私たちの身の回りには、安全で快適な通信を実現するために、目には見えない様々な「関所」が存在します。
例えば、社内ネットワークでは、部署ごとにアクセスできる範囲を制限する『VLAN』という関所。
自宅やカフェから会社のサーバーに安全に接続するための『VPN』という秘密のトンネル(関所)。
そして、社内からインターネットという広大な世界へ旅立つ前に、不審なサイトへのアクセスをブロックしてくれる『プロキシサーバー』という頼れる門番(関所)。
これらの技術は、応用情報技術者試験のネットワーク分野、そして情報処理安全確保支援士試験など、多くのIT試験でその理解度が問われる必須知識です。
しかし、それぞれの役割や仕組みが微妙に異なるため、
「結局、これらの技術は何がどう違うの?」
「パケットの送信元・送信先アドレスは、どこでどう書き換わるの?」
と、頭の中に「?」が浮かんでしまうことも少なくありません。
ご安心ください。この冒険(記事)は、そんなあなたのためのガイドブックです。
この先を読み進めれば、まるでパケットになった気分で、それぞれの関所がどのように機能しているのかを体験できます。そして、読み終える頃には、3つの技術の違いを自信を持って語れるようになっているでしょう。
さあ、知識の地図を片手に、ネットワークの関所を巡る冒険に出発しましょう!
目次
VLAN VPN プロキシサーバー3つの技術を一言でいうと?
詳細な解説に入る前に、まずは3つの技術の役割を、脳に刻み込まれるようなシンプルな言葉で整理してしまいましょう。このイメージを頭に入れておくだけで、今後の学習効率が劇的に変わります。
VLANは、オフィスの「間取り変更」
物理的な配線はそのままに、スイッチの設定だけで「営業部の島」「開発部の島」といったように、ネットワークを論理的に分割する技術です。まるで、大きなワンフロアのオフィスに、後からパーテーションを立てて部屋を分けるようなイメージですね。ブロードキャストの範囲を限定し、セキュリティと通信効率を高めるのが主な目的です。
VPNは、公道の「専用トンネル」
誰もが使えるインターネットという公道(パブリックネットワーク)の中に、特定の人しか通れない「暗号化された専用トンネル」を作る技術です。このトンネルを通ることで、通信内容を盗み見られたり、改ざんされたりする危険から守られます。安全な通信経路を確保するのが一番の目的です。
プロキシサーバーは、海外旅行の「頼れる添乗員」
内部ネットワークにいるPCの代わりに、インターネットとの通信を代行してくれるサーバーです。まるで、海外旅行で言葉の通じない場所へ行くときに、現地の文化や危険な場所を熟知した「添乗員」が代理でやり取りしてくれるようなもの。Webアクセスの制御や、通信内容のチェック、キャッシュによる高速化など、多岐にわたる目的で活躍します。
どうでしょう?「仕切り」「トンネル」「添乗員」。それぞれの役割が、少し具体的にイメージできたのではないでしょうか?
では次に、この3つの技術が実際のネットワークでどのように連携しているのか、全体像を図解で見ていきましょう。
3. 大図解:パケットの旅で見るVLAN・VPN・プロキシの連携
百聞は一見に如かず。ここでは、リモートワーク中のAさんが、自宅のPCから会社のプロキシサーバーを経由してインターネットのWebサイトを見る、という典型的なシナリオで「パケットの旅」を追いかけてみましょう。
【登場人物と舞台設定】
- 主人公: AさんのPC(自宅ネットワーク内 IP: 192.168.1.10)
- 最初の関所: 会社のVPNゲートウェイ(兼ファイアウォール)
- 社内ネットワーク:
- VLAN10(営業部フロア): 172.16.10.0/24
- VLAN20(開発部フロア): 172.16.20.0/24
- プロキシサーバー: 172.16.10.100 (VLAN10に所属)
- 目的地: とあるWebサイト(example.com)
【パケットの旅 スタート!】
- 旅の始まり(自宅 → VPN)
AさんがVPNクライアントソフトを起動して会社に接続!AさんのPCからWebサイト宛のパケット(送信元: 192.168.1.10)が、VPNによって「カプセル化」されます。これは、元のパケットを、会社のVPNゲートウェイ宛の新しいパケットに詰め込むイメージです。このカプセル化と暗号化により、インターネットという公道を安全に旅することができます。
[VPN]の活躍ポイントです。 - 最初の関所(VPNゲートウェイ)
会社のVPNゲートウェイに到着したパケットは、カプセルを解かれ、暗号も復号されます。ここで元のパケットが取り出され、社内ネットワークを旅する許可証として、新しいIPアドレス(例: 172.16.10.50)がAさんのPCに割り当てられます。 - 代理人への依頼(PC → プロキシサーバー)
AさんのPCのブラウザは「Webサイトへはプロキシサーバー経由で行くように」と設定されています。そのため、Webサイト宛の通信は、まず社内のプロキシサーバー(172.16.10.100)へ向かいます。
パケット情報:
送信元IP: 172.16.10.50 (AさんのPCの社内用IP)
宛先IP: 172.16.10.100 (プロキシサーバー) - フロア内の通信(VLAN)
Aさんに割り当てられたIP(172.16.10.50)とプロキシサーバーのIP(172.16.10.100)は、同じVLAN10に所属しています。そのため、この通信はVLAN10の中だけで行われ、他のVLAN(例えば開発部のVLAN20)には余計なトラフィックが流れません。もしAさんが開発部のサーバーにアクセスする場合は、L3スイッチがVLAN間のルーティングを行ってくれます。
[VLAN]の活躍ポイントです。 - 代理人の仕事(プロキシサーバー → インターネット)
依頼を受けたプロキシサーバーは、まず会社のルール(URLフィルタ)に違反していないかチェックします。問題なければ、Aさんの代わりに自分自身が送信元となって、目的のWebサイトへリクエストを送信します。ここが最大のポイント!
パケット情報:
送信元IP: (会社のグローバルIP)
宛先IP: (example.comのIP)[プロキシサーバー]の活躍ポイントです。 - 旅の終わり(帰路)
Webサイトからの応答は、まずプロキシサーバーに届きます。プロキシサーバーは、その内容をAさんのPC(172.16.10.50)に転送します。この通信もVPNトンネルを通って暗号化され、安全にAさんの自宅まで届けられます。
このように、3つの技術はそれぞれが異なる役割を持ちながら、見事に連携して私たちの安全で効率的な通信を支えているのです。
4. なぜ?がわかる深掘り解説 - 目的・レイヤ・アドレス変換で徹底比較
前のセクションで、3つの技術が連携するイメージを掴んでいただけたかと思います。ここではさらに一歩踏み込み、応用情報・高度試験で問われる技術的な違いを、以下の4つの観点から徹底的に比較・整理します。
4. なぜ?がわかる深掘り解説 - 目的・レイヤ・アドレス変換で徹底比較
前のセクションで、3つの技術が連携するイメージを掴んでいただけたかと思います。ここではさらに一歩踏み込み、応用情報・高度試験で問われる技術的な違いを、以下の4つの観点から徹底的に比較・整理します。
比較項目 | VLAN (仮想LAN) | VPN (仮想プライベート網) | プロキシサーバー |
---|---|---|---|
目的 | 物理的な接続に依存せず、ネットワークを論理的に分割する。 (部署単位でのグループ化、ブロードキャストドメインの分割による効率化・セキュリティ向上) |
公衆網(インターネット)上に、暗号化された安全な通信経路(トンネル)を構築する。 (拠点間接続、リモートアクセス) |
内部ネットワークのPCに代わって(Proxy)、インターネットと通信する。 (URLフィルタリング、ウイルスチェック、キャッシュによる高速化、匿名性の確保) |
動作レイヤ (OSI参照モデル) |
レイヤ2(データリンク層) MACアドレスを基に、イーサネットフレームを制御します。 |
レイヤ3(ネットワーク層)が主流 (IPsec-VPN) IPパケットをカプセル化して制御します。 ※他にもレイヤ2(L2TP)やレイヤ7(SSL-VPN)で動作するものもあります。 |
レイヤ7(アプリケーション層) HTTPやHTTPSといったアプリケーションの通信内容を解釈して代理応答します。 |
主な仕組み | L2スイッチが、イーサネットフレームにVLANタグ(VLAN ID)を付与・参照することで、所属VLANを識別し、フレームの転送先を制御します。(IEEE 802.1Q) | 通信したい元のIPパケット全体を暗号化し、さらに新しいIPヘッダを付与してカプセル化(トンネリング)します。 | クライアントからのリクエストを一度終端させ、内容を解釈した上で、プロキシサーバー自身が新たなリクエストを生成して宛先に送ります。 |
アドレス変換ルール | 原則、アドレス変換は行わない VLANは、パケット内の送信元・宛先IPアドレスや、フレーム内の送信元・宛先MACアドレスを書き換えません。あくまでVLANタグを使ってL2レベルでの転送範囲を限定するだけです。 ※VLAN間を通信させるL3スイッチは、ルーターとしてMACアドレスの書き換えを行いますが、それはVLAN自体の機能ではありません。 |
カプセル化によりアドレスが追加・変更される
元のIPパケット:変更されずにカプセル内部に保存されます。 外側のIPパケット:送信元は「VPNクライアントのWAN側IP」、宛先は「VPNゲートウェイのWAN側IP」となります。 つまり、通信経路上では、元のIPアドレスは隠蔽されます。 |
送信元IPアドレスを自身のものに変換する クライアントからのリクエストを代理で送信する際、パケットの送信元IPアドレスを、プロキシサーバー自身のIPアドレスに書き換えます。これにより、内部のクライアントPCのIPアドレスをインターネット側から完全に隠蔽できます。(一種のNAPT/IPマスカレードとして機能します) |
この表を見れば、3つの技術が全く異なるレイヤで、異なる目的のために、異なる仕組みで動いていることが一目瞭然ですね。特に「アドレス変換」の有無とその方法は、試験でも狙われやすい最重要ポイントです!
この表を見れば、3つの技術が全く異なるレイヤで、異なる目的のために、異なる仕組みで動いていることが一目瞭然ですね。特に「アドレス変換」の有無とその方法は、試験でも狙われやすい最重要ポイントです!
5. 厳選過去問と思考トレース
理論をインプットしたら、次はアウトプットの練習です。ここでは、応用情報技術者試験の典型的な問題を通して、学んだ知識をどうやって得点に結びつけるのか、その思考プロセスを追体験してみましょう。
【問1】VLANの導入目的
Q. ある企業が、ワンフロアに営業部と開発部のPCを設置している。物理的な配置や配線を変更することなく、両部門のネットワークを論理的に分離し、開発部から営業部の共有サーバへの安易なアクセスを防止したい。この目的を達成するために、最も適切な装置と技術の組合せはどれか。
ア. L2スイッチを導入し、VLANを設定する。
イ. ルーターを導入し、VPNを設定する。
ウ. プロキシサーバーを導入し、URLフィルタリングを設定する。
エ. リピータハブを導入し、MACアドレスフィルタリングを設定する。
【正解】ア
【思考トレース】
- 問題のキーワードを掴む: この問題の核は「物理的な配置を変えずに」「ネットワークを論理的に分離」という部分です。このキーワードから、VLANが最も関連性の高い技術だと瞬時に連想できるかが最初のポイントです。
- 選択肢を吟味する:
- ア:「VLAN」はまさに論理的なネットワーク分割技術。L2スイッチの主要機能です。これが正解の最有力候補だと判断します。
- イ:「VPN」はインターネット経由の安全な通信路を確保する技術。社内のネットワーク分割が目的なので、用途が異なります。
- ウ:「プロキシサーバー」はWebアクセスの代理や制御が目的。共有サーバへのアクセス制御も可能ですが、「ネットワーク自体の分離」という目的とは少しズレます。
- エ:「リピータハブ」はレイヤ1の装置で、そもそもネットワークの分割機能がありません。論外です。
- 結論を確定する: 以上の検討から、目的と手段が最も合致している「ア」が正解であると自信を持って結論付けられます。
【問2】VPNの核心技術
Q. インターネットVPNの説明として、適切なものはどれか。
ア. イーサネットフレームにVLAN IDを付与することで、仮想的なLANセグメントを構築する技術。
イ. 内部ネットワークからインターネットへのHTTPリクエストを中継し、送信元IPアドレスを変換する技術。
ウ. 公衆網を利用するが、IPパケットをカプセル化し、暗号化することで、あたかも専用線のような高いセキュリティの通信を実現する技術。
エ. ブロードキャスト通信の到達範囲を限定することで、ネットワーク全体のトラフィックを軽減する技術。
【正解】ウ
【思考トレース】
- 問題の主語を確認する: 問われているのは「インターネットVPN」の説明です。
- VPNの核心を思い出す: セクション4の比較表で学んだ「目的:安全な通信経路の確保」「仕組み:カプセル化と暗号化」を思い出します。
- 選択肢と照合する:
- ア:「VLAN ID」「仮想的なLANセグメント」はVLANの説明です。
- イ:「HTTPリクエストを中継」「送信元IPアドレスを変換」はプロキシサーバーの説明です。
- ウ:「公衆網」「カプセル化」「暗号化」というVPNの核心的なキーワードがすべて含まれています。これが正解でしょう。
- エ:「ブロードキャストの到達範囲を限定」はVLANの主な効果の一つです。
- 結論を確定する: VPNの定義と完全に一致する「ウ」が正解です。このように、各技術の核心的なキーワードを覚えておけば、消去法で簡単に正解にたどり着けます。
【問3】プロキシサーバーによるアドレス変換
Q. 社内のPC(IPアドレス: 192.168.1.10)が、プロキシサーバー(IPアドレス: 192.168.1.254)を経由して、インターネット上のWebサーバにアクセスする。このとき、Webサーバが受信するリクエストパケットの送信元IPアドレスはどれか。ここで、プロキシサーバーは、インターネットとの通信にグローバルIPアドレス(203.0.113.10)を使用するものとする。
ア. 192.168.1.10
イ. 192.168.1.254
ウ. 203.0.113.10
エ. アドレスは変換されない
【正解】ウ
【思考トレース】
- 問題の状況を把握する: 「プロキシサーバーを経由して」「Webサーバが受信するパケット」の「送信元IPアドレス」が問われています。
- プロキシのアドレス変換ルールを思い出す: セクション4の比較表で学んだ「送信元IPアドレスを自身のものに変換する」というルールを思い出します。プロキシは「代理人」として、自分が送信元になってインターネットへアクセスします。
- IPアドレスを特定する: プロキシサーバーがインターネットと通信する際に使用するIPアドレスは、問題文に「グローバルIPアドレス(203.0.113.10)を使用する」と明記されています。
- 結論を確定する: したがって、Webサーバが受信するパケットの送信元IPアドレスは、プロキシサーバーのグローバルIPアドレスである「203.0.113.10」になります。よって、「ウ」が正解です。この問題は、プロキシサーバーの本質的な役割(代理応答とアドレス変換)を理解しているかを試す良問です。
6. 未来を予測する出題予想 - ゼロトラスト時代の歩き方
VLAN、VPN、プロキシは、長年にわたりネットワークの基本を支えてきた技術ですが、クラウド化やリモートワークの普及に伴い、その役割も進化しています。ここでは、それらの進化形と、今後の試験で問われる可能性のある新しい知識を覗いてみましょう。
VLANの進化形:クラウドネットワークの「VPCとサブネット」
進化のポイント: 物理的なL2スイッチで行っていたVLANによるネットワーク分割の考え方は、AWSやAzureといったクラウドの世界では「VPC(Virtual Private Cloud)」と「サブネット」という形で引き継がれています。VPCが自社専用の仮想ネットワーク空間全体を指し、サブネットがVPC内をさらに細かく分割するVLANのような役割を果たします。
【出題予想】
クラウド環境におけるネットワーク設計に関する問題で、「パブリックサブネットとプライベートサブネットを使い分け、Webサーバーは前者、DBサーバーは後者に配置する」といった構成の意図を問う問題が出題される可能性があります。
VPNの進化形:「ゼロトラスト」を実現する「ZTNA」
進化のポイント: 従来のVPNは「一度接続すれば、社内ネットワークのどこへでも比較的自由にアクセスできる」という境界型防御の考え方でした。しかし、「社内=安全」とは限らないという「ゼロトラスト」の考え方が主流になりつつあります。その実現技術が「ZTNA(Zero Trust Network Access)」です。ZTNAは、VPNのようにネットワーク全体へのアクセスを許可するのではなく、ユーザーやデバイスを都度認証し、許可された特定のアプリケーションへのアクセスだけを許可します。
【出題予想】
VPNとZTNAを比較し、「ゼロトラストの原則に基づいたリモートアクセス方式はどれか」といった形で、新しいセキュリティモデルの理解度を問う問題が考えられます。
プロキシの進化形:クラウド時代の門番「SWG (Secure Web Gateway)」
進化のポイント: 従来のプロキシサーバーの機能を、クラウドサービスとして提供するのが「SWG(Secure Web Gateway)」です。単なるURLフィルタリングやキャッシュだけでなく、サンドボックス(不審なファイルを安全な環境で実行してみる機能)やDLP(情報漏洩対策)といった、より高度なセキュリティ機能を統合しています。これは、ネットワークとセキュリティの機能をクラウドに集約する「SASE(Secure Access Service Edge)」という大きな概念の構成要素の一つです。
【出題予想】
「SASEを構成する要素のうち、インターネットアクセスのセキュリティを担うものはどれか」という問いで、SWGを選ばせるような、新しいアーキテクチャに関する知識問題が出題される可能性が高まっています。
7. 知識を体系化する関連マップ
ここまでに登場した様々な技術や用語の関係性を、マインドマップ形式で整理してみましょう。それぞれの技術が孤立したものではなく、互いに関連し合っていることを理解するのが目的です。
- ネットワークセキュリティの要:VLAN・VPN・プロキシ
- VLAN (論理的な仕切り)
- 目的: ブロードキャストドメイン分割、セグメント化
- 関連装置: L2スイッチ、L3スイッチ (VLAN間ルーティング)
- 関連技術: IEEE 802.1Q (タグVLAN)、ポートベースVLAN
- VPN (安全なトンネル)
- 目的: リモートアクセス、拠点間接続
- 関連装置: VPNゲートウェイ、ファイアウォール
- 関連技術: IPsec、SSL/TLS、トンネリング、暗号化、カプセル化
- 発展形: ZTNA (ゼロトラストネットワークアクセス)
- プロキシサーバー (賢い代理人)
- 目的: アクセス制御、キャッシュ、匿名性確保
- 関連装置: プロキシサーバー自身が装置
- 関連技術: HTTP/HTTPS、URLフィルタリング、透過的プロキシ
- 発展形: SWG (セキュアウェブゲートウェイ)
- 連携する重要技術
- ファイアウォール: ネットワーク境界でのパケットフィルタリング。VPNゲートウェイ機能を兼ねることが多い。
- ルーター: 異なるネットワーク(VLAN間を含む)を接続し、パケットを中継する。
- NAT/NAPT: プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを相互変換する。プロキシも同様の機能を持つ。
- 認証サーバー (RADIUSなど): VPN接続時などにユーザー認証を行い、セキュリティを強化する。
- VLAN (論理的な仕切り)
このマップを頭に入れておけば、ある技術について問われた時に、関連する他の技術を芋づる式に思い出すことができ、より多角的な視点で問題を捉えられるようになります。
8. あなただけの学習ロードマップ
VLAN・VPN・プロキシサーバーの違いと連携をマスターしたあなたは、ネットワークの面白さ、そして奥深さを実感していることでしょう。その知識をさらに広げ、深めるための次のステップをいくつか提案します。あなたの興味が向かう先はどこですか?
Path 1:【基礎回帰】ネットワークの土台を盤石にする
もし今回の学習で「レイヤ2」「レイヤ3」といった言葉に少しでも不安を感じたなら、この道がおすすめです。全ての応用技術は、盤石な基礎知識の上に成り立っています。OSI参照モデルとTCP/IPの各層の役割を完璧に理解することで、今後の学習がさらにスムーズになります。
次の一歩:「TCPの3ウェイハンドシェイクとシーケンス番号の役割」について学んでみる。
Path 2:【セキュリティ探求】防御の壁をさらに厚くする
VPNやプロキシのセキュリティ機能に興味が湧いたなら、この道がぴったりです。現代のサイバー攻撃から組織を守るためには、多層的な防御の考え方が不可欠。ネットワークの境界を守る他のセキュリティ機器との違いを学ぶことで、より強固な知識体系を築けます。
次の一歩:「ファイアウォール、IDS/IPS、WAFの違い」を比較・整理してみる。
Path 3:【クラウド航海】新しい時代のネットワークを学ぶ
セクション6で触れた「VPC」や「SASE」といった未来のキーワードにワクワクしたなら、迷わずこの道へ。オンプレミスで培ったネットワークの知識は、クラウドの世界でも強力な武器になります。クラウド時代のネットワーク構築スキルを身につけ、市場価値の高いエンジニアを目指しましょう。
次の一歩:「AWSやAzureのVPCの基本構成と、サブネット、ルートテーブルの役割」について調べてみる。
9. 理解度チェック&チャレンジクイズ
さあ、冒険の総仕上げです!ここまでの知識をフル活用して、チャレンジクイズに挑戦してみましょう。あなたの理解度が試されます。
【Q1】 経理部と人事部のPCが同じフロアに混在している。セキュリティ要件のため、物理的な配線を変更せずに、経理部のPCが接続されたポート群と、人事部のPCが接続されたポート群との間の直接通信を遮断したい。この要件を実現するのに最も適した技術はどれか。
答えと解説を見る
答え:ウ. VLAN
解説:物理的な構成を変更せず、L2スイッチの設定によってネットワークを論理的に分割するのは、VLANの最も得意とするところです。ポートベースVLANを設定することで、異なるVLANに所属するポート間の通信を遮断できます。
【Q2】 あなたは出張先のホテルから、会社の機密情報が保存されている社内ファイルサーバーにアクセスする必要がある。ホテルのWi-Fiは暗号化されているか不明で、安全とは言えない。このとき、通信の盗聴や改ざんを防ぎ、安全にファイルサーバーにアクセスするために利用すべき技術はどれか。
答えと解説を見る
答え:ア. VPN
解説:インターネットなどの公衆網を経由して、安全な通信経路を確保するシナリオです。通信を暗号化し、トンネリングを行うVPNが最適解となります。まさにリモートアクセスの典型的な利用例ですね。
【Q3】 ある企業で、従業員による特定のSNSサイトへのアクセスを禁止し、かつ全てのWebアクセスログを記録して不正がないかを確認したいという要望が上がった。この要望を実現するために導入すべきものはどれか。
10. 最終チェックとまとめ
ネットワークの関所を巡る冒険、お疲れ様でした!VLAN、VPN、プロキシサーバー、それぞれの役割と違いは、もうあなたの言葉で説明できますね。最後に、この旅で得た最も重要な知識を再確認し、記憶に焼き付けてしまいましょう。
最重要ポイント総まとめ
- VLAN
- 一言でいうと: オフィスの「間取り変更」
- 動作レイヤ: レイヤ2(データリンク層)
- アドレス変換: なし
- VPN
- 一言でいうと: 公道の「専用トンネル」
- 動作レイヤ: レイヤ3(ネットワーク層)が主流
- アドレス変換: あり(カプセル化による隠蔽)
- プロキシサーバー
- 一言でいうと: 海外旅行の「頼れる添乗員」
- 動作レイヤ: レイヤ7(アプリケーション層)
- アドレス変換: あり(送信元IPを自身に変換)
この3つの技術は、応用情報技術者試験はもちろん、ネットワークスペシャリストや情報処理安全確保支援士といった高度試験でも、形を変えてその理解が問われ続けます。
しかし、今日ここで学んだ「目的」「レイヤ」「アドレス変換」という3つの軸で考える癖をつけておけば、どんな応用問題にも必ず対応できます。
あなたの試験合格と、さらなる飛躍を心から応援しています!