キャリアの身だしなみ術

服選びがしんどい男性へ|通勤服を『制服化』して毎朝をラクにする方法【しまむら・ユニクロ活用】

毎朝クローゼットの前で立ち尽くし、「着ていく服がない」「組み合わせを考えるのが面倒だ」と溜息をつく——。
こうした悩みは、ファッションへの関心が薄い層だけでなく、多忙なビジネスパーソンや合理性を好む男性の間で広く共有されています。

「服選び」は、単なる身だしなみの問題ではありません。天候、スケジュール、TPO、そしてトレンドなど、複数の要素を瞬時に処理しなければならない高度な知的作業です。特に近年は、オフィスカジュアルの浸透により「スーツ一択」という正解がなくなり、選択の自由度が上がった分だけ、毎朝の判断負荷が増大しています。

本稿では、服選びに疲弊してしまう構造的な原因を整理し、しまむらやユニクロなどを活用した「通勤服の制服化」による解決策を提示します。ファッションセンスに頼らず、仕組みで解決するアプローチは、仕事のパフォーマンス向上にも直結するはずです。

目次

服選びがしんどい男性が増えている“本当の理由”

「服を選ぶのが億劫だ」と感じるのは、単なる怠慢やセンスの欠如ではありません。現代社会特有の情報過多や、脳の処理能力(認知資源)の限界が深く関わっています。ここでは、なぜ多くの男性が毎朝の服選びにストレスを感じるのか、その背景にある心理的・脳科学的な要因を紐解きます。

認知負荷・選択肢過多・情報過多の3要因

現代の生活において、私たちは1日に数万回の決断をしていると言われています。その中でも、朝一番に行う「服選び」は、意外なほど脳に負荷をかける作業です。

心理学では「決断疲れ(Decision Fatigue)」と呼ばれる現象が知られています。些細な選択であっても、回数を重ねるごとに脳のウィルパワー(意志力)は消耗し、その後の重要な判断の質を低下させることが多くの研究で示唆されています。

さらに、「選択のパラドックス」も無視できません。選択肢が増えれば増えるほど、人は選ぶことに困難を感じ、選んだ結果に対する満足度が下がるという心理傾向です。
かつてのように「背広を着ていればOK」だった時代とは異なり、現在は「ビジネスカジュアル」「スマートカジュアル」といった曖昧な定義の中で、色、素材、サイズ感、上下の組み合わせを選ばなければなりません。この「自由という名の不自由」が、真面目なビジネスパーソンの認知リソースを朝から奪っているのです。

ADHD傾向の人が特に消耗しやすいポイント

服選びの困難さは、個人の特性によってさらに増幅されることがあります。特にADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある場合や、脳の実行機能(計画・優先順位付け・遂行)に弱さがある場合、服選びは極めてハードルの高いタスクとなります。

服を選ぶという行為は、実は以下のようなマルチタスクの連続です。

  • 今日の天気と気温を確認する
  • 予定(来客の有無など)を確認する
  • 洗濯済みの服の中から候補を探す
  • 色や柄の相性をシミュレーションする
  • 実際に着てみて、感覚(肌触りやサイズ感)を確認する

これらの工程を瞬時に並行処理する必要があるため、脳のワーキングメモリに大きな負荷がかかります。
また、感覚過敏の傾向がある場合、タグの感触や化学繊維の肌触りが気になり、着られる服が限定されることでさらに選択が難しくなるケースも散見されます。「服を選べない」のではなく、「服選びに必要な情報処理がオーバーフローしている状態」と言えるでしょう。

忙しい会社員の朝は“判断を減らすと楽になる”

多忙な会社員にとって、朝の時間は1分1秒が惜しい貴重なリソースです。しかし、多くの人が「なんとなく」その日の気分で服を選ぼうとし、時間を浪費しています。

ビジネスにおけるタスク管理と同様に、朝のルーティンにおいても「判断の回数を減らす」ことが、精神的な余裕を生み出す鍵となります。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグが毎日同じ服を着ていたのは有名な話ですが、これは彼らがファッションに無頓着だったからではなく、重要な意思決定のために脳のリソースを温存する合理的戦略でした。

一般的な会社員であっても、この「判断コストの削減」は有効です。朝の決断を一つ減らすだけで、スムーズに出勤でき、午前中の業務に対する集中力が高まる傾向にあります。服選びにおける「迷い」をゼロに近づけることは、生活の質(QOL)を向上させるための投資と言えます。

ファッションは“個性”ではなく“仕組み化”の時代へ

かつてファッションは個性を表現する手段と捉えられがちでしたが、ビジネスシーンにおいては「相手に不快感を与えないためのマナー」であり、自分自身にとっては「快適に過ごすための機能」へと意味合いが変化しています。

特に通勤服においては、「おしゃれに見えるか」よりも「清潔感があるか」「管理が楽か」「再現性が高いか」といった実用性が重視される傾向にあります。これを「個性」の問題として捉えると、「センスがないから無理だ」と諦めてしまいがちですが、「仕組み」の問題として捉え直せば、誰でも解決可能です。

服選びを「毎朝のアート制作」ではなく、「工場の生産ライン」のようにシステム化すること。これが、服選びの苦痛から解放されるための最短ルートです。次章からは、具体的な「制服化」のステップを解説します。

通勤服を“制服化”する具体的ステップ(完全テンプレ)

「制服化」とは、あらかじめ決めたルールに従って服を着ることで、毎朝の選択を自動化する手法です。アップルの創業者やオバマ元大統領も実践していたように、これは極めて合理的なライフハックです。ここでは、ファッション知識がゼロでもすぐに実践できる、再現性の高いテンプレートを提示します。

まず色を固定する(黒・紺・白・グレー)

服選びで最も失敗しやすく、かつ悩む時間が長いのが「色合わせ」です。これを解決する唯一のルールは、「ベースカラーをモノトーン+ネイビーに限定する」ことです。

具体的には、以下の4色のみでクローゼットを構成します。

  • 黒(ブラック):靴、ベルト、バッグ、ボトムス
  • 紺(ネイビー):ジャケット、ボトムス
  • 白(ホワイト):シャツ、インナー
  • 灰(グレー):ボトムス、カーディガン

これらの色は、どの組み合わせでも喧嘩しません。「ネイビーのパンツに白シャツ」「グレーのパンツに黒のニット」など、適当に手にとった上下を合わせても、清潔感のあるビジネススタイルが成立します。赤やベージュ、柄物といった「ノイズ」を徹底的に排除することで、脳の処理負荷を最小化できます。

アイテム数を決める:3トップス×2ボトムスの黄金比

「服が足りないのではないか」という不安から、多くの人が必要以上に枚数を抱え込んでいます。しかし、週5日の勤務であれば、最低限のローテーションは「トップス3枚・ボトムス2本」で十分に回ります。

  • トップス(シャツ・カットソー)3枚
    2日おきに洗濯するサイクルであれば、着用中1枚・洗濯中1枚・予備1枚で足ります。消耗を防ぐために5枚揃えるのも一手ですが、まずは3枚から始めて管理の手間を減らすことが推奨されます。
  • ボトムス(スラックス・チノパン)2本
    ボトムスは毎日洗う必要がないため、2本を交互に履くことで生地を休ませながら清潔感を保てます。色は「ネイビー」と「チャコールグレー」か「黒」の2色が鉄板です。

この「3×2」のセットを1つのユニットとして運用し、季節が変わればユニットごと入れ替える。これが最も管理コストの低い運用法です。

靴・バッグ・ベルトの“固定化”

小物類も迷いの種になりがちです。ここでは「色は黒、素材はレザー(合皮含む)」で統一するのが正解です。

  • :黒のプレーントゥかローファー。雨の日も使える合皮やゴアテックス素材が実用的です。同じものを2足用意し、交互に履くと長持ちします。
  • ベルト:靴に合わせて黒のシンプルなもの1本あれば十分です。
  • バッグ:黒のビジネスリュックかトートバッグ。ポケットの配置が決まっているものを選び、中身を入れ替えないようにします。

小物の色を黒で統一しておけば、服がネイビー系でもグレー系でも違和感なく馴染みます。「今日は茶色の靴だからベルトも変えなきゃ」という思考が発生する余地を消すことが重要です。

洗濯〜収納までルーティン化しやすい組み合わせ

制服化の真価は、着ている時だけでなく、メンテナンスの楽さにもあります。選ぶべきは「ノンアイロン」「ウォッシャブル(自宅洗い可)」「速乾」の機能を持つアイテムです。

クリーニング店に行く手間や、アイロンがけの時間は、多忙な社会人にとって大きな損失です。夜に洗濯して部屋干しし、翌朝そのまま着ていける化学繊維(ポリエステル混紡など)の素材を中心に選ぶことで、家事の負担も大幅に軽減されます。

しまむら・ユニクロ・GUを使った“負担ゼロの通勤セット”

コンセプトが決まれば、次は調達です。高価なブランド服は必要ありません。全国どこでも入手しやすく、機能性に優れた量販店を活用することで、経済的負担と「買いに行く手間」の両方を削減します。各ブランドの強みを活かした構成案を紹介します。

価格帯ごとに“どこで何を買うか”最適化

各社にはそれぞれ得意分野があります。これらを組み合わせることで、コスパ最強のセットが完成します。

  • ユニクロ(品質重視)
    長期間着用するメインアイテムに向いています。「感動パンツ」や「スーパーノンアイロンシャツ」は、ビジネスマンの制服として耐久性と機能性が証明されている名品です。
  • GU(トレンド・価格重視)
    シルエットが現代的で、価格がさらに手頃です。「ウォッシャブルテーパードパンツ」など、消耗品として割り切って使うボトムスや、インナー類の調達に適しています。
  • しまむら(実用性・穴場重視)
    「CLOSSHI(クロッシー)」シリーズなど、機能性インナーや靴下、ビジネスシャツが低価格で充実しています。特にビジネス用ソックスや肌着などの消耗品は、他社より安く揃えられるケースが多いです。

サイズ選びの迷いを減らす基準

試着が面倒だからといって適当なサイズを買うと、だらしなく見えたり着心地が悪かったりして、結局着なくなります。
サイズ選びの基準は「ジャストサイズ」一択です。

  • 肩幅:シャツやジャケットの縫い目が肩の骨の真上にくること。
  • 裾丈:ボトムスは靴の甲に軽く触れる「ハーフクッション」か、くるぶしが見えない程度の「ノークッション」。

一度自分の「マイサイズ(例:ユニクロのM、ウエスト76cm)」を確定させれば、以降は試着なしでオンライン購入やリピート買いが可能になります。初回だけは時間を投資してサイズを確認し、スマホにメモしておくことが推奨されます。

店舗で迷わず買える“買い物リスト化”

店舗で「何かいいものはないか」と探すのは時間の無駄です。スーパーの買い物と同じく、事前にリストアップしたもの以外は視界に入れないようにします。

【推奨買い物リスト例】

  1. ボトムス:ユニクロ「感動パンツ(ネイビー・ウールライク)」×1、GU「ウォッシャブルトラウザー(黒)」×1
  2. トップス:ユニクロ「スーパーノンアイロンシャツ(白・レギュラーカラー)」×2、同(サックスブルー)×1
  3. インナー:しまむら等でVネックのベージュかグレー(透けにくい色)×3
  4. 靴下:黒のロングホーズ(ふくらはぎ丈)×5足(すべて同じ製品で揃える)

靴下をすべて同じ製品に統一すると、「片方が見つからない」「左右を合わせる」という作業から永久に解放されます。

全部そろえても2万円台で通勤服が完成

上記のリストを定価ベースで概算すると、以下のようになります。

  • ボトムス2本:約7,000円
  • シャツ3枚:約9,000円
  • インナー・靴下類:約3,000円
  • 合計:約1.9万円〜2万円強

これにジャケットやカーディガンを1点加えても、3万円以下で「悩みゼロの通勤環境」が構築可能です。一度揃えてしまえば、あとは傷んだものを同じ品番で買い替えるだけ。この初期投資で得られる「毎朝の快適さ」と「時短効果」は、金額以上の価値があると言えるでしょう。

ADHD傾向の人が通勤服でストレスを減らすための具体テク

注意欠如・多動症(ADHD)の特性がある場合、または日々の疲れで脳の実行機能が低下している場合、服選びや管理における「見えないコスト」は健常時の何倍にも膨れ上がります。ここでは、意思の力に頼らず、環境をハックすることでストレスを回避する具体的なテクニックを紹介します。

忘れ物を減らす「玄関セット化」

「家を出る直前にハンカチが見当たらない」「ベルトをしていないことに駅で気づく」といったトラブルは、動線の設計ミスが原因です。これを防ぐ最強の方法は、着替えと準備を玄関周辺で完結させる「玄関セット化」です。

具体的には、玄関または玄関に最も近い場所に、以下のアイテムを集約した「通勤ステーション」を作ります。

  • 通勤カバン
  • 時計、財布、社員証、鍵(トレイにまとめる)
  • ハンカチ、ティッシュ
  • 明日着る予定の服一式(前夜に吊るしておく)
  • 靴下

寝室やクローゼットと玄関を往復する間に、注意が逸れて忘れ物が発生します。「出かけるための装備」を出口付近に一元化することで、動線が直線になり、忘れ物のリスクが物理的に遮断されます。

洋服を“選ばない”収納方法

「畳んでタンスにしまう」という行為は、中身が見えなくなるため、「持っている服を忘れる」原因になります。また、畳む作業自体が面倒で、洗濯の山ができてしまうこともストレスの一因です。

推奨されるのは「すべてハンガーにかける(吊るす収納)」です。
洗濯して干したハンガーのまま、取り込んでクローゼットにかけるだけ。これなら「畳む」工程がゼロになります。

さらに、クローゼット内での並べ方にルールを設けます。
「着た服を洗濯して戻す際は、必ず『右側』にかける」と決めます。すると、自然と久しぶりに着る服(または着ていない服)が『左側』に溜まっていきます。毎朝、右側にある服から順に選んでいけば、自動的にローテーションが完成し、選ぶ必要すらなくなります。

服の買い替えタイミングを自動化する

「まだ着られるかもしれない」という曖昧な判断基準は、決断疲れを招きます。消耗品の買い替えは、自分の感覚ではなく、カレンダーやイベントに紐づけて自動化するのが合理的です。

  • インナー・靴下:たとえば「1月(新年)と7月(ボーナス時期)」に全取り替えする。
  • シャツ:襟汚れやヨレをチェックする日を、Googleカレンダーで「3ヶ月ごとの1日」にリマインド設定する。

Amazonの「定期おトク便」などを活用し、白いビジネスソックスやインナーが定期的に届くように設定しておけば、「買いに行く」というタスクそのものを脳内から消去できます。

避けた方がいい素材・避けた方がいい色

感覚過敏の傾向がある場合、特定の素材が集中力を削ぐ要因になります。また、管理が難しい色はストレスの元です。

  • 避けるべき素材(チクチク・ゴワゴワ)
    安価なウール(羊毛)製品や、硬すぎるリネン(麻)。これらは肌触りが気になりやすく、デスクワークの妨げになることがあります。代わりに、滑らかな「レーヨン混紡」や、スポーツウェア由来の「高機能ポリエステル」を選ぶと快適性が安定します。
  • 避けるべき色(汚れ・汗染み)
    「ライトグレー」や「薄いブルー」の脇部分は汗染みが目立ちやすく、日中気になってしまうリスクがあります。また、真っ白なパンツは汚れを気にするコストが高いです。不安な場合は、「ネイビー」「黒」「チャコールグレー」といったダークトーンを主力に据えるのが安全策です。

疲れやすい会社員でも続けられる“ミニマルクローゼットの作り方”

クローゼットが服で溢れかえっている状態は、視覚的ノイズとなり、脳に無意識のストレスを与え続けます。必要最小限の服で暮らす「ミニマルクローゼット」は、単なる片付け術ではなく、メンタルヘルスの維持手法です。

捨てる基準:迷ったら写真で判断

服を捨てられない最大の理由は「鏡で見ると、まだいけそうな気がする」というバイアスがかかるためです。これを打破するには、客観的な視点が必要です。

その服を着た自分の姿を、スマホのカメラで全身撮影してください。鏡は脳内で補正がかかりやすいですが、写真は現実を冷酷に映し出します。写真を見て「なんだか野暮ったい」「疲れて見える」と感じたら、それが他者から見た真実です。その服は役割を終えています。

2シーズン着たら交換基準

ファストファッションをビジネスで活用する場合、「一生モノ」という概念は捨ててください。ユニクロやGUなどの機能性ウェアは、週1〜2回の着用頻度で洗濯を繰り返すと、およそ1〜2年(2〜4シーズン)で生地のハリが失われ、清潔感が損なわれます。

「破れていないから着る」のではなく、「常にパリッとした状態を保つために定期更新する」のがビジネスウェアの鉄則です。2シーズン(約1年)着倒したら、感謝して手放し、最新の同型モデルに買い換える。これにより、常にアップデートされた清潔な状態を維持できます。

新しい服を入れたら古い服を1つ手放す

クローゼットのリバウンドを防ぐ唯一の絶対ルールが「ワンイン・ワンアウト(1 in 1 out)」です。新しいシャツを1枚買ったら、必ず古いシャツを1枚手放します。

このルールを徹底すると、服の総量は決して増えません。また、「何かを手放してまで、この新しい服が本当に欲しいか?」と自問することになるため、衝動買いの抑止力としても機能します。買う前に捨てるものを決める、という順序を習慣化することで、クローゼットの代謝が良くなります。

服を減らすことで“心の余白”が増える理由

モノが少ないクローゼットを開けた時の爽快感は、想像以上に精神衛生に良い影響を与えます。
服と服の間に適度な隙間があり、すべての服が一軍で、どれをとっても正解という状態。これは、朝一番に「自分は生活をコントロールできている」という自己効力感を感じさせてくれます。

視覚的な情報量が減ることで、脳のワーキングメモリが解放され、その分を仕事の段取りや、将来のキャリアについて考えるためのエネルギーに回すことができます。服を減らすことは、単に部屋が広くなるだけでなく、心の余白(メンタルスペース)を広げる行為に他なりません。

通勤服の悩みを“仕組み化”でなくすと仕事も人生もラクになる

たかが服、されど服。毎朝の小さなストレスを取り除くことは、人生の質を大きく変えるポテンシャルを秘めています。最後に、通勤服を制服化することが、あなたのキャリアやメンタルヘルスにどのような好影響を与えるかを確認して締めくくります。

朝の決断回数を減らすと集中力が上がる

元米国大統領バラク・オバマ氏は、在任中に「なぜ毎日同じようなスーツを着るのか」と問われ、こう答えました。

「私は何を食べるか、何を着るかについて決断を下すつもりはない。他にもっと決断すべき重要なことがたくさんあるからだ」

これは、国家元首に限った話ではありません。私たちもまた、日々多くの業務上の判断を迫られています。朝の段階で「今日は何を着ようか」という迷いに脳のエネルギー(ウィルパワー)を使ってしまうと、午後一番の重要な会議や、夕方の複雑な資料作成の場面で、集中力が切れやすくなります。
服選びを自動化することは、あなたの脳のリソースを「消費」から「投資」へと切り替える戦略的な行動です。

職場で浮かない“無難”は最強の戦略

ビジネスシーンにおいて、ファッションで加点を狙う必要はありません。「おしゃれな人」と思われるよりも、「常に身なりが整っている人」「TPOをわきまえている人」と認識される方が、信頼残高は高まります。

本稿で紹介した「ネイビー・黒・グレー」を基調としたスタイルは、決して派手ではありませんが、誰からも不快に思われない「鉄壁の無難」です。この「マイナス点がつかない」という安心感こそが、対人関係における自信を下支えし、堂々とした振る舞いにつながります。

ファッションに悩まない人ほど成果を出しやすい理由

「神は細部に宿る」と言いますが、それは「どうでもいい細部」にこだわることではありません。成果を出す人は、こだわらなくていい部分を徹底的に省力化し、その分の情熱と時間を、自分が本当に大切にしたいこと(仕事のコア業務、家族との時間、自己研鑽)に注いでいます。

クローゼットを整理し、服選びのルールを決めること。それは、「自分にとって何が重要で、何が不要か」を選別するトレーニングでもあります。この思考法は、そのまま仕事の優先順位付けや、人生の選択にも応用できるはずです。

しまむらは“選択肢を絞るのに最適”

最後に、あえて「しまむら」のような身近な店舗をおすすめする理由を添えます。それは、高級ブランド店のように緊張する必要がなく、日常生活の延長線上で「適度なトレンド」と「実用性」が手に入るからです。

店側が膨大なトレンドの中から「今の売れ筋」をフィルターして陳列してくれているため、私たちはその中からサイズを選ぶだけで、時代遅れにならない格好が完成します。
おしゃれになるために頑張る必要はありません。賢く手を抜き、仕組みに頼ることで、あなたの毎朝はもっと軽やかで、自由なものになるはずです。

-キャリアの身だしなみ術