インターネットや社内ネットワークで、ファイルをやり取りするときに昔から使われてきたのがFTP(File Transfer Protocol)です。
しかし、試験や実務で登場するFTPは、ただの「ファイル送受信の仕組み」では終わりません。
コマンド操作、アクティブ/パッシブモード、ファイアウォールの影響、TFTPやAnonymous FTPとの違い…
このあたりで混乱してしまう方は多いでしょう。
特に、「なぜアクティブだとファイアウォールに引っかかるのか?」 や 「TFTPはFTPの簡易版なのか?」 という疑問は、午後試験やネットワーク系の問題で頻出します。
本記事では、図解や具体例を交えながら、FTPの基本から応用まで体系的に整理します。
読むころには、「あ、そういうことだったのか!」とすっきり理解できるはずです。
目次
FTPの基本と主要コマンド一覧│試験対策と実務で覚えるポイント
FTP(File Transfer Protocol)は、TCP/IPネットワーク上でファイルを送受信するためのプロトコルです。
標準では制御用ポート21番を使ってコマンドや認証を行い、データ転送用に別ポートを確立します。
この「制御」と「データ転送」の分離が、後で解説するアクティブ/パッシブモードの違いにつながります。
主な特徴
- 接続形態:クライアント‐サーバ型
- プロトコル:TCP
- 認証:ユーザー名とパスワード、またはAnonymous FTP(匿名アクセス)
- 転送モード:ASCIIモード/バイナリモード(テキストかバイナリかで使い分け)
代表的なFTPコマンド
コマンド | 説明 | 使用例 |
---|---|---|
open | FTPサーバに接続 | open ftp.example.com |
user | ユーザー名を指定 | user testuser |
pass | パスワードを入力 | pass ******** |
ls / dir | サーバ上のファイル一覧を表示 | ls |
cd | ディレクトリ移動 | cd /public |
get | ファイルをダウンロード | get report.pdf |
put | ファイルをアップロード | put data.csv |
mget | 複数ファイルを一括ダウンロード | mget *.txt |
mput | 複数ファイルを一括アップロード | mput *.jpg |
bye / quit | 接続終了 | bye |
💡身近な例え
FTPを郵便のやり取りにたとえると、
制御用ポート21:住所や送り主、受取人をやり取りする「手紙の宛先情報」
データ用ポート:実際の荷物が通る「宅配便トラック」
という二段構えの配送ルートを使っているイメージです。
FTPのアクティブモードとパッシブモードの違い│通信フローとファイアウォール対策
FTPは制御用ポート21番で接続を確立しますが、実際のファイル転送には別の「データコネクション」を確立します。
このデータコネクションの開き方によって、アクティブモード と パッシブモード の2種類があります。
アクティブモード(Active Mode)
- クライアントがFTPサーバに制御接続(TCP 21番)を確立
- クライアントが
PORT
コマンドで「自分の待ち受けポート番号」をサーバに通知 - サーバがそのポートへ接続し、データ転送を開始
特徴
サーバがクライアントに向けて接続してくるため、クライアント側がNATやファイアウォールで外部からの接続を拒否していると失敗しやすい。
パッシブモード(Passive Mode)
- クライアントがFTPサーバに制御接続(TCP 21番)を確立
- クライアントが
PASV
コマンドを送信 - サーバが「自分の待ち受けポート番号」をクライアントに通知
- クライアントがそのポートへ接続し、データ転送を開始
特徴
クライアントからの接続のみで成立するため、ファイアウォールやNAT越えがしやすい。
Webブラウザなどはほぼパッシブモードを使用。
接続イメージ(テキスト図)
[Active Mode] Client ---21---> Server (Control) Server ---20---> Client (Data) [Passive Mode] Client ---21---> Server (Control) Client -------> Server (Data)
💡身近な例え
アクティブモード:あなた(クライアント)が「家の住所と玄関の鍵」を教えて、サーバ(配達員)が荷物を持って家に来る方式
パッシブモード:あなたがサーバ(倉庫)まで取りに行く方式
FTP通信とファイアウォールの関係│アクティブモードが遮断されやすい理由
FTPは「制御用ポート21番」と「データ転送用の別ポート」を組み合わせて動作します。
この仕組みが、ファイアウォールやNAT越えを難しくしている最大の理由です。
ファイアウォールの基本動作
ファイアウォールは、外部からの不正アクセスや不要な通信を遮断します。
一般的には「外部から内部への接続要求」は、あらかじめ許可されていない限りブロックされます。
アクティブモードが引っかかる理由
- アクティブモードでは、サーバがクライアント側の指定ポートへ接続してくる。
- クライアント側のファイアウォールやNATは、この「外部からの接続要求」を拒否する設定になっていることが多い。
- 結果として、制御接続は成功しても、データ転送が始まらない。
💡例え
アクティブモードは「宅配便があなたの家に突然来る」イメージ。
家の門(ファイアウォール)が閉まっていると、配達員(サーバ)は入れない。
パッシブモードで回避
パッシブモードでは、クライアントからサーバへ接続するため、ファイアウォールの「外向き通信OK」のルールに従って通信できる。
そのため、現在のWebブラウザや多くのFTPクライアントはデフォルトでパッシブモードを採用している。
ファイアウォールとモード別通信(図解イメージ)
[Active Mode] FW: 外部→内部接続は拒否 → NG [Passive Mode] FW: 内部→外部接続は許可 → OK
TFTPの特徴とFTPとの違い│試験で押さえるポイントと利用例
TFTP(Trivial File Transfer Protocol)は、その名の通り「簡易的なファイル転送プロトコル」です。
FTPと比べて機能は大幅に制限されていますが、そのぶん軽量でシンプルな仕組みになっています。
TFTPの主な特徴
- ポート番号:UDP 69番を使用(FTPはTCP 21番)
- 認証なし:ユーザー名やパスワードを使わず、誰でもアクセス可能(セキュリティは低い)
- コマンドなし:FTPのような複雑なコマンドはなく、ファイルの読み書きのみ
- 転送モード:バイナリ/ASCIIを区別せず転送
FTPとの違い(比較表)
項目 | FTP | TFTP |
---|---|---|
使用プロトコル | TCP | UDP |
ポート番号 | 21(制御)、20(データ) | 69 |
認証 | ユーザー名・パスワード | なし |
コマンド | 多機能(ls, get, put など) | ファイル送受信のみ |
セキュリティ | 高(ただし暗号化なし) | 低(アクセス制御ほぼなし) |
利用例 | サーバ間のファイル転送、Web更新、ユーザーファイル交換 | ルータ・スイッチの設定ファイル転送、OSブートイメージ配布 |
💡身近な例え
FTP:宅配便サービス。送り状を記入し、受取確認や送り先指定など多機能。
TFTP:ポスト投函の回覧板。誰でも入れられるが、セキュリティや記録はない。
試験で問われやすいポイント
- UDPを使うため、信頼性確保はアプリ側に依存
- 認証なし=安全性が低い → 閉じたネットワーク内で利用
- ルータやネットワーク機器の初期設定やファームウェア更新でよく使われる
Anonymous FTPの仕組みと利用時のセキュリティ注意点
Anonymous FTP(アノニマスFTP)は、ユーザー名やパスワードによる制限をかけずに、誰でもアクセスできるようにしたFTP接続方式です。
多くの場合、インターネット上で公開されているファイル(ソフトウェア、ドキュメント、画像など)の配布に使われます。
基本的な使い方
- ユーザー名:
anonymous
を指定 - パスワード:メールアドレス(任意、形だけの場合も多い)
- 認証をほぼ行わないため、接続は誰でも可能
Anonymous FTPのメリット
- アカウント発行の手間なく、広くファイルを配布できる
- 不特定多数にダウンロードを許可する際に便利
セキュリティ上の注意点
- 書き込み権限を許可すると、誰でもファイルをアップロードできるため、ウイルスや違法ファイルの温床になる危険がある
- 読み取り専用(ダウンロードのみ)に設定するのが基本
- アクセスログの監視が必須
通常のFTPとの比較
項目 | 通常のFTP | Anonymous FTP |
---|---|---|
認証 | ユーザー名+パスワード | anonymous +任意パスワード |
利用者 | 登録ユーザーのみ | 誰でも |
セキュリティ | 高め(ただし暗号化なし) | 低い(公開用途限定) |
主な用途 | 社内ファイル共有、認証が必要な更新作業 | 公開ソフト配布、マニュアル公開 |
💡身近な例え
通常のFTP:会員制図書館。会員カード(アカウント)を持つ人だけが入れる。
Anonymous FTP:街中のフリーブックコーナー。誰でも本を持ち帰れるが、管理が甘いとゴミが置かれる危険もある。
まとめ│FTPの全体像を理解して試験対策に活かす
FTPは制御接続とデータ接続を使い分ける独特の構造を持ち、アクティブ/パッシブモードやファイアウォールとの関係を理解することが試験でも実務でも重要です。
TFTPやAnonymous FTPのような派生的なプロトコルも、それぞれの特徴や利用シーンを押さえておくことで混乱を防げます。
図解や具体例とあわせて学習すれば、「なぜそうなるのか」をイメージしながら覚えられるため、午後試験の得点アップにつながります。