転職

3年目エンジニアが「次のキャリア」で失敗しないための戦略|転職とスキルの選び方

「気づけば入社して、もう3年か…」

深夜のオフィス、モニターの光だけが煌々と光る中で、ふと我に返る。コードを書く手は間違いなく入社当時より早くなったし、複雑な要件も理解できるようになった。それでも、胸の奥でくすぶる漠然とした不安が消えない。

「自分は、このままでいいんだろうか?」

目の前のタスクをこなす日々。それはそれで充実しているけれど、3年という月日は、エンジニアとしてのキャリアを否応なく次のステージへと押し上げます。チュートリアル期間が終わり、これからは「自分自身の意思」でキャリアの舵を切らなければならない。そんな無言のプレッシャーを感じてはいないでしょうか。

周りを見渡せば、同期は自社開発のスタートアップに転職して新しい技術に触れていたり、フリーランスとして独立する準備を始めていたり。SNSを開けば、輝かしいキャリアを歩む同世代の姿が目に飛び込んでくる。焦りが募る一方で、「自分には”これだ”と誇れるスキルがない」という現実が重くのしかかる。

この「3年目」という時期は、キャリアにおける最も重要な“分岐点”です。

ここで焦って隣の芝生に飛びつき、自分のスキルセットと合わない環境へ転職して失敗する人。
逆に、現状の居心地の良さに甘んじて変化を恐れ、気づいた頃には市場価値が陳腐化してしまう人。

僕はこれまで、個人としても企業の一員としてもメディア運営に携わる中で、多くのエンジニアがこの分岐点で道を見失う姿を見てきました。何を隠そう、僕自身もADHDという特性と向き合いながら、何度もキャリアに悩み、転職を繰り返してきた一人です。だからこそ、この時期の焦燥感や無力感が痛いほどわかります。

この記事は、そんな過去の自分と同じように悩むあなたへ向けて書いています。

目指すのは、勢いだけの転職ではありません。かといって、不安を抱えたままの現状維持でもない。
このキャリアの分岐点で最も重要なのは、『自分だけのキャリア軸を作る』こと。

この記事を読めば、なぜあなたが今悩んでいるのか、その正体が明確になり、進むべき道を描くための具体的な思考法と戦略を手に入れることができます。5年後、10年後に「あの時、考えておいてよかった」と思える未来のために、一緒にキャリアを再定義していきましょう。

目次

3年目エンジニアが直面する「キャリアの壁」とは

なぜ、多くのエンジニアが社会人3年目というタイミングで、まるで示し合わせたかのように同じような悩みを抱えるのでしょうか。それは、個人の能力の問題というよりも、多くの人が共通してぶつかる構造的な「壁」が存在するからです。まずは、あなたが感じている不安の正体を3つの壁として分解し、客観的に見ていきましょう。

技術の浅さに悩む「中途半端期」

【共感パート】
「一通りの業務はこなせる。でも、『あなたの専門は何ですか?』と聞かれたら、言葉に詰まってしまう」
こんな経験はありませんか? 3年目になると、HTML/CSS、JavaScript、PHP、Java、SQL…と、複数の技術に触れる機会はあったはずです。しかし、そのどれもが「広く浅く」で、一つの技術を深く追求するまでには至っていない。いわば「器用貧乏」な状態です。これが一つ目の壁、技術的な「中途半端さ」です。市場で戦えるほどの「武器」がないことに気づき、自分の市場価値に自信が持てなくなるのです。

【データ・論理パート】
この現象は、特に若手育成を目的とした企業の配属方針に起因することが少なくありません。入社後の数年間は、本人の適性を見極めたり、幅広い視野を持たせたりするために、意図的に様々なプロジェクトや案件を経験させることが多いからです。

育成フェーズ 主な目的 スキルの特徴
1〜2年目 基礎習得・環境適応 新しい知識を急速に吸収。成長実感が大きい。
3年目〜 応用・専門性模索 知識が広がる一方、深さが伴わない「中途半端期」に陥りがち。
5年目〜 専門性確立 特定分野での深い知見と経験を武器にする。

つまり、あなたが感じている「中途半端さ」は、あなた個人の努力不足ではなく、多くのエンジニアが通るキャリアパスの過程で生じやすい構造的な課題なのです。

「成長実感がない」「このままでいいのか」という停滞感

【共感パート】
入社1、2年目の頃は、毎日が新しいことの連続でした。「昨日まで書けなかったコードが書けるようになった」「エラーを自力で解決できた」。そんな小さな成功体験が、確かな成長実感に繋がっていたはずです。しかし3年目にもなると、日々の業務はどこかルーティン化し、あの頃のような急成長を感じられなくなります。これが二つ目の壁、「成長の停滞感」です。この停滞感が、「この会社にこのままいても、スキルアップできるのだろうか?」という焦りを生み出します。

【データ・論理パート】
これは学習の成長曲線における「プラトー(高原状態)」と呼ばれる現象で説明できます。初期段階で急激にスキルが向上した後、一時的に成長が鈍化する期間に入るのです。

  • 初期(Learning Spurt): 基礎を学ぶ段階。インプットがそのままアウトプットに繋がり、成長を実感しやすい。
  • 中期(Plateau): 応用段階。基礎知識の組み合わせや、より複雑な課題解決が求められるため、目に見える成長が感じにくくなる。

このプラトーを乗り越えるには、日々の業務をこなすだけでなく、意識的に「少し背伸びした挑戦」や「体系的な学び直し」といった、新しい刺激を自ら作り出す必要があります。停滞は後退ではありません。次の飛躍への準備期間なのです。

会社都合でプロジェクトが変わる“キャリアの不確実性”

【共感パート】
「ようやく今のプロジェクトに慣れて、専門性を深めようと思った矢先に、全く別の技術スタックを使う部署へ異動になった」
特にSES(客先常駐)や受託開発の現場では、このような経験を持つ方も多いでしょう。会社の経営方針やクライアントの都合によって、自分の意思とは関係なく働く場所や担当業務が決まってしまう。これが三つ目の壁、キャリアの「不確実性」です。自分のキャリアプランを描いても、それが会社の都合一つで簡単に覆されてしまう無力感は、将来への大きな不安に繋がります。

【データ・論理パート】
キャリアの主導権を会社に委ねることの最大のリスクは、スキルの断片化です。

  • 例1: Javaの経験を積んでいたのに、次の現場ではC#を要求される。
  • 例2: フロントエンドを極めたいのに、インフラ保守の案件にアサインされる。

このようなキャリアが続くと、職務経歴書に一貫性がなくなり、「結局この人は何が専門なんだろう?」と転職市場で評価されにくくなる危険性があります。自分のキャリアの主導権をいかにして取り戻すか。これは、3年目エンジニアにとって避けては通れない、極めて重要なテーマなのです。

転職する前に考えるべき“キャリア軸”の作り方

目の前にある「壁」の正体が見えてきたところで、次に考えるべきは「じゃあ、どうすればいいのか?」という具体的なアクションです。しかし、ここでいきなり転職サイトに登録するのは悪手。その前に、あなた自身のキャリアの「コンパス」となる“キャリア軸”を定義する必要があります。僕自身、この軸がブレていたせいで何度も遠回りをしてきました。キャリア軸とは、あなたが仕事を通じて何を実現したいのか、どんな状態でありたいのかを示す、いわば「北極星」のようなもの。これがあるだけで、情報の渦に溺れることなく、自分に合った選択ができるようになります。

① “スキル軸”と“価値軸”を分けて考える

「市場価値の高いスキルを身につけたい」
エンジニアなら誰もがそう考えますよね。ReactやGo、あるいはクラウドや機械学習…。しかし、流行りの技術を追いかけるだけでは、本当の意味でのキャリア軸は見えてきません。なぜなら、それはキャリアを構成する要素の半分でしかないからです。

ここで重要になるのが、キャリアを「スキル軸」と「価値軸」の2つに分解して考える視点です。キャリア軸は、以下の2つの要素から成り立っています。これらを混同せず、それぞれを言語化することが、ブレない軸を作る第一歩です。

  • スキル軸 (CAN):
    • 概要: 何ができるか、どんな技術を持っているか。いわゆる「専門性」や「市場価値」。
    • 例:
      • 特定のプログラミング言語(Go, TypeScript)を深く理解している。
      • AWSやGCPを用いたインフラ構築ができる。
      • 大規模サービスの開発・運用経験がある。
  • 価値軸 (WILL/WANT):
    • 概要: 仕事を通じて何を得たいか、どんな状態で働きたいか。いわゆる「やりがい」や「働き方」。
    • 例:
      • ユーザーの顔が見えるBtoCサービスに携わりたい。
      • 裁量権を持ってプロダクトの成長に貢献したい。
      • フルリモートで場所にとらわれずに働きたい。
      • 安定した環境で、腰を据えて技術を磨きたい。

「流行っているから」という理由だけでスキル軸を追い求めると、「技術は身についたけど、仕事が全然楽しくない」というミスマッチが起こります。逆に価値軸ばかりを優先すると、「理想の働き方は手に入れたけど、スキルが伸びず将来が不安」という状況に陥りかねません。まずはこの2つの軸を紙に書き出し、自分にとっての優先順位を整理してみましょう。

② 「どう働きたいか」から逆算する

「将来はフリーランスになりたい」「自社開発でプロダクトを育てたい」「テックリードとしてチームを牽引したい」。ぼんやりとした理想像はあっても、そこへ至る道筋が見えない。これも3年目エンジニアが抱えがちな悩みです。目の前のスキルアップに必死で、5年後、10年後の自分を具体的にイメージできていないのです。

そこで有効なのが、ゴールから現在地までを逆算して考える「バックキャスティング」という思考法です。

【逆算思考のステップ】

  1. ゴール設定 (5〜10年後):
    • どんなエンジニアになっていたいか?(例: toCサービスの開発リーダー)
    • どんな働き方をしていたいか?(例: 週3リモート、年収800万円)
  2. 中間目標設定 (3年後):
    • ゴール達成のために、3年後にはどんなスキルや経験が必要か?(例: Reactを用いたフロントエンド開発経験3年以上、小規模チームのリーダー経験)
  3. 直近のアクション (1年以内):
    • 中間目標達成のために、今から1年で何をすべきか?(例: 現職でReactの案件に手を挙げる、GitHubで個人開発のアプリを公開する、転職エージェントに相談して市場の動向を聞く)

このようにゴールから逆算することで、「今、学ぶべき技術」や「次に選ぶべき環境」が驚くほど明確になります。「なんとなくReactを勉強する」のではなく、「3年後にtoCサービスの開発リーダーになるために、Reactを習得する」というように、行動の一つひとつに目的意識が生まれるのです。

③ 「成長」と「安定」のバランスを見極める

キャリアを考える上で、誰もが「成長」と「安定」の2つの間で揺れ動きます。「最先端の技術を追いかけたいけど、ベンチャーは不安定で怖い」「今の会社は安定してるけど、スキルが古くて不安」。特に僕のようなADHD傾向がある人間は、刺激を求める一方で、環境の変化にストレスを感じやすい。このトレードオフの関係を理解し、自分にとっての最適解を見つけることが重要です。

もちろん、「成長」と「安定」は、どちらが良い悪いという話ではありません。キャリアのフェーズや個人の価値観によって、最適なバランスは異なります。以下のマトリクスを使って、自分が今どのバランスを求めているのかを客観視してみましょう。

成長重視 安定重視
メリット ・市場価値の高いスキルが身につく
・キャリアアップのスピードが速い
・高い報酬を得られる可能性がある
・雇用の継続性が高い
・福利厚生が充実している
・精神的な負荷が少ない
デメリット ・労働時間が長くなる傾向
・常に学び続ける必要がある
・事業や会社の将来が不透明
・スキルの陳腐化リスク
・年功序列で評価されにくい
・大きな裁量権は得にくい
環境の例 ・アーリーステージのスタートアップ
・技術顧問、フリーランス
・大手企業の社内SE
・官公庁系の受託開発

3年目の今は、多少のリスクを取ってでも「成長」に振り切るべき時期かもしれません。あるいは、ライフイベントを見据えて「安定」を固める準備を始める時期かもしれません。正解は一つではありません。あなたの「価値軸」と照らし合わせ、納得のいくバランスを見つけることが、後悔しないキャリア選択に繋がるのです。

SES・受託・自社開発──それぞれのキャリア特性

自分の「キャリア軸」が見えてきたら、次はその軸と照らし合わせながら、働く環境を客観的に評価するフェーズに入ります。エンジニアの主な働き方である「SES」「受託開発」「自社開発」は、それぞれにメリット・デメリットがあり、キャリアに与える影響も大きく異なります。どの環境が絶対的に優れているというわけではありません。重要なのは、あなたのキャリア軸と各環境の特性を照らし合わせ、今の自分にとって最適な場所を見極めることです。

SES:幅広い案件経験は積めるが、スキルが断片化しやすい

「いろんな業界の、いろんな技術に触れてみたい」
そう考えるなら、SES(システムエンジニアリングサービス)は魅力的な選択肢です。様々なクライアントの現場を経験できるため、短期間で多様な知識や開発スタイルを吸収できる可能性があります。特に若手のうちは、自分にどんな技術が向いているのかを見極めるための「お試し期間」として活用できる側面もあるでしょう。

しかし、その一方で注意すべきは、H2-1でも触れた「スキルの断片化」のリスクです。案件はあくまでクライアントの都合で決まるため、自分の意思とは無関係にプロジェクトを渡り歩くことになりがちです。

  • キャリアへの影響(ポジティブ)
    • 多様な業界知識(金融、製造、通信など)が身につく。
    • 様々な技術スタックに触れる機会がある。
    • コミュニケーション能力や環境適応能力が磨かれる。
  • キャリアへの影響(ネガティブ)
    • 一つの技術を深く追求しにくい。
    • 上流工程に関われず、テストや運用保守ばかりになる可能性がある。
    • 自社への帰属意識が薄れやすい。

「スキル軸」として特定の専門性を深めたいと考えている場合、SES環境は長期的に見るとミスマッチになる可能性を考慮すべきです。

受託開発:チーム開発スキルが育つが、クライアント依存が強い

クライアントから依頼されたシステムやソフトウェアを開発するのが、受託開発です。要件定義から設計、開発、納品までを一貫して自社チームで行うことが多く、チーム開発の一連の流れを経験できるのが大きなメリットと言えます。コードレビューの文化が根付いている会社も多く、質の高い開発スキルを体系的に学ぶには良い環境です。

ただし、キャリアの方向性がクライアントの予算や納期、要望に大きく左右されるという側面も持ち合わせています。

  • キャリアへの影響(ポジティブ)
    • Gitを使ったバージョン管理など、実践的なチーム開発スキルが身につく。
    • 様々な業界のビジネスモデルを開発を通じて理解できる。
    • 納期や予算といった制約の中で開発するマネジメント能力が育つ。
  • キャリアへの影響(ネガティブ)
    • 技術選定の自由度が低く、レガシーな技術を使い続ける場合がある。
    • 納品後のプロダクトの成長に関われないことが多い。
    • 厳しい納期に追われ、疲弊しやすい。

「価値軸」として、自分たちでプロダクトを育てていく実感を得たいのであれば、受託開発の「作って納品したら終わり」というスタイルに物足りなさを感じるかもしれません。

自社開発:長期的スキル蓄積が可能だが、ポジション争いも激しい

自社で企画・開発したサービスやプロダクトを運営するのが、自社開発企業です。最大の魅力は、自分たちが開発したプロダクトの成長に、企画段階から長期的に関われることでしょう。ユーザーからのフィードバックを直接受け取り、改善を繰り返していくプロセスは、大きなやりがいと責任感を伴います。

技術選定にも比較的自由度があり、モダンな技術を積極的に採用する企業も多いため、専門性を高めやすい環境と言えます。

  • キャリアへの影響(ポジティブ)
    • サービスや事業の成長に直接貢献できる。
    • 腰を据えて一つの技術やドメイン知識を深掘りできる。
    • 企画やマーケティングなど、開発以外の領域にも関われる可能性がある。
  • キャリアへの影響(ネガティブ)
    • 会社の事業が傾くと、キャリアそのものが不安定になる。
    • 扱う技術領域が固定化され、スキルが偏るリスクがある。
    • 人気企業は競争が激しく、求められるスキルレベルも高い。

「スキル軸」と「価値軸」の両方を高いレベルで満たせる可能性がある一方、その分、個人の能力や主体性が厳しく問われる環境であることも理解しておく必要があります。

働き方 スキルの広がり スキルの深さ キャリアの主導権
SES 会社・客先依存
受託開発 クライアント依存
自社開発 自分次第

これらの特性を理解した上で、あなたのキャリア軸に最もフィットするのはどの環境か、改めて考えてみてください。

スキルアップと転職を両立させる戦略

働く環境ごとの特性を理解し、自分の進みたい方向性が見えてきたら、次はいよいよ具体的な行動計画を立てるステップです。「キャリア軸」という目的地と、「働く環境」という地図を手に入れた今、そこへたどり着くための「乗り物」、すなわちあなた自身の市場価値を高めるスキルを磨き上げる必要があります。しかし、やみくもに学習を始めるのは非効率。現職の環境を最大限に活用しながら、転職市場で評価されるスキルを戦略的に身につけていく方法を解説します。

現職で“伸ばせるスキル”をまず棚卸しする

転職を考え始めると、どうしても「今の会社にはもう学ぶことがない」と考えがちです。僕もそうでした。しかし、それは非常にもったいない。今の環境だからこそ得られる経験やスキルが必ずあるはずです。まずは、感情を一旦横に置いて、現在の業務内容を客観的に棚卸ししてみましょう。

【スキルの棚卸しリスト例】

  • 使用技術:
    • 言語: PHP (Laravel), JavaScript (jQuery)
    • DB: MySQL
    • インフラ: オンプレミスサーバー
  • 業務内容:
    • 既存システムの保守・運用、軽微な機能追加がメイン
    • 顧客からの問い合わせ対応(仕様調査など)
  • 得られた経験:
    • 大規模でレガシーなコードを読み解く力
    • 障害発生時の原因特定と、修正対応の経験
    • 顧客折衝の基礎的なスキル

このリストを見ると、例えば「モダンな技術経験が足りない」という課題が見えてきます。しかし同時に、「レガシーコードを読む忍耐力」や「障害対応経験」は、どんな現場でも役立つポータブルなスキルです。すぐに転職できない状況であっても、現職で「あと半年で、この障害対応の経験だけは誰にも負けないレベルになろう」といった目標を立てることができます。不満ばかりに目を向けるのではなく、今いる場所から何を「持ち帰る」ことができるかを考える視点が、キャリアを有利に進める上で非常に重要です。

転職市場で評価されるスキル(例:フロント→React、バック→Go/PHPなど)

現職で得られるスキルを棚卸ししたら、次に「これから身につけるべきスキル」を市場の需要と照らし合わせて選びます。ここで重要なのは、「自分が学びたいもの」と「市場が求めているもの」のバランスです。いくら自分が好きな技術でも、求人がなければキャリアには繋がりません。

2025年現在、Web系エンジニアの転職市場では、以下のようなスキルが評価される傾向にあります。(※技術のトレンドは常に変化するため、最新の情報をキャッチアップし続けることが重要です)

領域 特に評価されやすいスキル・経験 なぜ評価されるのか
フロントエンド ・React, Vue.js, TypeScriptでの開発経験
・Next.js, Nuxt.jsなどフレームワークの理解
・モダンなWebアプリケーション開発の主流
・宣言的UIによる開発効率と保守性の高さ
バックエンド ・Go, PHP(Laravel), Ruby(Rails)での開発経験
・マイクロサービスアーキテクチャの理解
・各言語に大規模サービスの開発実績が多数
・スケーラビリティや保守性の高い設計思想
インフラ ・AWS, GCPなどのクラウドサービス利用経験
・Docker, Kubernetesによるコンテナ技術
・オンプレミスからの移行が加速
・インフラのコード化(IaC)による効率化

これらのスキルを独学で学ぶのも一つの手ですが、最も効率的なのは現職の業務に少しでも関連付けることです。「jQueryしか使っていないプロジェクトだが、一部のコンポーネントだけでもReactで実装できないか提案してみる」といった小さな一歩が、次のキャリアに繋がる大きな実績になるのです。

ポートフォリオ・GitHub更新は「転職前に必須」

3年目エンジニアの転職活動において、職務経歴書だけではあなたの本当の技術力を証明することは困難です。なぜなら、面接官が知りたいのは「どんな会社にいたか」ではなく、「あなた個人が、どんなコードを書き、どんな問題を解決できるのか」だからです。

その最も雄弁な証明となるのが、ポートフォリオ(個人開発した作品)と日々の学習記録であるGitHubアカウントです。

  • ポートフォリオの役割:
    • 技術力の証明: 業務では使えないモダンな技術(例: React, Go)を使ってみせる。
    • 課題解決能力のアピール: なぜその作品を作ったのか、どんな課題を解決したかったのかを語ることで、思考プロセスを示せる。
  • GitHubの役割:
    • 学習意欲の証明: いわゆる「草を生やす」ことで、継続的に学習する習慣があることを示せる。
    • コードの質のアピール: 面接官はあなたのコードを直接見ることができます。可読性や設計思想をアピールする絶好の機会です。

「忙しくて作る時間がない」という気持ちは痛いほどわかります。しかし、完成度が高くなくても構いません。「こんな技術に興味があって、ここまで実装してみました」という過程を見せるだけでも、何もしないライバルとは大きな差がつきます。転職活動を本格化させる前の「助走期間」と捉え、少しずつでも手を動かし始めることを強くお勧めします。

転職 or フリーランス、どちらを選ぶべきか?

キャリア軸を定め、スキルを棚卸しし、進むべき環境の解像度も上がってきた。ここまでくると、いよいよ具体的なキャリアチェンジの選択肢が現実味を帯びてきます。それが「会社員として転職するか」、それとも「フリーランスとして独立するか」という大きな決断です。どちらの道にも可能性があるからこそ、悩むのは当然です。僕自身も、会社員と個人事業主の両方を経験したからこそ、それぞれのメリット・デメリットが身に染みてわかります。この二つの道を、あなたのキャリア軸と照らし合わせながら比較検討していきましょう。

正社員転職が向いている人(チーム志向/スキル形成期)

まず、会社に所属して正社員として働く道です。特に3年目というキャリアフェーズにおいては、多くの人にとって現実的かつ有効な選択肢と言えます。

以下のような志向を持つ人は、正社員としての転職がフィットしやすいでしょう。

  • チームで大きなプロダクトを開発したい人:
    一人では成し遂げられない大規模なサービスの開発に、チームの一員として貢献することにやりがいを感じるタイプです。
  • 特定の技術領域で、さらに専門性を深めたい人:
    自社開発企業などで、腰を据えて一つの技術スタックを深く追求したい場合、安定した環境は大きなメリットになります。
  • マネジメントやリーダー経験を積みたい人:
    将来的にテックリードやEM(エンジニアリングマネージャー)を目指すなら、組織の中でチームを率いた経験は必須です。
  • 安定した収入や福利厚生を重視する人:
    毎月の収入が保証され、社会保険や研修制度が整った環境で、安心してスキルアップに集中したいと考える人です。

3年目はまだキャリアの形成期です。尊敬できるシニアエンジニアのコードを間近で見たり、体系的な研修を受けたりといった「成長環境」を求めるなら、正社員の道が堅実と言えます。

フリーランスが向いている人(自走できる/案件主導型)

次に、フリーランスとして独立する道です。自由な働き方や高い報酬に憧れを抱く人も多いでしょう。しかし、その裏側には会社員とは比較にならないほどの自己管理能力と責任が求められます。

以下のような特徴を持つ人は、フリーランスとしての適性があるかもしれません。

  • 明確に「売り」にできる専門スキルがある人:
    「Reactでのフロントエンド開発なら任せてください」というように、自分のスキルを明確に言語化し、市場で評価されるレベルにあることが大前提です。
  • 自ら営業し、案件を獲得する気概がある人:
    仕事は待っていても降ってきません。エージェントを使うにせよ、人脈を使うにせよ、自分を売り込む主体性が不可欠です。
  • スケジュールやタスクを自己管理できる人:
    遅刻や納期遅れは即、信頼の失墜に繋がります。ADHD傾向のある僕にとっては、ここは非常に高いハードルでした。徹底した自己管理が求められます。
  • 技術以外の領域(経理、法務など)も自分でこなせる人:
    確定申告や契約書の確認など、開発以外のあらゆる業務を自分一人で、あるいは専門家の助けを借りて処理する必要があります。

覚悟は必要ですが、自分の裁量で案件を選び、実力次第で会社員時代を大きく超える収入を得られる可能性は、フリーランスならではの大きな魅力です。

DYMテックなど「両方のキャリア相談ができる」支援を活用

「どちらの働き方も一長一短で、やっぱり決めきれない」
ここまで考えて、そう思うのはごく自然なことです。むしろ、深く思考できている証拠と言えます。

ここで重要なのは、一人で無理に結論を出そうとしないことです。転職も独立も、あなたの人生を左右する大きな決断。だからこそ、客観的な第三者の視点を取り入れるべきです。

ただし、相談相手は慎重に選ぶ必要があります。例えば、転職エージェントは正社員の求人紹介がゴールですし、フリーランス向けエージェントは案件紹介がゴールです。それぞれの立場からポジショントークをされると、かえって混乱してしまいます。

そこで有効なのが、正社員とフリーランス、両方の選択肢をフラットに比較検討してくれるサービスを活用することです。

例えば「DYMテック」のようなサービスは、正社員への転職支援とフリーランス向けの案件紹介、両方の事業を手掛けています。このようなサービスを使うメリットは、あなたのスキルセットやキャリアプランをヒアリングした上で、

「今のスキルなら、A社のような自社開発企業への転職がキャリアアップに繋がりますよ」
「もう少し実務経験を積めば、月単価〇〇円くらいのフリーランス案件も狙えます。そのために、まずは現職でこの経験を積みましょう」

といったように、両方の市場を知っているからこその客観的なアドバイスがもらえる点にあります。

もちろん、彼らもビジネスなので、最終的には何らかの成約を目指していることは忘れてはいけません。彼らの提案を鵜呑みにするのではなく、あくまで「自分のキャリア軸を判断するための貴重な情報源」として活用する、というスタンスが重要です。

今すぐフリーランスになるつもりがなくても、「自分の市場価値がフリーランス市場でどれくらいなのか」を知っておくだけで、会社員としてのキャリアを考える上でも大きな自信と指針になります。“選択肢”を増やすための一つの手段として、一度キャリア面談を受けてみる価値はあるでしょう。

まとめ|3年目は“転職のタイミング”ではなく“キャリアを定義する時期”

ここまで、3年目エンジニアが直面する壁の正体から、それを乗り越えるためのキャリア軸の作り方、そして具体的な選択肢の比較まで、順を追って解説してきました。もしあなたがこの記事を最後まで読んでくれたのなら、キャリアに対する漠然とした不安は、具体的な課題と次にとるべきアクションへと姿を変え始めているはずです。

最後に、最も重要なことをお伝えします。
それは、「3年目は、焦って転職活動を始めるタイミングではない」ということです。むしろ、「自分のキャリアを初めて主体的に定義する、最高のタイミング」なのです。この時期にどれだけ深く自己分析し、キャリアの軸を固められたかが、あなたの5年後、10年後のエンジニア人生を大きく左右します。

キャリア迷子にならない人は「市場を定点観測」している

僕がこれまで見てきた、キャリアを順調にステップアップさせていくエンジニアには共通点があります。それは、常に市場を「定点観測」していることです。

彼らは、転職する気があってもなくても、定期的に転職サイトを眺め、どんな技術に需要があるのか、どんな経験を持つエンジニアの年収が高いのかをチェックしています。それは、自分の市場価値を常に客観的な指標で測るためです。

  • 今の自分のスキルセットは、市場でどれくらい評価されるのか?
  • 1年後、今の会社で得られる経験は、市場価値を高めることに繋がるか?
  • 自分が目指すキャリアパスの先にいる人たちは、今いくらくらいの年収をもらっているのか?

これらの問いに答えられるようになると、日々の業務に対するモチベーションも変わってきます。「会社に言われたからやる」のではなく、「自分の市場価値を高めるために、このスキルを習得する」という主体的な姿勢が生まれるのです。定点観測は、キャリアの迷子にならないための、最も効果的な羅針盤と言えます。

まずは情報収集を始めよう(キャリア相談・エージェント面談)

この記事を読んで、あなたのキャリアの輪郭は少しずつ見えてきたかもしれません。しかし、それはまだ「仮説」の段階です。その仮説が正しいのか、もっと良い選択肢はないのかを検証するために、次の一歩を踏み出す必要があります。

その最初の一歩として最も手軽で効果的なのが、「キャリアのプロに壁打ち相手になってもらう」ことです。

友人や同僚への相談も良いですが、どうしても主観や感情が入り混じりがち。その点、転職エージェントやキャリアアドバイザーは、数多くのエンジニアのキャリアを見てきたプロです。彼らとの面談は、「求人を紹介してもらう場」ではなく、「自分のキャリアの仮説を検証し、市場価値を測る場」として活用するのです。

先ほど紹介した「DYMテック」のような、正社員とフリーランスの両方の選択肢を提示できるサービスであれば、より多角的な視点からあなたにフィードバックをくれるでしょう。

面談で必ずしも転職や独立を決める必要はありません。
「まずは話を聞いてみるだけ」
それでいいのです。その一歩が、あなたのキャリアを「会社任せ」から「自分主体」へと切り替える、大きなきっかけになるはずです。

3年目の今、この分岐点に立てているあなたは幸運です。悩み、考え、行動することで、未来は確実に変わります。この記事が、あなたの輝かしいエンジニア人生の第一歩となることを、心から願っています。

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