: 弁護士の資格がないのに、お金をもらって法律トラブルの交渉や示談などをすること。(例:未払い残業代の交渉を民間業者がする)
  • 周旋: 法律トラブルを抱えた人を、報酬目的で弁護士に紹介すること。(今回のモームリ事件で問題になった部分)

「会社と揉めそうだな」「有給の交渉をしてほしいな」と思った時点で、単なる民間業者に依頼するのはリスクが高すぎます。
途中で「うちではこれ以上交渉できません」と匙を投げられ、会社からは怒りの電話が鳴りやまない……。そんな最悪の事態だけは避けなければいけません。

モームリ事件から分かる退職代行選びの3つの教訓

「結局のところ、大手が一番安心なんでしょ?」

過去の私は、副業のツール選びでも何でも、思考停止で「業界No.1」や「口コミ多数」という言葉に飛びついては何度も失敗を繰り返してきました。毎日往復3時間の通勤で疲れ切った頭では、細かい規約なんて読みたくもない。手っ取り早く「正解」が欲しかったからです。

でも、今回のモームリ事件が私たちに突きつけたのは、「表面的なキャッチコピーだけを信じてはいけない」という残酷な現実。
自分の身を守り、明日から本当に会社へ行かずに済む状況を作るために、ここからお話しする3つの教訓だけは絶対に胸に刻んでください。

知名度や利用実績だけでは運営体制を判断できない

「SNSのフォロワーが何万人もいるから」
「テレビで紹介されていたから」
「利用実績が○万件を突破しているから」

これらはすべて「マーケティング(集客)が上手い」という証明にはなりますが、「法律的に安全な運営体制である」という証明には一切なりません。

今回の事件でも、モームリは非常に知名度が高く、多くの人が利用していたサービスでした。だからこそ衝撃が大きかったわけですが、利用者がどれだけ多くても、裏側の提携構造(誰が誰にお金を払い、誰が対応しているのか)までは、外から見えにくいという現実があります。

私たちが本当に知るべきなのは、「どれだけ有名か」ではなく、「万が一会社とトラブルになりかけたとき、自分を守ってくれる権限を持っているか」なのです。

「弁護士監修」と弁護士が直接受任することは違う

ここは、最も多くの人が勘違いしているポイントかもしれません。当時の私も完全に騙されていました。

「弁護士監修って書いてあるし、何かあれば弁護士が対応してくれるんでしょ?」

いいえ、違います。
「弁護士監修」というのは、あくまで「うちのサービスのマニュアルや業務フローは、弁護士の先生に見てもらって適法だと確認していますよ」という意味に過ぎません。

あなた自身の退職トラブルに対して、その監修弁護士が前面に出て会社と戦ってくれるわけではないのです。
もし会社側が「無断欠勤だ!損害賠償を請求する!」と怒鳴り込んできたとき、民間業者の「弁護士監修」サービスでは盾になれません。「うちではこれ以上対応できないので、ご自身で弁護士を探してください」と言われて放り出されるリスクがある。これが「監修」と「直接依頼」の決定的な壁です。

「労働組合提携」の一言だけでも判断できない

「民間がダメなら、労働組合が運営している退職代行なら安全だよね」

そう思ったあなた。半分正解ですが、残り半分には大きな落とし穴があります。
確かに、労働組合には「団体交渉権」という強力な権利があるため、会社に対して有給消化などの交渉を行うことができます。

しかし、最近増えているのが「退職代行ビジネスのために作られた、実態の怪しい労働組合」です。
ホームページには「労働組合提携」とデカデカと書かれているのに、いざフタを開けてみると、窓口の対応も交渉もすべて民間企業が丸投げでやっていて、組合は名前を貸しているだけ……というケース。

もし会社側から「その労働組合は実態がないから、団体交渉には応じない!」と突っぱねられたら、交渉はストップしてしまいます。
「労働組合提携」という文字だけで安心せず、誰が交渉のテーブルにつくのか、しっかり見極める必要があるのです。

民間・労働組合・弁護士による退職代行の違い

教訓を踏まえた上で、「じゃあ結局、誰に頼めばいいの?」という疑問に答えていきます。

退職代行の依頼先は、大きく分けて「民間業者」「労働組合」「弁護士」の3つ。
それぞれ「できること」と「できないこと」の線引きが明確に決まっています。どれが一番優れているというより、「今のあなたの状況にどれが合っているか」で選ぶのが正解です。

まずは全体像をざっくりと比較表で見てみましょう。

項目 民間業者 労働組合 弁護士
費用の目安 1〜3万円 2〜3万円 3〜10万円
退職の意思伝達 ◯ 可能 ◯ 可能 ◯ 可能
有給消化の交渉 × 不可(非弁行為) ◯ 可能(団体交渉権) ◯ 可能
未払い給与の請求 × 不可 △ 限界あり ◯ 可能
裁判・法的トラブル対応 × 不可 × 不可 ◯ 可能
おすすめな人 とにかく安く辞めたい人、会社と一切揉める要素がない人 有給を消化して辞めたい人、コスパ良く安全に辞めたい人 ハラスメント被害がある人、会社から訴えられそうな人

退職代行の選び方|民間・労働組合・弁護士の違いを比較

民間の退職代行ができること

民間業者の最大のメリットは、なんといっても「安さ」と「スピード」です。
「明日からどうしても行きたくない」「有給なんていらないから、とにかく退職の意思だけを会社に伝えてほしい」。
そういったシンプルな希望だけで、会社側もすんなり退職を認めてくれそうな環境であれば、民間業者でも十分目的は果たせます。

ただし、先ほどもお伝えした通り「交渉」は一切できません。会社から「引き継ぎが終わるまで辞めさせない」と反発された場合、押し切る法的な力はないことだけは覚悟しておく必要があります。

労働組合の退職代行ができることと確認点

私が、過去の自分と同じように迷っている会社員に最も現実的な選択肢として提示したいのが、この「労働組合」です。

労働組合(ユニオン)に加入する形をとることで、労働組合法に基づく「団体交渉権」が使えます。これによって、「有給を消化させてください」「退職日を○日にしてください」といった条件交渉が合法的に可能になります。
弁護士に依頼するほどの高い費用は出せないけれど、有給はきっちり貰って辞めたい(これだけで代行費用は余裕で回収できます)。そんなコスパと安全性のバランスを取りたい人に最適です。

ただし、確認点として「運営主体が明確に労働組合であること」「自分がその組合に加入する手続き(組合費の支払いなど)が規約に明記されていること」は必ずチェックしてください。

弁護士による退職代行が必要になるケース

最強のカードが「弁護士」です。
費用は少し高くなりますが、法律のプロフェッショナルがあなたの代理人として前面に出てくれるため、安心感は桁違いです。

とくに、以下のような事情を抱えているなら、迷わず弁護士一択だと私は断言します。
・何ヶ月も残業代が未払いになっている
・上司からのパワハラやセクハラで精神的な被害を受けている
・「辞めるなら損害賠償を請求してやる」と会社から脅されている
・懲戒解雇にされそうで揉めている

民間や労働組合では、こうした深刻な法的トラブルや裁判沙汰には対応できません。お金をケチって取り返しのつかない事態になるくらいなら、最初から法的代理人である弁護士に守ってもらうべきです。

退職代行を契約する前に確認したい7つの注意点

民間、労働組合、弁護士。それぞれの違いはなんとなく分かった。
「じゃあ、いざ申し込もう!」とスマホをスクロールし始めたあなた。ちょっとだけ待ってください。

かつての私がそうだったように、通勤電車の中で疲れた頭を抱えながら、スマホの小さな文字で「利用規約」を読むのは本当にしんどいですよね。早く楽になりたくて、つい「同意する」のチェックボックスをポチッと押したくなる気持ち、痛いほどわかります。

でも、モームリ事件の教訓を思い出しください。
業者選びで失敗して、会社から直接怒りの電話が鳴り続ける……そんな地獄を見ないために、契約の直前、ここから挙げる7つのポイントだけは、歯を食いしばって確認してください。

運営会社と運営主体が明記されているか

まず大前提として、「誰がこのサービスを運営しているのか」をハッキリさせましょう。
サイトのいちばん下にある「運営者情報」や「会社概要」のページをチェック。そこに、会社名、代表者名、所在地がきちんと記載されているか。もし「○○事務局」といった曖昧な名前しか書かれておらず、住所がバーチャルオフィスだったりする場合は、警戒レベルを引き上げてください。

トラブルが起きたとき、責任の所在がふんわりしている業者ほど怖いものはありません。

契約相手と料金の支払先は誰か

ここ、意外と見落としがちな重要ポイントです。
特に「労働組合」を謳っているサービスを利用する場合、あなたが契約を結び、お金を支払う相手は「労働組合」であるべきです。

それなのに、振込先の口座名義が「株式会社〇〇」という民間企業になっていたら?
それは、実質的に民間企業がメインで動いていて、労働組合は名前を貸しているだけの「なんちゃって提携」である可能性が高くなります。自分が誰と契約しているのか、お金の流れは必ず追ってください。

実際に会社へ連絡するのは誰か

「弁護士監修」「労働組合提携」とデカデカと書かれていても、実際にあなたの会社へ電話をかけるのは誰でしょうか。

いざフタを開けてみたら、対応するのは民間企業のアルバイトやコールセンターのスタッフだった、というケースは珍しくありません。交渉権を持たないスタッフが電話をかけて、会社側から「お前らじゃ話にならん!本人を出せ!」と詰められたら、そこでジ・エンド。
「電話をかける担当者は誰か」「その人は交渉する権利を持っているか」を、無料相談の段階で遠慮なく突っ込んで聞いてみましょう。

対応範囲と対応できない内容が明記されているか

甘い言葉ばかりを並べる業者より、「うちではこれはできません」とハッキリ書いている業者の方が、よっぽど信用できます。

たとえば「有給消化の要望は伝達しますが、会社が拒否した場合の交渉はできません」と規約に明記されていれば、それは誠実な民間業者です。逆に、民間業者なのに「有給も100%取らせます!」と断言しているなら、非弁行為(弁護士法違反)に足を踏み入れている危険な業者の可能性大。
「できないこと」を隠さない業者を選びましょう。

交渉が必要になった場合の対応が明確か

あなたが「ただ辞めるだけ」を希望していても、会社側が「損害賠償を請求する」と突然言い出すリスクはゼロではありません。

そんな不測の事態が起きたとき、業者はどう動くのか。
「弁護士に引き継ぎます(別料金)」なのか、「当組合の顧問弁護士が対応します」なのか、それとも「法的トラブルになった時点でサポートは終了します」なのか。
最悪のケースを想定した「逃げ道」が用意されているかを確認してください。

返金条件・追加料金・サポート終了時期が明確か

「退職できなかったら全額返金!」という謳い文句、よく見かけますよね。
でも、規約をよく読むと「当社が指定する条件を満たした場合のみ」と小さく書かれていたりします。

また、深夜の対応や、会社への電話回数によって追加料金が発生しないか。退職届を出したあとの「離職票」や「源泉徴収票」が自宅に届くまで、きちんとサポートは継続されるのか。
お金を払った途端に連絡が途絶えた……なんてことにならないよう、サポートの「終わり」の定義をすり合わせておくことが大切です。

自分の問題が法律トラブルに該当しないか

最後は、あなた自身の状況についての確認です。
未払い残業代が何十万円もある。上司からの強烈なパワハラでうつ病の診断書をもらっている。有期雇用契約(契約社員など)の途中でどうしても辞めたい。

こうした状況は、すでに立派な「法律トラブル(またはその一歩手前)」です。
この状態で、安さにつられて民間業者や実態の怪しい労働組合に依頼するのは、火に油を注ぐようなもの。自分の状況がこじれている自覚があるなら、迷わず弁護士に直行してください。

こんな広告表現だけで退職代行を選ばない

マーケターとして普段から広告を作っている私だからこそ、断言できることがあります。
それは、「キャッチコピーは、都合の悪い事実を隠すための魔法の言葉になり得る」ということ。

心が弱っているときほど、力強い広告表現にすがりたくなりますよね。でも、以下の言葉が並んでいたからといって、無条件で信用するのは今日で終わりにしましょう。

「退職成功率100%」

この数字のカラクリ、わかりますか?
多くの業者は、「会社と揉めそうで退職が難しそうな案件」は、無料相談の段階で依頼を断ります。つまり、失敗しそうな案件を最初からカウントしていないだけなのです。

あるいは、途中で会社と法的トラブルになり、業者が「これ以上は対応できません」とさじを投げた場合。これを「退職失敗」ではなく「サポート対象外により終了」として処理すれば、成功率は100%のままキープできます。
「100%」という数字は、あなたの退職を保証する魔法の数字ではありません。

「弁護士監修」

先ほどもお伝えした通り、「監修」と「直接対応」は天と地ほど違います。
広告の目立つところに弁護士の腕組み写真が載っていると、いかにもその人が助けてくれそうに見えますよね。でも、その先生は「業務マニュアルに目を通しただけ」かもしれません。

「弁護士が直接、私の代理人として会社と交渉してくれますか?」
この質問に対して「YES」と答えられないなら、それはただの権威借りです。

「労働組合提携」

これも要注意。「提携」という言葉の曖昧さを利用したパターンです。
本当に労働組合として交渉権を行使してくれるなら、「提携」ではなく「労働組合が運営」と書けるはず。

提携という言葉の裏には、「窓口対応と集客は民間企業(株式会社)がやっていて、いざという時だけ組合の名前を使いますよ」という歪んだ構造が隠れていることがあります。モームリ事件で問題になったのも、まさにこの「いびつな提携構造」でした。

「業界最大手・相談実績○万件」

実績の多さは、確かに安心材料の一つです。実績が多い=それだけ場数を踏んでいる、ノウハウが蓄積されている、という側面はあります。

でも、「過去に1万人が無事に辞められた」ことと、「複雑な事情を抱えた『あなた』が安全に辞められること」は別問題。
自分の置かれている状況(ハラスメントの有無、有給の残日数、会社の体質)を無視して、「大手だから大丈夫だろう」と丸投げするのはリスクが高すぎます。

「即日退職・会社と一切連絡不要」

「今日からもう会社に行かなくていい!」
限界を迎えた心には、悪魔的に響く言葉です。

でも、厳密に言えば、法律上は「退職の申し入れから2週間(※民法の場合)」を経過しないと退職は成立しません。「即日退職」のカラクリは、退職日までの期間を「欠勤」や「有給消化」で繋ぐことで、結果的に「今日から出社しなくて済む状態」を作っているだけなのです。

さらに「会社と一切連絡不要」についても、業者は会社に対して「本人には直接連絡しないでください」と“お願い”することしかできません。法的拘束力はないため、ルールを無視する強引な会社であれば、あなたのスマホに着信が残る可能性はゼロではない、という現実を知っておいてください。

自分の状況に合った退職代行の選び方

ここまで読んで、「注意点は分かったけど、結局私の場合はどこに頼めば正解なの?」と頭を抱えているかもしれません。

難しく考える必要はありません。あなたの今の状況に合わせて、パズルのピースをはめるように選定すればいいだけです。
毎日の激務で疲労困憊していると、つい「とにかく一番安いところ!」とか「一番上に表示されたところ!」と反射的に飛びついてしまいがち。過去の私もまさにそうでした。

でも、ここは一度深呼吸。以下の3つのパターンのうち、自分がどこに当てはまるかだけ、静かに自分へ問いかけてみてください。

【状況別】あなたに最適な退職代行の選び方

  • A:有給消化の希望なし・会社と揉める要素ゼロ
    「民間業者」(とにかく安く、早く辞めたい)
  • B:有給をすべて消化して辞めたい・少し引き留められそう
    「労働組合」(コスパ良く、確実に条件を勝ち取りたい)
  • C:未払い残業代がある・パワハラを受けている・会社から脅されている
    「弁護士」(費用をかけてでも、徹底的に自分を守り抜きたい)

退職意思を伝えてもらうだけでよい人

「有給なんて1日も残っていないし、未払い給与もない。ただただ、もう上司の顔を見たくないし、自分から辞めると言い出せないだけ」

もしあなたの状況がこれなら、民間業者の退職代行で十分です。
交渉ごとは一切発生しないため、業者が「〇〇さんが退職届を出します」と会社に伝えるだけで、あっさりと退職手続きが進む可能性が高いからです。費用も1〜2万円台と最も安く抑えられます。

ただし、会社側から「人手不足だから今月いっぱいは来い!」と強要された場合、民間業者では言い返すことができません。会社が素直に退職を認めてくれるような関係性・環境であることが前提条件になります。

有給や退職日について話し合いたい人

「せっかくなら残っている有給を全部消化してから辞めたい」
「退職日を月末に調整してほしい」

こうした希望が少しでもあるなら、選ぶべきは労働組合が運営・交渉を行う退職代行です。
会社側が「引き継ぎもしないで有給なんてふざけるな」と反発してきても、労働組合には法的に認められた「団体交渉権」があるため、堂々と有給消化の交渉ができます。

費用は民間業者より少し上がり、2〜3万円台が相場。ですが、有給が数日でも消化できれば、その分の給与で代行費用は余裕でお釣りがきます。最もコストパフォーマンスが高く、安全に退職できるバランスの良い選択肢です。

未払い賃金やハラスメントなどがある人

「毎月何十時間もタダ働きさせられている」
「上司から日常的に暴言を吐かれていて、うつ病の診断書がある」
「辞めるなら懲戒解雇にするぞと脅されている」

もし1つでも当てはまるなら、迷う余地はありません。今すぐ弁護士による退職代行(法律事務所)へ相談してください。

これは単なる「退職の悩み」ではなく、すでに「労働事件・法律トラブル」に発展しています。民間業者や労働組合では対応しきれず、途中で放り出されるリスクが極めて高い状態。
費用は5万円〜10万円以上かかることもありますが、未払い残業代の請求や、悪質なハラスメントに対する慰謝料請求で、結果的に大きくプラスになるケースも少なくありません。

自分の身を守るための「最強の盾と剣」を手に入れる。そう割り切って、ここはケチらずにプロの法律家を頼るべき局面です。

弁護士の退職代行が必要なケース

モームリを利用中・利用予定だった人はどうすればよいか

「実はもうモームリに申し込んで、料金も払っちゃったんですけど……」
「無料相談の途中でニュースを見て、怖くてLINEを無視してます」

もしあなたが今、まさにそんな状況にいるなら。まずは落ち着いてください。
ネット上には「違法サービスを使ったお前も同罪だ」なんて心無い言葉を投げる人もいますが、退職代行を利用しただけのあなたが罪に問われることはありません。

ただ、今後の対応については、少し冷静に立ち回る必要があります。

事件を知っただけで慌てて判断しない

先ほどもお伝えした通り、執筆時点(2026年8月4日)において、モームリは2026年4月から新規受付を再開しており、サービスそのものは稼働しています。

「事件のニュースを見たから」という理由だけで、焦って自分から「やっぱりキャンセルします!返金してください!」と喧嘩腰で突撃するのは得策ではありません。まずは業者の現在の動きと、自分の案件がどこまで進んでいるか(すでに会社に連絡がいっているのか、まだ相談段階か)を冷静に把握しましょう。

契約内容と現在の対応範囲を再確認する

営業が再開されているとはいえ、過去の提携体制(弁護士への紹介)が問題視された以上、サービスの提供範囲や利用規約が以前とは変わっている可能性があります。

現在利用中の方は、担当者に直接確認してみてください。
「私の案件で、もし会社側と有給のことで揉めた場合、具体的に誰が、どうやって対応してくれるんですか?」と。
ここで明確な回答が返ってこなかったり、「うちでは交渉できません」と突き放されたりした場合、自分の希望(有給消化など)が叶わないリスクが出てきます。

契約書・利用規約・やり取り・支払記録を保存する

これは退職代行に限らず、私が副業のビジネスツールを契約するときにも徹底している「自衛の基本」です。

LINEのやり取りの履歴(スクリーンショット)、振込明細、ウェブサイト上の利用規約、送られてきた契約書。これらはすべて、手元に保存しておいてください。
万が一、「退職できなかったのに返金されない」「途中で連絡が取れなくなった」といったトラブルに発展した際、これらの記録があなたを守る強力な証拠になります。

法律問題があるなら弁護士へ直接相談する

もし、あなたがモームリ(あるいは他の民間業者)に依頼中で、会社から「無断欠勤の損害賠償を払え!」といった法的な脅しを受けているなら。
そのまま業者に任せ続けるのは危険です。民間業者では法的な対応ができないからです。

この場合は、業者を介さずに、あなた自身で直接、労働問題に強い弁護士へ相談してください。
「現在、民間の退職代行を使っているが、会社から損害賠償をチラつかされていて困っている」と正直に伝えれば、弁護士が法的な代理人として火消しに入ってくれます。

退職代行モームリ事件に関するよくある質問

ここまで、モームリ事件の全体像と、安全な業者の選び方をお話ししてきました。

「だいぶ頭の整理がついてきた」という方もいれば、「いや、やっぱりまだちょっと怖いな」と足踏みしている方もいるはず。私自身、何か新しいサービスを使うときは、不安要素がゼロになるまで検索し続けてしまうタチなので、その慎重さは大正解だと思います。

そこで、SNSや知恵袋などでよく飛び交っている「モームリ事件と退職代行への疑問」を、Q&A形式でサクッとまとめました。

モームリ事件で退職代行自体が違法になったのですか?

いいえ、退職代行というサービス自体が違法になったわけではありません。

今回の事件で警察が動いたのは、「弁護士資格のない業者が、法律トラブルを抱えた利用者を特定の弁護士に紹介し、その見返りとしてお金(紹介料)をもらっていた」という部分です。これを「周旋(しゅうせん)」と呼び、弁護士法で禁止されています。

つまり、業者があなたの代わりに「辞めます」と会社へ伝える(伝達する)行為そのものが犯罪とされたわけではない、ということです。

民間企業の退職代行を使った利用者も罪に問われますか?

利用者であるあなたが罪に問われることは絶対にありません。

あなたはあくまで「サービスにお金を払ったお客さん」に過ぎないからです。違法な運営体制をとっていた業者側、あるいは不正にお金を受け取っていた弁護士側が裁かれる問題であり、利用者が逮捕されたり罰則を受けたりすることはないので安心してください。

弁護士監修と書かれていれば安全ですか?

「弁護士監修=安全で確実」という思い込みは、今日で捨ててください。

「監修」というのは、業者のマニュアルやサービスの流れを弁護士がチェックしているだけの状態。いざあなたの退職で会社側とトラブル(損害賠償の請求や有給の拒否など)が起きたとき、その弁護士があなたの前に立って会社と戦ってくれるわけではありません。
本気で会社と戦う必要があるなら、「監修」ではなく「弁護士に直接依頼」する必要があります。

労働組合運営なら必ず交渉できますか?

これも「NO」です。労働組合には法的に認められた「団体交渉権」がありますが、それはあくまで「実態のある真っ当な労働組合」に限った話。

退職代行の交渉権だけを目的に作られたような「名ばかり労働組合」の場合、会社側から「そんな実態のない組合との交渉には応じない」と突っぱねられるリスクがあります。
契約書や支払先をしっかり確認し、メインで動いているのが民間企業(株式会社など)ではないか、見極めることが重要です。

会社が退職代行からの連絡を拒否したらどうなりますか?

もしあなたが民間業者を使っていて、会社側が「本人からの直接の電話以外は一切受け付けない!」と完全拒否の姿勢をとった場合。民間業者には強制力がないため、手詰まりになってしまう可能性が高いです。

ですが、これが「労働組合」や「弁護士」からの連絡であれば話は別。
労働組合の団体交渉を正当な理由なく拒否することは「不当労働行為」という違法行為になり得ますし、弁護士(法的な代理人)からの連絡を無視すれば、会社側も裁判などの法的リスクを負うことになります。
だからこそ、自分の会社の体質に合わせて「誰に依頼するか」を選ぶ必要があるのです。

モームリは現在も利用できますか?

はい、モームリ自体は2026年4月に新規受付を再開しており、現在もサービスとして利用することは可能です。

ただし、ここまで何度もお伝えしてきたように「サービスが動いていること」と「あなたの抱えている悩みを安全に解決できるか」は別問題。
現在の利用規約や対応範囲をしっかり確認し、自分の状況(有給消化の有無、未払い給与の有無など)と照らし合わせて、自己責任で冷静に判断してください。

まとめ|退職代行は知名度ではなく対応体制で選ぶ

最後に、一番大切なことをお伝えします。

退職代行を使うことは、決して「甘え」でも「逃げ」でもありません。
毎朝、吐き気をこらえて満員電車に乗り、心をすり減らしながら会社の理不尽に耐え続けてきた。そんなあなたが、これ以上自分を壊さないために選ぶ「自分を守るための正当な手段」です。

ただ、その「逃げ道」を選ぶときに、焦りや不安から足元をすくわれないでほしい。かつての私のように、キャッチコピーだけを見て思考停止で飛びつくような失敗はしてほしくない。

だからこそ、契約ボタンを押す前に、以下の7つだけは必ずチェックしてください。

【再確認】退職代行を契約する前の7つの注意点
1. 運営会社と運営主体が明記されているか
2. 契約相手と料金の支払先は誰か
3. 実際に会社へ連絡するのは誰か
4. 対応範囲と対応できない内容がハッキリしているか
5. 交渉が必要になった場合の対応が明確か
6. 返金条件・追加料金・サポート終了時期が明確か
7. 自分の状況が「法律トラブル」に該当していないか

私たちの最終目的は、「退職代行を契約すること」ではありません。
会社と無駄に揉めることなく、これ以上の精神的ダメージを負うことなく、安全に会社から離れて「新しい生活を立て直すこと」のはずです。

知名度や「退職成功率100%」といった見栄えの良い言葉に流されず、「誰が」「どこまで」自分を守ってくれるのか。その対応体制で選ぶことだけを忘れないでください。

「じゃあ、具体的にどのサービスを選べばいいの?」
「労働組合と弁護士の業者、もっと詳しく比較したい」

という方は、以下の記事で「民間・労働組合・弁護士」それぞれの具体的な業者の見分け方と、おすすめの依頼先を泥臭く比較しています。失敗しないための総仕上げとして、ぜひ目を通してみてくださいね。

退職代行の選び方|民間・労働組合・弁護士の違いを比較

まずはゆっくり休んで、次の一歩を踏み出すための気力を養いましょう。
あなたの新しいスタートが、平穏で安心できるものになるよう応援しています。

退職代行の利用の流れ|相談から退職完了までの手順

※この記事は退職代行選びに関する一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的なアドバイスを行うものではありません。具体的な法律トラブルについては、弁護士にご相談ください。

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