毎朝、クローゼットの前でフリーズしてしまう。「着る服がないわけじゃないのに、今日着る服が決まらない」。なんとか選んで家を出ても、電車の窓に映る自分を見て「なんか変かも…」と一日中モヤモヤする。
ただでさえ仕事のプレッシャーがあるのに、その手前の「服選び」で体力を使い果たしている社会人は意外と多いものです。特に、あれこれ考えすぎてしまう気質(ADHD傾向)がある人にとって、ビジネスカジュアルという「正解のないルール」は、まさに無理ゲーに近いストレス要因になりがち。
この記事では、そんな毎朝の苦痛を「仕組み化」だけで解決する方法をまとめました。センスも努力もいりません。ZOZOTOWNを使って、機械的に「迷わない環境」を作る。その具体的な手順を紹介します。
目次
なぜ服選びがしんどいのか?(ADHD的・会社員的要因)
たかが服選び、されど服選び。実はこの作業、脳にとってはかなりの重労働なんです。特に「注意力が散漫になりやすい」「ワーキングメモリ(一時記憶)が弱い」といった特性を持つ人にとって、朝のクローゼットは戦場そのものです。
服選びは「決断」×「記憶」×「想像」の連続
服を選ぶとき、脳内ではすごいスピードでマルチタスクが行われています。
- 記憶:「あのシャツ、洗濯したっけ?」「前回いつ着たっけ?」
- 情報処理:「今日の天気は?」「誰と会うんだっけ?」
- 想像:「この色とこの色は合う?」「変じゃない?」
- 決定:「よし、これにする(不安だけど)」
これを寝起きの頭でやるわけですから、疲れて当然なんです。
ADHD特性:選択肢が多いと決断負荷が跳ね上がる
選択肢が多いことは、必ずしも自由ではありません。情報の取捨選択が苦手なタイプにとっては、むしろ「混乱の種」になります。
クローゼットが服でパンパンなのに「着る服がない」と感じるのは、選択肢が多すぎて脳が処理落ち(フリーズ)している証拠。さらに、衝動性から「安かったから」とバラバラな服を買ってしまうと、パズルピースが合わない状態になり、余計に難易度が上がってしまいます。
会社員の服は「TPO」「清潔感」「季節」など条件が多すぎる
私服なら好きなものを着ればいいですが、仕事着には「相手への配慮」や「職場の空気」という厄介な条件が加わります。
「ビジネスカジュアル」という言葉自体が曖昧すぎますよね。「カッチリしすぎず、ラフすぎず」なんて言われても、その境界線を見極めるのは至難の業。他人の評価に敏感な人ほど、「これで怒られないかな?」という正解のない問いに毎朝怯えることになります。
毎朝の疲労の正体は“認知コスト”
「決断疲れ」という言葉を聞いたことはありますか? 人は1日に最大3万5,000回もの決断をすると言われていますが、決断するたびに脳のHP(ウィルパワー)は削られていきます。
朝一番の「何を着るか」でHPを大量消費してしまうと、肝心の仕事で使うべき集中力が残りません。「会社に着く頃にはもうぐったり」という感覚は、決して甘えではなく、脳のエネルギー切れなんです。
この記事の目的は「認知コストを下げるワードローブ設計」
ここでのゴールは、おしゃれ番長になることではありません。「服選びの認知コスト」を限りなくゼロにすることです。
「これさえ着ておけば100点」という仕組みをあらかじめ作っておく。そうすれば、貴重な脳のエネルギーを、服なんかではなく、あなたの仕事や人生の楽しみに使えるようになります。
ADHDでも迷わないワードローブ設計の基本(色・数・型)
迷いを消す一番の方法は、「選択肢を最初から絞っておくこと」です。これに尽きます。ビジネスで通用しつつ、管理が死ぬほど楽になる「設計図」を見ていきましょう。
色数は2色+白に固定するとほぼ迷わない
「3色以内でまとめましょう」とよく言われますが、それでも組み合わせパターンは無限にあって迷います。なので、もっと単純に「ベース2色+白」に固定してしまいましょう。
- ベースカラー(2色):ネイビーとグレー(または黒)の2つだけ選ぶ。
- インナー(白):中に着るものは白一択。
こうすれば、「ネイビーの上着×グレーのパンツ」「グレーの上着×ネイビーのパンツ」と、どう組み合わせても絶対に色が喧嘩しません。朝から「色合わせ」で悩む時間はゼロになります。
アイテム数の最適解(6〜8点)=組み替え無限
服は多ければ多いほど管理が面倒になります。平日5日を回すだけなら、実はこれだけで十分です。
- ジャケット(羽織り):2着
- ボトムス:3本
- トップス:3〜4枚
合計8点ほど。これならクローゼットもスカスカで一目瞭然です。数を絞る分、1着あたりの予算を少し上げて、質の良い(長持ちする)ものを買うのが賢い戦略です。
迷わない「型」とは何か?(シャツ・スラックス・ジャケットの基準)
形(シルエット)も固定します。変な冒険はしません。
- トップス:シンプルな襟付きシャツ、または上質な素材のTシャツ。
- ボトムス:センタープレスの入ったスラックス、または細身のチノパン。ダボダボもピチピチもNG。
- ジャケット:肩パッドのない、カーディガンみたいに羽織れるテーラードジャケット。
この「型」以外のもの(柄シャツ、カーゴパンツ、パーカーなど)は、最初から「仕事用」の選択肢に入れない。これだけでTPOズレのリスクを自動回避できます。
洗濯・管理がラクな素材を選ぶメリット
クリーニング店に行く手間や、アイロンがけ。これらはADHDタイプにとって最大の敵です。服を選ぶときは「自宅で洗えるか」「シワにならないか」を最優先してください。
タグを見て「ウォッシャブル」「ノンアイロン」「イージーケア」と書いてあるポリエステル混紡素材を選びましょう。最近の化学繊維は進化しているので、安っぽく見えません。「メンテナンスフリー」であることは、服を長く着続けるための絶対条件です。
遅刻・忘れ物を減らす服の置き方(視覚化・定位置管理)
せっかく服を決めても、部屋の中で「あれどこいった?」となっては本末転倒です。視覚優位な特性に合わせて、収納も「見える化」しましょう。
- ハンガー収納一択:たたまない。全部吊るして見えるようにする。
- セット置き:寝る前に、明日着るセット(服・靴下・ハンカチ)をドアノブにかけておく。
「朝起きたら、そこにかかっているものを無心で着るだけ」。このロボットのようなルーティンが、遅刻防止と心の平穏に直結します。
ZOZOTOWNで“迷わない服だけ”を選ぶ方法(フィルタ設計術)
ネット通販は便利ですが、ADHDタイプにとっては「情報の洪水」でもあります。無限の商品、タイムセール、レコメンド…。これらは注意力を奪う罠です。
ZOZOTOWNのような巨大サイトを使うコツは、サイトを見る前に「検索条件(フィルタ)」をガチガチに固めて、ノイズを視界に入れないことです。
ADHD的に危険なのは「情報量」→フィルタ必須
トップページからなんとなく眺めるのは禁止です。目的の商品にたどり着く前に、魅力的な広告や別ジャンルの服に目移りして、脳のHPが削がれてしまいます。
アプリを開いたら、即座に検索窓か絞り込み機能へ直行。以下の条件を入力して、表示される服を物理的に減らすのが鉄則です。
色・サイズ・シルエット・素材の最適フィルタ
「ビジネスカジュアル」で迷わないための推奨設定はこちら。
- カテゴリー:ジャケット、パンツ、シャツ・ブラウスに限定。
- カラー:ブラック、グレー、ネイビー、ホワイト(インナー用)のみチェック。他の色は表示させない。
- サイズ:「自分に合うサイズ」機能を使うか、手持ちの服のサイズに近い数値を指定する。
- 価格タイプ:セール品除外、もしくは予算上限を設定(例:5,000円〜15,000円)。安すぎると品質が怖いし、高すぎると汚すのが怖くて着なくなります。
間違いやすいフィルタ設定例(サイズ・丈・素材)
特に失敗しやすい「地雷」を踏まないための設定です。
- 素材:「ウォッシャブル(手洗い可)」「防シワ」にチェック。またはキーワードで「ポリエステル」を入れる。綿100%や麻はシワになりやすいので、管理が面倒なら避けるのが無難です。
- 丈(パンツ):フルレングスかアンクル丈。クロップド(短め)やワイドすぎるパンツは、ビジネスだと難易度が高いので除外します。
モデル写真の“見るべきポイント”を最小化する
モデルさんの顔やポーズのかっこよさに騙されてはいけません。見るべきは「事実」だけです。
- 光の当たり方:テカテカしすぎてないか?(安っぽく見える原因)
- シワの入り方:着用写真の肘や膝を見て、深いシワが入ってないか?
- 透け感:特に白シャツ、肌が透けてないか?
「雰囲気がいいな」ではなく「構造的に問題ないか」という、検品係のような目線でチェックしてください。
購入前にチェックするべき「3つのレビュー基準」
星の数(平均点)だけ見てもわかりません。探すべきは具体的な「苦情」です。
- 「洗濯したらシワシワになった/縮んだ」
- 「生地がペラペラ」
- 「サイズ表記より小さい/大きい」
この手のコメントが複数あったら、デザインが気に入っても回れ右。それが合理的な判断です。
ほぼ制服化できる“定番ビジネスカジュアル”のテンプレ(性別共通)
フィルタで絞ったら、最後は組み合わせ。ここでも「その日の気分」なんて不安定なものには頼りません。「制服化」したテンプレート通りに着るだけです。
上下セットのテンプレ化で朝のコストを0にする
最強なのは「セットアップ(同素材の上下)」です。これなら上下の組み合わせを考える必要すらありません。考える変数は「中のインナー」だけ。
- 月・水・金:ネイビーのセットアップ + 白インナー
- 火・木:グレーのセットアップ + 白インナー
曜日で固定してしまえば、朝の思考コストは文字通りゼロ。「いつも同じ服の人」と思われても大丈夫。スティーブ・ジョブズを引き合いに出すまでもなく、ビジネスでは「いつも安定した身だしなみの人」という信頼感につながります。
メンズ用テンプレ:ジャケット/シャツ/スラックスの黄金比
男性(またはメンズライクな服装)なら、この比率を守るだけで誰から見ても「ちゃんとした人」に見えます。
- ジャケット:ネイビー無地(ウールっぽいポリエステル素材)。お尻が半分隠れるくらいの長さ。
- トップス:白のオックスフォードシャツ、または質の良い白Tシャツ。
- ボトムス:チャコールグレーか黒のスラックス。裾に向かって細くなる「テーパード」型を選ぶこと。
- 足元:黒のローファーか、シンプルなレザースニーカー。
これは「ジャケパン」の王道中の王道。どんな職場に行っても及第点が取れる黄金比です。
レディース用テンプレ:シンプルなトップス×細身ボトムの安定解
女性の服は選択肢が多すぎて迷宮入りしがち。ここでも「メンズライクなシンプルさ」を取り入れて迷いを断ち切ります。
- ジャケット:襟なし(ノーカラー)かテーラードのネイビー/グレージャケット。
- トップス:フリルやレースのない、シンプルなブラウスかカットソー。色は白か淡いグレーなどで固定。
- ボトムス:センタープレスの入ったテーパードパンツ。スカートならヒラヒラしないタイト〜ストレート型が楽です。
- 足元:ヒールの低いパンプスかローファー。
「可愛さ」より「機能美」を優先すると、トレンドに左右されず長く着られます。
季節変化への対処法(春夏秋冬でアイテム数を増やさない技術)
季節ごとに服を総入れ替えしてたら、お金も管理コストも持ちません。基本セットを「通年素材」にして、重ね着で調整するのが正解です。
- 春・秋:基本セットそのまま。
- 夏:ジャケットを脱ぐ。インナーを半袖や涼しい素材に変える。
- 冬:基本セットの上にコートを羽織る。ジャケットの下に薄いニットやインナーダウンを挟む。
「服を変える」んじゃなくて「枚数を変える」。この発想ならクローゼットの中身はずっと一定です。
「周りから浮かない」ラインの見極め方
唯一の不安は「職場で浮かないか」ですよね。確認するのは「上司や先輩の服装」だけでOK。
自分より少し上の立場の人が着ている服の「色味」と「襟があるかどうか」だけ見てください。全員襟付きシャツならTシャツは避ける、全員ダークカラーなら明るいベージュは避ける。それだけ合わせれば、TPOズレは防げます。
よくある失敗とADHD的回避策(買いすぎ・冒険しすぎ・判断過多)
仕組みを作っても、運用段階で「衝動」という敵が現れます。セールの赤札や「限定」という言葉に弱い自覚があるなら、あらかじめ防衛策を張っておきましょう。
セールで派手色を買ってしまう罠
「2万円のジャケットが70%OFF!」みたいな状況で、普段絶対着ない真っ赤な服とか買っちゃうんですよね。「安いから」は服を買う理由になりません。
回避策:
「定価でもそれを買ったか?」と自問してください。答えがNoなら、服が欲しいんじゃなくて「お得感」を買いたいだけです。クローゼットのノイズになるだけなので、そっとブラウザを閉じましょう。
同じ服を複数枚買うべきケース/NGケース
「気に入った服は複数買う」は有効ですが、やり方を間違えると事故ります。
- 正解:「全く同じ色・サイズのものを2着買う」。
ローテーションが楽になる推奨の「ストック買い」です。 - 不正解:「形がいいから、色違いで全色買う」。
色が変われば合わせる靴もインナーも変わります。「色違い」はコーデの難易度を上げるので、制服化においてはNG行為です。
衝動買いを減らす「カゴに入れて一晩寝かせる」戦略
夜中にネットショッピングするのは危険です。深夜の脳はブレーキが壊れていて、アクセル(購入ボタン)を踏みたがります。
回避策:
「欲しい」と思ったらカートに入れてもいいですが、決済は絶対に翌日の朝まで待つという鉄の掟を作ります。一晩寝て脳が回復した状態で見ると、「なんでこんなの欲しかったんだろ?」と冷静になれる確率がグッと上がります。
色・素材の冒険は“1カテゴリだけ”にする
「たまには気分を変えたい」という欲求が出た時、全身を変えようとすると大怪我します。変化をつけるなら、面積の小さい「1箇所」だけにしましょう。
- メンズ:靴下の色を変える、ネクタイの柄を変える。
- レディース:スカーフを巻く、ピアスのデザインを変える。
これなら、ベースの制服(セットアップ)を崩さずに気分転換できます。
洗濯や管理負荷で挫折しないための注意点
どんなに素敵な服でも、「手洗い推奨」「ドライクリーニング必須」のタグがついていると、洗濯カゴの中に放置され続け、結局着なくなります。
デザインより「洗濯タグ」を見てください。「ネットに入れて洗濯機へGO」できることが、継続するための絶対条件です。
まとめ:服選びは“センス”ではなく“仕組み化”で解決できる
服選びに迷うのは、あなたのセンスが悪いからでも、決断力がないからでもありません。単に「選択肢が多すぎる環境」に置かれているだけです。
ビジネスウェアという制約の多いフィールドこそ、論理的なルールでガチガチに仕組み化してしまえば、実は一番楽に攻略できるゲームになります。
この記事の要点チェックリスト
- [ ] 色を絞る:ベースカラー2色(ネイビー・グレー)+白のみ。
- [ ] 数を絞る:1週間は8アイテム(上下セット2組+インナー)で回る。
- [ ] 検索を絞る:ZOZOでは色・サイズ・素材のフィルタをかけてから見る。
- [ ] セット化する:上下の組み合わせを固定し、曜日で回す。
- [ ] 管理を楽にする:洗える・シワにならない素材を選び、ハンガーにかける。
最初に揃えるアイテムの優先順位
いきなり全部買い替える必要はありません。まずはここから。
- ネイビーのセットアップ(ジャケット+パンツ):これがあれば週の半分は解決。
- ノンアイロンの白シャツ/カットソー:3枚あれば洗濯が回ります。
- 歩きやすい黒のレザーシューズ:足元が整えば全体が締まります。
自分の生活特性に合わせて設定をカスタマイズする
ここでは標準的なルールを紹介しましたが、「肌触りに敏感」ならポリエステルじゃなくコットンを選べばいいし、「締め付けが無理」ならウエストゴムのパンツを選べばいいんです。
大事なのは「世間のおしゃれ」じゃなく「あなたの脳と体が快適であること」。
最後に:コーデを考える時間は、あなたの強みを活かすために使ってほしい
朝の15分、服選びで悩んでいた時間をゼロにできれば、ゆっくりコーヒーを飲む時間が生まれます。鏡の前で「はぁ…」と自己嫌悪していたエネルギーを温存できれば、その分だけ仕事でいいパフォーマンスが出せるようになります。
服はあくまで、あなたが社会で活躍するための「装備」です。装備選びで疲れ果てるんじゃなくて、最強の装備をサッと身につけて、万全の状態で一日のスタートを切ってくださいね。
【出典・参考情報】
- ZOZOTOWN(ファッション通販サイト)(確認日:2025/12/06)
- How Many Decisions Do We Make Each Day? | Psychology Today(確認日:2025/12/06)
※1日の決断回数(約35,000回)に関する一説として参照。 - 女性が着ていく服に悩む時間は人生で約287日間 - GIGAZINE(確認日:2025/12/06)
※Marks & Spencerの調査結果(Telegraph報道)を参照。