転職

CxO転職は“逃げ”か“挑戦”か?大企業のエリートがスタートアップで後悔しないための思考法

今の会社、ポジション、待遇に大きな不満はない。むしろ、周りから見れば「出世コースに乗った勝ち組」かもしれない。でも、心のどこかで燻っている“モヤモヤ”に気づいてないフリ、してないか?

「この稟議、あと何回まわせば通るんだ…?」
「自分がやらなくても、誰かがやってくれる仕事だよな…」
「3年後、5年後、今の延長線上に“なりたい自分”はいるんだろうか?」

俺自身、転職を繰り返した挙句、「どうも俺は会社員って生き物は向いてないらしい」と半ば諦めて独立したクチだから、その気持ちは痛いほどわかる。組織の歯車として最適化される息苦しさ。自分の意思で事業を動かしている実感のなさ。

かつては「安定」の代名詞だった大企業という船も、いつ沈むかわからない時代だ。そんな中で、自分の腕一本で未来を切り拓く「スタートアップのCxO」という選択肢が、やけに魅力的に見えたりする。

ただ、それは現実逃避の“幻想”なのか、それともキャリアを飛躍させる“リアルな選択肢”なのか──。

この記事では、かつての俺のようにキャリアに悩むあんたが、CxO転職という選択肢を冷静に判断するための「思考のフレームワーク」を提供する。読み終える頃には、自分が今、何をすべきかが見えてくるはずだ。

目次

なぜ今、ハイクラス人材の「CxO転職」が現実的な選択肢になったのか?

「とはいえ、スタートアップなんて一部の意識高い系の世界でしょ?」なんて思うかもしれない。確かに、少し前まではそうだった。大企業からスタートアップへの転職は「都落ち」なんて揶揄されることもあったからな。だが、時代は完全に変わった。あんたのようなハイクラス人材が、本気でキャリアの選択肢として検討するだけの“構造的な変化”が、今の日本市場で起きているんだ。その背景を3つのポイントで解説しよう。

【市場の拡大】データで見る日本のスタートアップ市場の熱狂

まず知っておくべきなのは、日本のスタートアップ市場が、あんたが思っている以上に“熱い”ってことだ。漠然としたイメージじゃなく、数字で見てみよう。

日本のスタートアップ資金調達額は、ここ10年で急激に伸びている。2023年には8,500億円を超える規模に達し、コロナ禍を経てもなお成長を続けているんだ。これは、単なる一過性のブームじゃない。国策としての後押しもあり、優秀な人材と莫大な資金がスタートアップエコシステムに流れ込み続けている証拠だ。

 

国内スタートアップ資金調達額
2013年 約868億円
2018年 約3,880億円
2023年 約8,541億円

出典:INITIAL「Japan Startup Finance 2023」を基に作成

時価総額1,000億円以上の未上場企業、いわゆる「ユニコーン企業」の数も増加傾向にある。これは、日本からでも世界を狙える企業が次々と生まれていることを意味する。あんたが培ってきた経験やスキルを、こうした急成長する市場で活かせるチャンスが、そこら中に転がっているってわけだ。

【需要の逼迫】成長企業が抱える「経営幹部不足」という深刻な課題

市場が拡大し、事業が急成長する一方で、多くのスタートアップが深刻な課題にぶち当たっている。それが「経営を任せられる人材の不足」だ。

創業者のアイデアと情熱で事業を立ち上げることはできても、組織をスケールさせ、数百人規模のチームをまとめ、持続的な成長戦略を描ける人間は圧倒的に足りていない。特に、財務、人事、事業開発といった領域で、大企業での豊富な経験を持つプロフェッショナルは喉から手が出るほど欲しい存在なんだ。

これは、「ポストが詰まっていて、なかなか昇進できない」という大企業の状況とは真逆の世界。あんたのその経験は、ここでは“希少資源”として高く評価される可能性が高い。

【文化の変化】「プロ経営者」を外部から迎えるのが当たり前の時代に

昔ながらの日本企業だと、「生え抜き信仰」みたいなものが根強いよな。役員になるのは、新卒から何十年も勤め上げた人、みたいな。

だが、スタートアップの世界では、そんな価値観はとっくに過去のもの。事業フェーズに合わせて、必要なスキルを持つ最適な人材を外部から招聘するのは当たり前だ。メルカリやSansanといったメガベンチャーが、名だたる大企業や外資コンサルから経営幹部を迎えてさらに成長を加速させた事例は、もはや珍しくない。

キャリアの流動化が進み、「会社に尽くす」時代から「自分のスキルを市場でどう活かすか」を考える時代へと完全にシフトした。CxO転職は、もはや一部の特殊なキャリアじゃなく、実力あるビジネスパーソンにとって極めて合理的で、魅力的な選択肢の一つになったんだ。

大企業の部長 vs スタートアップのCxO:その決定的な違いとは?

あんたほどのポジションなら、「CxOったって、結局は事業責任者や部長クラスの仕事と大差ないんだろ?」と思うかもしれない。俺も昔はそう思ってた。だが、断言する。それは全くの別物だ。大企業で培った“常識”のまま飛び込むと、間違いなく火傷する。ここでは、その決定的な違いを具体的に解説していこう。求められる役割も、見える景色も、背負う責任の重さも、すべてが違うんだ。

役割比較表:CEO, COO, CTO, CFO… あなたはどこで価値を発揮する?

まず、スタートアップにおける「CxO」がそれぞれどんな役割を担うのか、ざっくり整理してみよう。あんたの経験が、どのポジションで最も活かせそうか、自己診断するつもりで見てほしい。

 

役職名 主なミッション 求められるスキル・経験の例
CEO (最高経営責任者) 会社のビジョンを定め、最終的な意思決定を行う。資金調達の顔となる。 経営全般の経験、ビジョン構築力、リーダーシップ、資金調達の知識・人脈
COO (最高執行責任者) CEOが描いた戦略を実行に移し、事業全体のオペレーションを統括する。 事業開発、組織マネジメント、営業・マーケティング統括経験、PL管理能力
CTO (最高技術責任者) 技術戦略を策定し、プロダクト開発チームを率いて競争優位性を築く。 高度な技術知識、エンジニア組織のマネジメント経験、技術トレンドへの深い理解
CFO (最高財務責任者) 財務戦略、資金調達、予実管理、IPO準備など、会社の財務全般に責任を持つ。 財務・会計知識、資金調達(エクイティ・デット)経験、投資家との交渉能力
CPO (最高製品責任者) プロダクトのビジョンと戦略を策定し、プロダクト開発の全責任を負う。 プロダクトマネジメント経験、UX/UIへの深い知見、市場・顧客分析能力

 

見ての通り、それぞれに高度な専門性が求められる。大企業の部長職が特定の部門を率いる「縦の専門家」だとすれば、CxOは専門性を持ちつつ、会社全体の経営を考える「横の視点」が不可欠になるんだ。

「執行」する管理職と、「経営」するCxOの視座の違い

ここが最も大きな違いかもしれない。大企業で評価される部長は、基本的に「決められた予算とルールの中で、いかに成果を最大化するか」という“執行”のプロフェッショナルだ。PL(損益計算書)上の数字に責任を持つことはあっても、会社の資産(BS)や現金の流れ(キャッシュフロー)そのものをどう動かすか、という視点を持つ機会は少ないだろう。

一方、スタートアップのCxOは、事業を回すだけでなく、会社そのものを「経営」する視点が求められる。

  • PL責任からBS/CF経営へ: 目先の売上や利益だけでなく、会社の資産をどう投資に回し、キャッシュが尽きないようにどう資金繰りをするか。会社の“体力”そのものを管理する。
  • ルールの中で戦うか、ルールを作るか: 既存の社内規定の中で戦うのが部長なら、CxOは事業戦略や組織のルール、時には会社の文化そのものをゼロから作っていく役割を担う。
  • 資金調達というミッション: 特にCFOやCEOは、投資家と対話し、事業の未来を語って、会社の成長に必要な資金を外部から引っ張ってくるという、極めて重要なミッションを負う。

ゲームのルール内で戦うのが部長なら、ゲームのルール自体を創り、時にはゲーム盤そのものを変えるのがCxO。この視座の違いを理解できるかどうかが、最初の関門だ。

意思決定のスピード感:「1ヶ月」が「1日」に変わる世界

あんたも経験ないか?「この件、前に進めるのにあと何人のハンコが必要なんだ…」と、社内調整に忙殺されてウンザリしたこと。俺も会社員時代、あれが本当に苦手だった。

スタートアップでは、その「稟議に1ヶ月」かかっていたような意思決定が、「役員会の1日」あるいは「Slack上の1時間」で決まるなんてことは日常茶飯事だ。市場の変化に対応するため、とにかくスピードが命。完璧な100点の資料を1ヶ月かけて作るより、60点の企画でもまず1日でリリースして、顧客の反応を見ながら改善していく、という思想が基本になる。

この圧倒的なスピード感は、裁量権の大きさと表裏一体だ。自分の判断一つで、数千万円の予算が動き、事業の方向性が決まる。このダイナミズムは大きなやりがいだが、同時に「すべてが自己責任」という重圧との戦いでもある。このスピードとカオスを楽しめるか、それとも消耗してしまうか。あんたの適性が問われる部分だ。

年収は下がる?ストックオプションは夢物語?CxO転職のリアルな懐事情

さて、ここまで夢のある話をしてきたが、あんたが一番気になってるのは、「で、結局いくら貰えるの?」ってことだよな。わかる。挑戦ややりがいも大事だが、家族もいれば家のローンだってある。俺も独立するとき、一番不安だったのはそこだからな。その現実を無視してキャリアは語れない。ここでは、誰もが気になる“カネ”の話を、綺麗事一切抜きで解説していこう。

報酬の構造:年収(ベースサラリー)+ストックオプションを正しく理解する

まず大前提として、スタートアップCxOの報酬は、今のあんたの年収(ベースサラリー)だけで比べると、十中八九、下がる。年収2,000万円もらっているなら、1,200万円や1,500万円の提示になることはザラだ。この事実だけを見て「割に合わない」と判断するのは、あまりに早計すぎる。

スタートアップの報酬は、基本的に以下の2階建て構造になっていることを理解する必要がある。

  • ① ベースサラリー(現金給与):
    会社の運転資金(キャッシュ)から支払われる、いわゆる月々の給料。会社の体力に直結するため、特に未上場のアーリーステージでは、大企業ほど高く設定できないのが現実だ。
  • ② ストックオプション(SO/新株予約権):
    将来、会社が成長した際(IPOやM&Aなど)に、あらかじめ決められた価格(行使価額)で自社の株を購入できる権利のこと。これが、CxO転職における金銭的リターンの本丸だ。

つまり、「目先の現金は下がるかもしれないが、会社を成長させた暁には、サラリーマンの生涯年収を数年で稼ぎ出す可能性のある“夢の権利”がついてくる」 というパッケージなんだ。このトータルリターンで考えられるかどうかが、まず最初の分かれ道になる。

メリット:青天井のキャピタルゲインと、事業成果が給与に直結するダイナミズム

ストックオプションの魅力は、なんといってもその青天井のリターンだ。
例えば、1株100円で10,000株分のストックオプションを付与されたとしよう。あんたの活躍もあって会社は急成長し、見事IPO(上場)を果たした。株価が5,000円になったところで権利を行使し、株を売却したとすると…

(5,000円 - 100円) × 10,000株 = 4,900万円

これが、給料とは別の「キャピタルゲイン」として手に入る。もちろん、これは単純計算だし、税金もかかる。だが、自分の働きがダイレクトに企業価値に反映され、それが億単位の資産になって返ってくる可能性があるというのは、大企業の給与体系では決して味わえないダイナミズムだろう。会社の歯車としてではなく、事業の当事者として、自分の成果が株価という形で評価される。これこそが、CxOというポジションの醍醐味の一つだ。

リスク:倒産、資金調達の失敗…安定神話の崩壊を直視する

ただし、勘違いしちゃいけない。そのストックオプションは、会社が成功しなければ、ただの“紙切れ”だ。キラキラした成功譚の裏には、その何百倍もの失敗が転がっている。

ここでシビアなデータを一つ。経済産業省の調査によれば、起業してから10年後に存続している企業は、わずか26% というデータもある(※これは中小企業全般のデータだが、スタートアップはさらに厳しいと言われる)。

  • IPOの壁: そもそもIPOまでたどり着ける企業はほんの一握り。
  • 資金調達の失敗: 事業が軌道に乗る前に資金が尽きる(キャッシュショート)リスクは常につきまとう。
  • M&Aの現実: たとえM&A(合併・買収)されても、期待したほどの株価がつかず、リターンがほとんどないケースも少なくない。

「今の安定を捨てて飛び込んだのに、年収は下がった挙句、ストックオプションも紙切れになった」なんて話は、この界隈では全く珍しくない。このリスクを冷静に直視し、それでも挑戦したいと思えるか。その覚悟が、あんたにあるかどうかが問われているんだ。

CxO転職で「成功する人」と「失敗する人」を分ける境界線

あんたの経歴書は、間違いなくピカピカだろう。有名大学を出て、大企業で誰もが知るプロジェクトを成功させてきた。でもな、残念ながら、その“プラチナチケット”がスタートアップで通用するとは限らない。むしろ、その輝かしい経歴とプライドが、新しい環境で活躍する上での“足かせ”になることさえあるんだ。ここでは、候補者が見落としがちな「成功と失敗を分ける残酷な現実」について、本音で語っていこう。

スキルフィットより重要?「カルチャーフィット」という見えざる壁

CxO転職で最もありがちな失敗原因、それはスキル不足じゃない。「カルチャーフィット」の問題だ。特に大企業で最適化されてきた人ほど、この見えない壁にぶつかりやすい。

  • 「前の会社ではこうだった」は禁句:
    あんたがいた会社のやり方は、素晴らしいものだったんだろう。だが、リソースも文化も違うスタートアップにそれをそのまま持ち込んでも、ただの“老害”扱いされるのがオチだ。新しい環境のやり方をまず受け入れ、リスペクトする姿勢がなければ、誰もあんたについてこない。
  • 創業者のビジョンに心から共感できるか:
    スタートアップは、創業者の強烈なビジョンや原体験が核になっていることが多い。そのビジョンに心から共感し、自分の言葉で語れるくらいじゃないと、経営の一翼を担うなんて無理な話だ。条件やポジションだけで選ぶと、困難な壁にぶつかった時に心が折れてしまう。
  • カオスを楽しめるか:
    昨日決まったことが今日覆る。事業計画が3ヶ月で見直される。そんなカオスな状況は日常茶飯事だ。整然としたルールやプロセスの中で働くことに慣れていると、この変化の激しさは相当なストレスになる。「整っていないこと」を嘆くのではなく、「これから自分たちで整えていく」ことを楽しめるマインドが不可欠だ。

「事業家」としての覚悟はあるか?求められるスキルセットの変化

大企業でのあんたは、特定の領域における「プロフェッショナル」「管理職」だったはずだ。しかし、スタートアップのCxOに求められるのは、そのどちらでもない。「事業家」としての覚悟だ。

戦略を語るだけの“先生”は、スタートアップにはいらない。メンバーが10人しかいないなら、あんたが11人目のプレイヤーとして泥臭く手を動かす場面は必ず出てくる。時には自分で営業資料を作り、採用候補者と面談し、オフィスの引っ越しを手伝うことだってあるかもしれない。

「俺は経営をしに来たんだ、実務は部下がやるもんだろ」

もし少しでもそう思うなら、正直、やめておいたほうがいい。自分の専門領域のタスクをこなしつつ、未知の領域にも臆せず飛び込み、学び、実行する。この「何でも屋」になれるフットワークの軽さと貪欲さが、事業を前に進める上で何よりも重要なんだ。

デューデリジェンスの重要性:見極めるべきは「事業」と「経営者」

転職活動というと、自分が「選ばれる側」だと考えがちだが、CxOクラスの転職は違う。あんたも「会社を徹底的に見極める側」でなければならない。これは、投資家が投資先を精査する「デューデリジェンス」と全く同じ行為だ。これを怠ると、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになる。

最低限、以下の点は自分の目で、耳で、確かめるべきだろう。

【事業・財務に関するチェックリスト】

  • そのビジネスモデルは本当に持続可能か? scalableか?
  • ユニットエコノミクス(顧客一人当たりの採算性)は成立しているか?
  • 足元のキャッシュフローは健全か?あと何ヶ月持つ体力があるか?
  • 主要なKPI(重要業績評価指標)は何か?それは順調に伸びているか?

【人・組織に関するチェックリスト】

  • 創業者を、一人の人間として尊敬できるか?ビジョンに嘘はないか?
  • 他の経営陣とオープンに議論できる関係性を築けそうか?
  • 現場の社員は、会社の未来を信じて活き活きと働いているか?

面接の場で「何か質問はありますか?」と聞かれた時こそ、あんたが相手を“面接”するチャンスだ。鋭い質問を投げかけ、その反応を見極める。そのくらいの気概がなければ、経営という船には乗り込めない。

なぜCxO転職にこそ、信頼できるエージェントが必要なのか?

さて、ここまでCxO転職の複雑さとリスクを散々語ってきた。情報収集、自己分析、企業のデューデリジェンス、そして複雑な待遇交渉…。この“総力戦”を、今の仕事をこなしながら、たった一人で完璧にやり遂げる自信は、正直あるか?

「いや、俺は優秀だから大丈夫だ」と思うかもしれない。俺も昔はそうやって独力で突っ走って失敗したことがある(笑)。CxOというキャリアの重大な分岐点だからこそ、「餅は餅屋」に任せるのが、結果的に最も賢く、成功確率の高い選択になるんだ。その理由を具体的に解説しよう。

表には出てこない「水面下の求人」にアクセスする

まず、根本的な事実として、あんたが自力で探せる求人情報など、市場に存在するポジションの氷山の一角でしかない。

考えてみてほしい。会社の将来を左右するようなCOOやCFOのポジションを、転職サイトで大々的に公募するだろうか?答えはNoだ。なぜなら、

  • 経営戦略が競合に漏れるリスクがある
  • 「経営幹部が足りていない」という内部事情を公にしたくない
  • ポジションに対して、質の低い応募が殺到するのを避けたい

といった理由から、重要なポストほど、公募されずに水面下で動くのが普通だ。では、その求人はどこへ行くのか? それが、経営者層と太いパイプを持つ、信頼できる転職エージェントだ。彼らの元には、CEOから「実は今、こういう課題があって、右腕になってくれる人材を極秘で探しているんだ」といった、表には決して出てこない特命案件が集まってくる。独力での転職活動は、そもそも最も魅力的な選択肢にアクセスできないまま終わる可能性が高いんだ。

年収、ストックオプション…素人には難しい「待遇交渉」をプロに任せるメリット

次に、カネの話だ。特に、あんたの将来の資産を大きく左右するストックオプションの交渉は、専門知識なしで臨むのはあまりに危険すぎる。

付与される株数や行使価格だけを見て「おお、すごい!」なんて喜んでいたら、後で泣きを見ることになるかもしれない。

  • べスティング条項: 「入社後2年間は権利が確定しない」といった縛り
  • 行使期間: 「IPO後3年以内に行使しないと権利失効」といった期限
  • 退職時の扱い: 会社を辞めた場合に権利はどうなるのか

など、契約書には素人が見落としがちな“罠”が隠されていることも多い。これらは、あんたのキャリアやライフプランに直結する重要な条件だ。こうした複雑で専門的な交渉を、企業の法務部やCFOと対等に渡り合えるプロ(エージェント)に任せるのは、いわば優秀な弁護士を雇うのと同じ。自身の市場価値を最大化し、不利な条件を飲まされないための、極めて合理的な投資と言える。

失敗しないエージェントの選び方:「CxO特化型」という視点

「じゃあ、どこのエージェントでもいいのか?」と言われれば、それも違う。ハイクラス転職、特にCxOポジションを狙うなら、エージェント選びの視点も変える必要がある。俺が重視するのは、以下の3つのポイントだ。

  1. スタートアップ業界への深い知見と実績があるか?
    → 大企業の求人を扱う片手間でやっているのではなく、業界のトレンド、各社の内情、成長フェーズごとの課題を熟知しているか。
  2. 経営者(CEO/VC)と直接的なパイプを持っているか?
    → 人事担当者レベルではなく、企業の意思決定者と直接コミュニケーションが取れるエージェントか。それによって情報の質とスピードが全く違ってくる。
  3. キャリアの「壁打ち相手」になってくれるか?
    → ただ求人を右から左へ流すだけでなく、あんたのキャリアプランに寄り添い、時には厳しい意見もくれるような、長期的なパートナーとなり得るか。

この条件を満たすエージェントは正直多くないが、例えばスタートアップの成長支援と幹部人材のマッチングに特化しているfor Startupsのようなプレイヤーは、まさにその道のプロだ。彼らは単なる人材紹介会社ではなく、日本のスタートアップエコシステムを本気で成長させようとしている集団。だからこそ、経営者からの信頼も厚く、質の高い情報が集まってくる。

もちろん、最終的には担当者との相性もある。だから、まずは複数のエージェントと面談し、最も信頼できると感じたパートナーと二人三脚で進めるのが、成功への一番の近道だろう。

まとめ:CxO転職でキャリアを飛躍させるために

ここまで読んでくれてサンキューな。あんたの頭の中は今、スタートアップへの期待と、安定を失うことへの不安でごちゃ混ぜになっているかもしれない。「挑戦したい、でも怖い」。その気持ちは、痛いほどわかる。

だが、もしあんたが「安定した大企業に残るか、リスクを取ってスタートアップに挑戦するか」という二者択一で考えているなら、その問いの立て方自体が、あんたを迷わせる原因かもしれないぜ。

大事なのは、「どちらの会社が正解か」じゃない。「あんたが、どんな人生を送り、どんな市場価値を持つビジネスパーソンになりたいか」だ。

5年後、10年後、会社の看板がなくても通用するスキルを身につけていたいのか? 経営の意思決定ができるポジションで、事業を動かす手触り感を味わいたいのか? それとも、今の組織で専門性を極め、より大きな影響力を与える存在になりたいのか?

まずは、あんた自身の「キャリアの理想像」をデザインすることから始めるべきだ。大企業に残ることも、スタートアップに飛び込むことも、その理想を実現するための“手段”の一つに過ぎない。

もし、この記事を読んで、少しでも心が動いたなら、まずやるべきことは一つ。それは、「自分の現在地と市場価値を、客観的に知ること」だ。

頭の中で一人で考えていても、答えは出ない。あんたのその輝かしい経歴は、成長市場でどれだけの価値があるのか? それを最もよく知るプロに、壁打ち相手になってもらうのが一番の近道だ。

for StartupsのようなCxO候補の支援に特化したエージェントとの面談は、単なる転職活動じゃない。あんたのキャリアの可能性を探る「戦略会議」だ。そこで得られる情報や視点は、たとえ転職しないという結論になったとしても、あんたの今後のキャリアにとって間違いなくプラスになるだろう。

他人に敷かれたレールの上を走るのは、もう終わりだ。自分のキャリアのハンドルは、自分で握れ。

この記事が、そのための第一歩を踏み出すきっかけになったなら、これ以上に嬉しいことはないね。

-転職