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応用情報技術者試験:マネジメント・戦略・監査分野の小問ストーリー攻略【出題パターン付き】」

応用情報技術者試験のマネジメント・戦略・監査分野でも、テクニカル分野と同様に小問同士が連続するストーリー形式が多く出題されます。基本は「小問1=定義・指標の確認 → 小問2=事例・数値への適用 → 小問3=改善・提案」という三段構成です。ここではまず、サービスマネジメント分野の典型的な流れを、出題例と解き方のポイント付きで整理します。

サービスマネジメント分野の小問ストーリー(出題パターン付き)

ITILプロセス → 事例確認 → 改善提案

出題例

  • 小問1:インシデント管理/問題管理/変更管理の定義を問う
  • 小問2:障害対応の流れ(事例)から該当プロセスを特定
  • 小問3:対応遅延や再発を踏まえた改善策(エスカレーション、変更承認強化など)を提案

解き方

  1. 目的で分類:復旧最優先=インシデント、原因究明=問題、変更の統制=変更。
  2. 事例文のキーワード(「迅速復旧」「根本原因」「リリース」等)を該当プロセスにマッピング。
  3. 改善策は「不足していた統制→対応するITILプラクティス」を1:1で提示。

ポイントプロセスの目的で切り分けると迷わない。小問1の定義が小問2・3の拠り所。

SLA/可用性指標 → 事例適用 → 運用改善

出題例

  • 小問1:稼働率の定義(例:稼働率=MTBF/(MTBF+MTTR))や用語確認
  • 小問2:年間障害回数・平均復旧時間から稼働率/年間ダウンタイムを計算
  • 小問3:SLA未達の原因分析と改善策(冗長化、予防保守、監視・エスカレーション見直し)を提案

解き方

  1. 与件の数値を式に代入して稼働率・ダウンタイムを算出。
  2. SLA値(例:99.9%)と比較し達成/未達を判定、ボトルネック(MTBF低下 or MTTR長期化)を特定。
  3. 特定した要因に直結する施策(MTTR短縮=自動復旧/オンサイト、MTBF向上=冗長化・更新)を提示。

ポイント:「計算 → 比較 → 改善」の三段で答案を構成。数値根拠を必ず書く。

障害管理/変更管理 → 記録確認 → 是正案

出題例

  • 小問1:障害記録票/変更申請書の抜粋から必要項目(影響範囲、承認、テスト結果など)を読み取る
  • 小問2:欠落や不備(承認抜け、リスク評価不足、ロールバック未定義)を指摘
  • 小問3:是正案(承認フロー追加、テンプレ整備、バックアウト手順、変更窓口の明確化)を提案

解き方

  1. 記録の必須項目チェックリスト(目的・影響・手順・テスト・承認・ロールバック・連絡)で漏れを判定。
  2. 漏れ→発生しうるリスク(停止延伸、データ破損、影響範囲誤判定)に結びつける。
  3. 是正は「欠けていた項目を補う」形で具体(誰が・いつ・どう)まで書く。

ポイント不備→リスク→是正を一直線でつなぐと説得力が上がる。

プロジェクトマネジメント分野の小問ストーリー(出題パターン付き)

WBS/PERT → クリティカルパス → 工期短縮策

出題例

  • 小問1:WBSやアローダイアグラムから工期を計算
  • 小問2:クリティカルパスを判定
  • 小問3:工期短縮策(並列化、要員追加、外注活用など)を提案

解き方

  1. タスクの所要時間と依存関係を整理し、最長経路=工期を算出
  2. クリティカルパス上の作業は余裕が0である点を確認
  3. 短縮策はクリティカルパス上の作業にのみ適用するのが基本

ポイント:小問1・2で求めた経路を根拠に、小問3で改善を提示する流れ。

コスト/工数見積 → 進捗差異確認 → 改善提案

出題例

  • 小問1:規模見積(FP法、LOC法、COCOMO法)で工数を試算
  • 小問2:EVM(Earned Value Management)を用い、CPI/SPIを算出
  • 小問3:差異に応じた改善策(要員再配置、範囲調整)を提案

解き方

  1. 与えられた規模値から工数見積を算出
  2. 実績値と計画値を比較しCPI(コスト効率)SPI(進捗効率)を計算
  3. 効率が悪い部分を特定し、改善策を直接対応させる

ポイント:「計算→差異特定→改善」を一貫させるのが高得点への近道。

リスク管理表 → 発生事例確認 → 回避/軽減策

出題例

  • 小問1:リスク一覧表から発生確率と影響度を読み取り、リスク優先度を確認
  • 小問2:特定リスク発生時の事例を提示し、影響を分析
  • 小問3:回避策・移転策・軽減策・受容策を適切に提案

解き方

  1. リスクは発生確率×影響度で優先度を判断
  2. 事例文から実際に顕在化したリスクと影響範囲を読み解く
  3. 対策は「発生前=回避/移転」「発生後=軽減/受容」と整理

ポイント:リスク対策は必ず具体策と対象リスクをセットで答える。

経営戦略分野の小問ストーリー(出題パターン付き)

SWOT分析 → 戦略立案 → KPI提示

出題例

  • 小問1:SWOT要素(強み・弱み・機会・脅威)を事例文から抽出
  • 小問2:マトリクスをもとに戦略(SO戦略、WO戦略など)を選択
  • 小問3:戦略に基づくKPI(売上成長率、シェア率、ROI等)を設定

解き方

  1. 事例文を整理し、内部要因=強み/弱み、外部要因=機会/脅威に分類
  2. マトリクスのどの領域に該当するかを判断し、戦略方向性を特定
  3. 成果を測るための具体的な数値KPIを提示

ポイント:SWOTは「抽出→戦略→KPI」と3段階で回答するのが王道。

財務指標(ROA/ROE/ROI) → 数値計算 → 意思決定

出題例

  • 小問1:財務諸表の抜粋から総資産・自己資本・利益等を読み取り
  • 小問2:ROA/ROE/ROIなどを計算
  • 小問3:計算結果を根拠に投資判断(実行可否、資金調達方法など)を行う

解き方

  1. 指標の式を確認(例:ROA=利益÷総資産、ROE=利益÷自己資本)
  2. 与えられた数値を代入して指標を算出
  3. 業界水準やシナリオの期待値と比較し意思決定を示す

ポイント:計算結果を必ず意思決定の根拠として使う。

新規事業シナリオ → 投資判断 → リスク評価

出題例

  • 小問1:市場規模・成長率・競合状況の与件を読み取る
  • 小問2:収益予測(売上、費用、利益)を算出
  • 小問3:リスク(競合参入、規制、需要変動)を評価し提案

解き方

  1. 市場成長率やシェア想定から売上予測を試算
  2. 費用構造を与件から抽出し損益分岐点を算出
  3. リスク要因を整理し、定量(利益変動幅)と定性(規制影響)で評価

ポイント:「シナリオ→数値→リスク」の流れで一貫性を出すと高得点。

システム監査分野の小問ストーリー(出題パターン付き)

内部統制(ITGC/アプリ統制) → 事例評価 → 改善勧告

出題例

  • 小問1:内部統制の種類(IT全般統制・アプリケーション統制)を確認
  • 小問2:事例(職務分掌の不備、アクセス権限の不適切設定など)を提示し、問題点を指摘
  • 小問3:改善勧告(職務分掌の見直し、権限管理強化、監査証跡整備など)を提案

解き方

  1. まず与件から統制の分類(ITGCかアプリ統制か)を判定
  2. 統制の欠如がどのリスク(不正・誤謬・監査証跡不足)につながるかを整理
  3. リスクに対応する具体的な改善勧告を1:1で提示

ポイント:不備は必ずリスクと改善策をセットで答える。

監査証拠 → 手続き選択 → 信頼性判断

出題例

  • 小問1:監査証拠の種類(実査、立会、文書確認、再実行など)を確認
  • 小問2:与えられた証拠(自己申告や画面キャプチャなど)の信頼性を評価
  • 小問3:不十分な場合の追加手続き(立会、再実行、第三者証憑の確認など)を提案

解き方

  1. 証拠の入手方法と客観性を整理(自己申告は信頼性低、第三者証憑は高)
  2. 妥当性を判断し、十分か不十分かを明示
  3. 不十分なら補強証拠の種類を具体的に提示

ポイント:証拠は信頼性の高さ順に評価するのが定番。

セキュリティ監査(ログ/アクセス権) → 問題抽出 → 是正提案

出題例

  • 小問1:ログ(アクセス履歴、認証記録)や権限表を読み取り
  • 小問2:不正利用の痕跡(多重ログイン、深夜アクセス、過剰権限)を指摘
  • 小問3:是正案(定期棚卸し、最小権限化、監査証跡強化)を提案

解き方

  1. ログの時系列・回数・発生時刻から不自然な挙動を探す
  2. 権限表と職務分掌を突き合わせ、過剰権限を特定
  3. 是正は「削除・分掌・監査証跡の強化」で具体的に提示

ポイント:監査では問題→根拠→是正の三段構成が重要。

(試験のコツ)システム監査分野の回答姿勢

  • 小問1=定義・分類(内部統制の種類、証拠の種類)
  • 小問2=事例評価(不備や不自然さの指摘)
  • 小問3=改善提案(勧告・是正策を具体的に提示)

この流れを守ると、採点者にとって一貫した論理が伝わりやすく、減点を避けやすいです。

まとめ

ここまで見てきたように、マネジメント・戦略・監査分野の小問も、技術系と同様に流れを意識することが重要です。出題形式は多岐に渡りますが、その多くが以下のパターンに集約されます。

  • 小問1:基礎的な定義や指標の確認(ITILプロセス、SLAの式、WBS、財務指標、内部統制など)
  • 小問2:事例や数値を使った適用問題(障害票の読み取り、EVM計算、KPI算出、証拠の信頼性評価など)
  • 小問3:改善策・提案(SLA改善策、工期短縮案、投資判断、監査勧告など)

つまり、試験では「定義確認 → 適用 → 改善」の三段論法が一貫して出題される傾向にあります。小問1で押さえた基礎を、小問2・3にうまく繋げることができれば、得点を大きく伸ばすことができます。

特にマネジメント・戦略系の問題は、単なる暗記ではなく実務シナリオを踏まえた応用力が問われます。数値の裏付けを持ちながら改善策を提案する習慣をつけておくことで、答案に説得力が増し、高得点に繋がります。

試験直前には、各分野で紹介した出題パターンと解き方の流れを振り返り、実際の過去問に当てはめながら演習するのが効果的です。

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