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イーサネット完全解説│フレーム構成・PoE・衝突回避・ギガビット・FDDI・TDMA・ATMまで網羅

パソコン同士やプリンタ、サーバなどをつなぐとき、ほとんどの場合に使われるのが「イーサネット」です。LANケーブルを差し込めば通信できる――そんな当たり前の仕組みも、中をのぞくと実はかなり奥が深いんです。

基本情報や応用情報の試験では、イーサネットのフレーム構成PoE(Power over Ethernet)衝突回避(CSMA/CD)ギガビットイーサネットといった定番テーマに加え、FDDITDMAATMなど歴史的な方式まで幅広く出題されます。

この記事では、これらの技術を基礎から順番に整理し、仕組みを論理的に理解できる流れで解説します。さらに、職場や日常生活での具体的な活用例も交えて、「ああ、だからこういう設計になってるのか!」と納得できるようにしました。図や表もたくさん使うので、イメージしながら覚えられます。

試験勉強をしながら、ネットワークの面白さや“使える知識”も一緒に身につけていきましょう。

イーサネットの基本概要と進化│LAN通信規格の歴史と試験頻出ポイント

イーサネット(Ethernet)は、LAN(Local Area Network)で最も広く使われている通信規格です。1970年代にゼロックス社のパロアルト研究所で開発され、その後IEEE 802.3として標準化されました。現在でも、オフィス・家庭・データセンターなどあらゆる場所で活躍しています。

  • 有線通信:ツイストペアケーブルや光ファイバーを利用
  • パケット通信:データを小さな単位(フレーム)に分けて送信
  • 規格の世代交代:10Mbps → 100Mbps → 1Gbps → 10Gbps…と進化

試験での狙われポイント

  1. 速度と規格の対応(10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-Tなど)
  2. 伝送媒体(UTPケーブルのカテゴリや光ファイバーの種別)
  3. アクセス制御方式(CSMA/CDの仕組み)
世代 規格例 最大速度 媒体 主な用途
第1世代 10BASE-5, 10BASE-T 10Mbps 同軸/UTP 初期LAN、研究所
第2世代 100BASE-TX 100Mbps UTP Cat5 オフィスLAN
第3世代 1000BASE-T 1Gbps UTP Cat5e/Cat6 サーバ接続、家庭LAN
第4世代 10GBASE-T 10Gbps UTP Cat6a/光 データセンター

実生活の例:自宅のWi-FiルーターとパソコンをLANケーブルでつないだとき、速度が「1.0Gbps」と表示されたら、それは1000BASE-Tで通信しているということです。職場で動画編集や大容量ファイルのやり取りをしている人は、10GBASE-T対応のケーブルやスイッチを使っている場合があります。

イーサネットフレーム構成の仕組み│各フィールドの役割と試験での覚え方

イーサネットでデータを送信するとき、情報は「フレーム」と呼ばれる一定の構造を持つ単位にまとめられます。フレームは、送り先や送り元の情報、データ本体、そして誤り検出用の情報などで構成されています。

フィールド サイズ(バイト) 内容
プレアンブル 7 同期用ビット列(101010…)
SFD(Start Frame Delimiter) 1 フレームの開始を示す
宛先MACアドレス 6 受信先の機器を特定
送信元MACアドレス 6 送信元の機器を特定
タイプ/長さ 2 上位プロトコル種別やデータ長
データ 46〜1500 実際の送信データ(ペイロード)
FCS(Frame Check Sequence) 4 CRCによる誤り検出
  • プレアンブルとSFD:受信機との同期を取る役割。試験では頻出。
  • MACアドレス:48ビットのユニーク識別子。前半24ビットはベンダID、後半は製造番号。
  • FCS:誤り検出のみ行い、訂正はしない(訂正は上位層で実施)。

実生活の例:宅配便で例えると、宛先MACアドレスは「送り先の住所」、送信元MACアドレスは「差出人住所」、データは「荷物の中身」、FCSは「検品用シール」にあたります。このシールで不良が見つかれば配達は止められる──ネットワークでも同じ動きです。

PoE(Power over Ethernet)の仕組みと種類│LANケーブルで電源供給する技術

PoE(Power over Ethernet)は、LANケーブル1本でデータ通信と電力供給を同時に行う技術です。これにより、電源コンセントがない場所でもネットワーク機器を動作させられます。

主な用途

  • ネットワークカメラ(監視カメラ)
  • 無線LANアクセスポイント
  • IP電話機
  • 小型スイッチングハブ

PoEのメリット

  1. 配線がシンプル:LANケーブルだけで通信+給電が可能
  2. 設置場所の自由度が高い:天井や屋外ポールなど電源が取りづらい場所に設置可能
  3. 安全性:規格上、非対応機器には給電しない仕組みがある
規格 IEEE番号 最大給電電力(ポート側) 対応機器例
PoE IEEE 802.3af 15.4W IP電話、AP
PoE+ IEEE 802.3at 30W 高性能AP、PTZカメラ
PoE++(Type3) IEEE 802.3bt 60W LED照明、小型PC
PoE++(Type4) IEEE 802.3bt 90W 大型ディスプレイ、産業機器

仕組みの概要

  • PSE(Power Sourcing Equipment):給電側(PoE対応スイッチやインジェクタ)
  • PD(Powered Device):受電側(PoE対応APやカメラ)
  • PSEはLANケーブルの特定ペア線に直流電流を流し、PDはこれを受け取って機器を動作させる

実生活の例:マンションのエントランスにある防犯カメラが、近くに電源コンセントなしで動いている場合、ほぼ確実にPoEで給電されています。配線工事を減らしつつ、機器を好きな場所に置けるのがPoEの魅力です。

衝突回避(CSMA/CD)の仕組み│イーサネットの通信制御と試験頻出ポイント

CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)は、初期の有線イーサネットで使われたアクセス制御方式です。複数の端末が同じ通信媒体を共有する環境で、データの衝突を検出し再送するために用いられます。

CSMA/CDの動作の流れ

  1. Carrier Sense(搬送波感知):送信前に通信媒体(ケーブル)を監視し、ほかの端末が送信中でないか確認
  2. Multiple Access(多重アクセス):空いていれば送信開始
  3. Collision Detection(衝突検出):送信中に他端末の信号と衝突したら、即座に送信停止
  4. 再送待ち(バックオフ):ランダムな時間待って再送信

ポイント

  • 半二重通信(Half Duplex)でのみ使用
  • スイッチングハブの普及により、現在はほとんど使われない
  • 試験では「CSMA/CD=衝突が起きたら検出して再送」という流れを押さえておく

CSMA/CDの動作イメージ(文章例え)

  • 通信路を道路に例えると、複数の車(端末)が同じ車線(通信路)を走っている状態
  • 車が同時に発進すると衝突(データコリジョン)が起きる
  • 衝突を検知した車は一旦停止し、ランダムなタイミングで再び走り出す

実生活の例:古い共有型ハブ(リピータハブ)を使っていた時代は、同時送信が起きるとネットワーク速度が極端に遅くなっていました。これは、まさにCSMA/CDの再送待ちが頻発していた状態です。

ギガビットイーサネットの特徴と規格比較│1Gbps超通信の基礎知識

ギガビットイーサネット(Gigabit Ethernet)は、最大1Gbps(1000Mbps)の転送速度を実現する高速LAN規格です。IEEE 802.3ab(UTPケーブル)、IEEE 802.3z(光ファイバー)など複数の派生規格があり、1990年代後半から企業LANやサーバ接続の主力として普及しました。

規格 IEEE番号 最大速度 媒体 ケーブル要件
1000BASE-T IEEE 802.3ab 1Gbps UTP(銅線) Cat5e以上
1000BASE-SX IEEE 802.3z 1Gbps 光(短波長) マルチモード光ファイバー
1000BASE-LX IEEE 802.3z 1Gbps 光(長波長) シングルモード/マルチモード光ファイバー
1000BASE-CX IEEE 802.3z 1Gbps 同軸 短距離接続向け
  • 特徴と試験の狙い目:全二重通信(Full Duplex)が基本でCSMA/CDは不要。
  • 100BASE-TXと同じRJ-45コネクタを利用可能(後方互換が取りやすい)。
  • 銅線はCat5e以上を推奨。Cat6/Cat6aなら10Gbpsへの布石にも。

実生活の例:PCのリンク速度が「1.0Gbps」表示なら、ほぼ1000BASE-T。NASのバックアップ時間短縮にはギガビット対応スイッチ+適切なケーブルが効きます。

FDDI(光ファイバー分散型データインタフェース)│高速LANの先駆けと特徴

FDDI(Fiber Distributed Data Interface)は、1980年代後半から1990年代にかけて普及した光ファイバーを使った高速LAN規格です。最大速度は100Mbpsで、当時のイーサネット(10Mbps)よりも高速だったため、大規模LANや企業のバックボーンに採用されました。

  • 層:物理層・データリンク層(ISO 9314、ANSI X3T9.5)
  • 媒体:光ファイバーで長距離通信に強い
  • アクセス制御:トークンパッシング方式
  • 冗長構成:デュアルリングで片系障害時も継続通信

構成イメージ(文章):2本の光ファイバーで双方向リングを構築。平常時は片系、障害時は待機系に自動切替して通信を維持。

試験チェック:「光ファイバー」「100Mbps」「トークン」「デュアルリング」をセットで覚える。現在の現場では稀だが、設計思想(冗長リング)は現代にも通じる。

TDMA(時分割多元接続)の仕組みと用途│通信チャネルを時間で分ける方式

TDMA(Time Division Multiple Access)は、通信媒体を時間で区切って複数の端末が共有するアクセス制御方式です。1つの周波数帯や通信路をスロットと呼ばれる時間枠に分け、各端末に順番に割り当てます。

  • 同じ物理チャネルを時間的に分割して利用
  • スロット割り当ては事前に決定(固定)または動的に調整可能
  • 干渉が少なく、帯域の利用効率が高い
  • 主に無線通信衛星通信で利用

試験での狙い目ポイント:FDMA(周波数分割)やCDMA(符号分割)との違い、「時間を分ける=順番送信」という発想。イーサネットのCSMA/CDとは異なり衝突を前提としない。

TDMAの動作イメージ(文章):複数人で1台のマイクを使って発言するとき、「あなたは1分目、私は2分目」というように時間を決めて話すイメージ。お互いの声がかぶらないので、内容はクリアに伝わります。

実生活の例:旧2G携帯電話(GSM方式)や、一部の衛星電話、デジタル無線機はTDMAを利用。現代でも航空機通信や特殊分野で活躍。

ATM(非同期転送モード)の特徴とセル構造│固定長セルで高速転送する通信方式

ATM(Asynchronous Transfer Mode)は、1980年代後半に登場した固定長セルを使う高速通信方式です。音声、データ、動画など異なる種類の情報を同一ネットワークで効率よく転送でき、かつては広域網(WAN)や通信事業者ネットワークの基盤として使われました。

  • 固定長セル:1セル=53バイト(ヘッダ5B+データ48B)
  • セル単位転送によりハードウェア処理が高速
  • リアルタイム性が求められる通信に適する
  • QoS(Quality of Service)を考慮した帯域制御が可能
フィールド サイズ 内容
ヘッダ 5バイト 経路識別、誤り検出、制御情報
ペイロード 48バイト 実際のデータ

試験での狙い目:「53バイト固定長」の数値、イーサネットの可変長フレームとの比較、高速・低遅延だがオーバーヘッドが大きいという点。

実生活の例:1990年代後半〜2000年代初期、日本のADSLや光回線のバックボーンにATMが利用されていた。現在はIPやイーサネットに置き換えられたが、試験では依然重要。

まとめ│試験と実務に役立つイーサネット知識の整理

本記事では、イーサネットを中心としたLAN技術とその周辺規格について、基礎から歴史的背景まで幅広く解説しました。最後に、試験と実務で押さえておくべきポイントを整理します。

  • イーサネットの進化:10Mbps → 100Mbps → 1Gbps → 10Gbps…と速度向上しつつ後方互換性を維持
  • フレーム構成:プレアンブル〜FCSまでの各フィールドの役割を理解
  • PoE:LANケーブルで電源供給、IEEE 802.3af/at/btの給電能力を暗記
  • CSMA/CD:半二重通信で衝突検出→再送、現在はほぼ歴史的知識
  • ギガビットイーサネット:規格名・媒体・ケーブル要件をセットで覚える
  • FDDI:光ファイバー100Mbps、トークンパッシング+デュアルリング構成
  • TDMA:時間分割によるアクセス制御、無線・衛星通信で活躍
  • ATM:53バイト固定長セル、QoS対応、高速・低遅延

イーサネット関連の知識は、基本情報・応用情報の試験に限らず、ネットワークエンジニアとしての土台にもなります。仕組みを「なぜそうなっているのか」という視点で理解すると、試験問題への応用力だけでなく、実務でのトラブル対応力も確実に高まります。

暗記だけで終わらせず、図解や具体例とセットで覚えておくことが、得点アップと知識定着のカギです。

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