IPA|情報処理技術者試験

【初心者向け図解】MACアドレス、IPアドレス、ポート番号の違いを世界一わかりやすく解説!

ネットワークの学習を進める中で、「MACアドレス」「IPアドレス」「ポート番号」という3つの重要なアドレス情報が登場します。これらは、データが正確に目的地へ届くために不可欠な要素ですが、「結局、どれが何の役割で、どう違うの?」と混乱してしまう方も少なくありません。特に、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の午後問題では、この3つの関係性を正確に理解しているかが問われるため、知識の整理は必須です。

この記事では、そんな複雑に見えるMACアドレス、IPアドレス、ポート番号の役割と違いを徹底的に解き明かします。「インターネットでWebサイトを閲覧する」という身近な例を使いながら、データが送信されてから相手に届くまでの流れをステップバイステップで解説。「それぞれの住所情報が、いつ、どこで、何のために使われるのか」を、図解や比較表を交えて明らかにしていきます。

この記事を読み終える頃には、3つのアドレスの違いがスッキリ整理され、「なぜこの仕組みが必要なのか?」という根本的な理由まで理解できているはずです。ネットワークの基礎を固め、資格試験の得点力アップに繋げましょう。


【ネットワークの基礎】MACアドレスの役割と仕組み|なぜ「物理アドレス」と呼ばれる?

最初に、3つの住所情報の中で最も物理的なハードウェアに近い「MACアドレス (Media Access Control Address)」から見ていきましょう。一言でいうと、MACアドレスは「ネットワーク機器1台1台に割り当てられた、世界で絶対に重複しない固有の番号」です。

身近な例:機器の「製造番号」や個人の「マイナンバー」

イメージしにくい場合は、家電製品の「製造番号(シリアルナンバー)」や、私たち一人ひとりが持つ「マイナンバー」を想像してみてください。これらは製造された時点や生まれた時点で割り振られ、基本的には変更されません。MACアドレスもこれと同じで、パソコンやスマートフォン、Wi-Fiルーターなどのネットワーク機器が工場で製造される段階で、機器内部のネットワークカード(NIC)に焼き付けられます。

この「物理的なハードウェアに直接紐づいている」という性質から、MACアドレスは「物理アドレス」とも呼ばれるのです。IPアドレスが後から変更可能な「論理アドレス」と呼ばれるのと対照的です。

MACアドレスの主な役割と使われる範囲

MACアドレスの最も重要な役割は、「同一ネットワーク内(すぐご近所さん)での通信相手を正確に識別すること」です。

例えば、あなたの家のWi-Fiルーターに、あなたのスマートフォンと家族のパソコンが接続されているとします。このWi-Fiで繋がった範囲が「同一ネットワーク」です。あなたがスマホで何かを検索しようとすると、データはまずWi-Fiルーターに送られます。その際、ルーターは「どの機器(スマホ?パソコン?)からデータが来たのか」「応答をどの機器に返せばいいのか」を判断する必要があります。この、すぐ隣にいる相手を正確に見分けるために使われるのがMACアドレスなのです。

MACアドレスの仕組みと特徴

MACアドレスは、通常コロン(:)やハイフン(-)で区切られた12桁の16進数で表現されます(例: 00:1A:2B:3C:4D:5E)。この48ビットの番号は、以下のように構成されています。

  • 前半24ビット (OUI): どのメーカー(ベンダー)が作った機器かを示すために割り当てられた識別子。
  • 後半24ビット (固有番号): 各メーカーが自社製品に割り当てる、重複しない番号。

この仕組みにより、世界中のどのネットワーク機器とも重複しない、一意のMACアドレスが保証されています。

しかし、MACアドレスの役割はあくまで「同じ建物内にいる人(同一ネットワーク内の機器)を探す」ことまでです。遠く離れた、例えばアメリカにあるWebサーバーにデータを届けるには、MACアドレスだけでは力不足です。この限界を解決し、世界中の相手との通信を可能にするのが、次に解説する「IPアドレス」の役割となります。


IPアドレスの役割と種類|MACアドレスとの違いを「住所」の例で攻略【応用情報対策】

MACアドレスが「すぐ隣の機器」を特定する役割だと分かりました。しかし、インターネットの世界では、地球の裏側にあるサーバーとも通信します。このネットワークを越えた通信を実現するのが「IPアドレス (Internet Protocol Address)」です。

身近な例:インターネット上の「住所」

IPアドレスの役割は、一言でいえばインターネット上の「住所」です。手紙を送る際に、届け先の「〇〇県△△市...」という住所が必要なように、データが最終的にどのコンピュータに届けられるべきかを指定するのがIPアドレスの役割です。この「最終的な目的地を指し示す」という性質から、「論理アドレス」とも呼ばれます。

MACアドレスとの決定的な違い

ここで一度、MACアドレスとの違いを整理しましょう。通信は、この2つのアドレスのリレーによって成り立っています。

  • IPアドレス: 通信における最終的な目的地(大きな住所)を指し示す。
  • MACアドレス: 最終目的地に向かう途中、次にデータを渡すべき"隣"の機器(目の前の相手)を指し示す。

例:東京から大阪へ荷物を送る場合

  1. 最終目的地(IPアドレス): 「大阪府大阪市北区〇〇」と書かれた伝票を荷物に貼ります。これが通信のゴールです。
  2. 次の中継地点(MACアドレス): まず、荷物を「近所の配送センター」に渡します。このとき、配達員は「配送センター」という"隣"の相手の場所(MACアドレス)だけを見ています。
  3. リレー: 配送センターは荷物の伝票(IPアドレス)を見て、次は「大阪方面へ向かうトラック」に荷物を渡します。この繰り返しで、MACアドレスを使ったバケツリレーが行われ、最終的な大阪の住所(IPアドレス)に荷物が届くのです。

超重要:IPアドレスは2種類ある

IPアドレスを理解する上で最も重要なのが、「グローバルIPアドレス」と「プライベートIPアドレス」という2つの種類を区別することです。これは資格試験でも頻出のポイントです。

1. グローバルIPアドレス

  • 役割: インターネット上で世界に一つだけの、重複が許されないアドレス。
  • 例えるなら: 「東京都千代田区千代田1-1」のような、公的な本物の住所。
  • 使われ方: Webサーバーなど、世界中からアクセスされる必要がある機器が持ちます。私たちが契約しているプロバイダから割り当てられます。

2. プライベートIPアドレス

  • 役割: 家庭や会社など、閉じられたネットワーク(LAN)内でのみ通用するアドレス。
  • 例えるなら: 「A社の3階、営業部」や「あなたの家のリビング」といった内部的な場所を示すもの。
  • 使われ方: 192.168.1.10 のように決まった範囲の番号が使われます。他の会社や家庭で同じ番号が使われていても問題ありません。

【疑問】なぜプライベートIPアドレスからインターネットに繋がるのか?

「自分のPCはプライベートIPアドレスなのに、なぜWebサイトが見れるの?」と疑問に思うかもしれません。その秘密は、ルーターが「住所変換」を行っているからです。

この技術は「NAPT(IPマスカレード)」と呼ばれます。ルーターは、1つのグローバルIPアドレスをプロバイダから借りてきて、家の"代表"として振る舞います。家の中のPC(プライベートIP)がインターネットに接続する際は、ルーターがその通信を、自分のグローバルIPアドレスからの通信に見せかけてくれるのです。これにより、限られたグローバルIPアドレスを複数の機器で効率よく共有できます。

さて、IPアドレスのおかげで、世界中の目的のコンピュータまでデータを届けられるようになりました。しかし、データを受け取ったコンピュータは、そのデータを「どのアプリ(Webブラウザ? メールソフト? ゲーム?)」に渡せば良いのでしょうか?この最後の宛先指定を行うのが、次に解説する「ポート番号」です。


最後の宛先「ポート番号」の役割|IPアドレスとの連携とWell-Known Ports【基本情報対策】

MACアドレスで「隣の機器」を、IPアドレスで「目的のコンピュータ」を特定できました。いよいよ最後の住所情報、「ポート番号」の登場です。ポート番号の役割は、ずばり「コンピュータに届いたデータを、どのアプリケーションに渡すか」を識別することです。

身近な例:マンションの「部屋番号」

IPアドレスを「〇〇マンション」という建物の住所だとすると、ポート番号はその中にある「101号室」や「205号室」といった部屋番号に相当します。

私たちのパソコンやスマートフォンでは、Webブラウザ、メールソフト、LINE、オンラインゲームなど、複数のアプリケーションが同時にインターネット通信を行っています。IPアドレスだけでは、データは「〇〇マンション」という建物までしか届けられません。そのデータをWebブラウザ(101号室)に届けるのか、メールソフト(205号室)に届けるのか、その最後の仕分けを行うのがポート番号なのです。

ポート番号の仕組みと3つの区分

ポート番号は、0番から65535番までの数字で表され、通信のルールを定めたTCPやUDPというプロトコルで使われます。この番号は、役割に応じて3つの範囲に分けられており、この区分は資格試験でも非常に重要です。

1. ウェルノウンポート番号 (Well-known Ports: 0~1023番)

これは、世界中のサーバーで共通して使われる、予約済みのポート番号です。代表的なサービスには、あらかじめ以下のような番号が割り当てられています。

  • 80番: Webサイトの閲覧 (HTTP)
  • 443番: 暗号化されたWebサイトの閲覧 (HTTPS)
  • 25番: メールの送信 (SMTP)
  • 53番: IPアドレスとドメイン名の変換 (DNS)

例えるなら、「お店の代表電話番号」のようなものです。私たちはGoogleのWebサーバーのIPアドレスさえ知っていれば、「80番ポート」にアクセスすることで、Webページをリクエストできると分かっているのです。

2. 登録済みポート番号 (Registered Ports: 1024~49151番)

特定のアプリケーションベンダーなどが、自社製品のために登録して使用するポート番号です。ウェルノウンポートほど一般的ではありませんが、広く知られたアプリケーションで利用されます。

3. ダイナミック/プライベートポート番号 (Dynamic/Private Ports: 49152~65535番)

こちらは、主に通信をリクエストする側(クライアント側)が一時的に使用するポート番号です。皆さんがWebサイトを閲覧する際、お使いのPCのブラウザには、この範囲から空いている番号がランダムに割り当てられます。サーバーからの返信データは、この一時的なポート番号を目印に戻ってきます。銀行の「受付番号札」のように、用事が終われば返却されるイメージです。

これで、MACアドレス、IPアドレス、ポート番号という3つの住所情報の役割がすべて明らかになりました。次章では、これまでの話を総まとめし、データが送信されてから届くまでの全体の流れを追いかけながら、3つの違いを表で完全に整理します。


【総まとめ】3つのアドレスの違いを一覧表で比較|通信の全体像を理解する

これまで、MACアドレス、IPアドレス、ポート番号の3つが、それぞれ異なる階層で重要な役割を担っていることを見てきました。この章では、あなたが「Webサイトを閲覧する」という日常的な操作の裏側で、これら3つのアドレスがどのように連携しているのか、その全体像を追いかけてみましょう。

通信の全体像:データがWebサーバーに届くまで

あなたがブラウザのアドレスバーにURLを入力してEnterキーを押した瞬間、データは以下のようなステップで送信先のサーバーへと旅立ちます。

  1. アプリケーションの準備(あなた→PC)
    目的:どのアプリ(ブラウザ)が、どのサービス(Webサイト閲覧)と通信したいか決定する。
    使われる情報ポート番号
    ブラウザは「Webサイトが見たい(HTTPS)」とOSに伝えます。OSは宛先としてサーバーのポート番号「443番」を設定し、自分(ブラウザ)の返信用に一時的なポート番号(例:50001番)を確保します。

  2. 最終目的地の決定(PC→インターネット)
    目的:世界中のどこにあるコンピュータに届けるか決定する。
    使われる情報IPアドレス
    OSはDNSサーバーに問い合わせて、WebサイトのサーバーのグローバルIPアドレスを調べます。そして、送信元に自分のPCのプライベートIPアドレス、宛先にサーバーのグローバルIPアドレスを設定した「IPパケット」を作成します。

  3. 隣の機器への転送(PC→ルーター)
    目的:最終目的地に向かうため、まず最初のバケツリレー相手は誰か決定する。
    使われる情報MACアドレス
    IPパケットを次に渡すべき相手は、家のルーターです。PCは、送信元に自分のMACアドレス、宛先にルーターのMACアドレスを設定した「イーサネットフレーム」を作成し、データを送信します。

  4. ルーターでの中継と旅の続き
    データを受け取ったルーターは、MACアドレスの情報を取り外し、IPアドレスを確認します。宛先が外部のインターネットだと判断すると、送信元のプライベートIPアドレスを、ルーター自身が持つグローバルIPアドレスに書き換え(NAPT)てから、次のルーターへと転送します。この「MACアドレスで隣に渡し、IPアドレスで次の経路を判断する」というリレーが繰り返され、データは最終的に目的のWebサーバーに到着します。

3つのアドレスの役割比較一覧表

これまでの内容を、資格試験対策にも役立つ比較表にまとめました。この表で違いを明確に覚えましょう。

比較項目 MACアドレス IPアドレス ポート番号
主な役割 隣接する機器の識別 最終的な通信相手の識別 どのアプリかを識別
身近な例え 機器の製造番号、マイナンバー インターネット上の住所 マンションの部屋番号
担当する階層 データリンク層 (第2層) ネットワーク層 (第3層) トランスポート層 (第4層)
使われる範囲 同一ネットワーク内(LAN) ネットワーク全体(WAN) コンピュータの内部
アドレスの形式 48ビット(16進数12桁) 32ビット (IPv4) など 16ビット (0~65535)
変更できるか 原則不可 (物理アドレス) 可能 (論理アドレス) 通信のたびに変わる

この記事を通して、一見複雑に見えるネットワーク通信が、3つの異なる住所情報を階層的に使い分けることで、非常に合理的に成り立っていることをご理解いただけたかと思います。この基本原則をマスターすれば、より高度なネットワークの学習や、資格試験の午後問題にも必ず役立つはずです。

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