ADHDの転職と資格取得

WITH RECURSIVEで理解する再帰的SQLの基本と落とし穴│応用情報午後対策

SQLにはさまざまな構文がありますが、「再帰的SQL」は一歩進んだ理解が求められる領域です。特に応用情報技術者試験などの午後試験では、ツリー構造や階層構造のデータ操作に関連して、WITH RECURSIVE句を用いた問題がしばしば出題されます。

「そもそも再帰的SQLとは何か?」「WITH RECURSIVEで何ができるのか?」「使いどころと避けるべきケースは?」といった基本的な疑問に加え、「実際の試験で問われやすいポイント」「間違えやすい選択肢」などを明らかにしながら、学習者がつまずきやすい“再帰”というテーマを解きほぐしていきます。

本記事では、体系的な整理(Aスタイル)に加え、身近な例え(C)職場の構造(D)中学生でも分かる会話形式(E)などを用い、理解と実践力の両方を鍛えます。さらに図解・表・具体例も活用し、午後試験で差がつく“再帰的SQL”を完全攻略しましょう。

目次

再帰的SQLとは何か?│WITH RECURSIVE句の基本構造と考え方

「再帰的SQL」という言葉を聞くと、少し難しそうな印象を受けるかもしれませんが、本質的には「ある処理を繰り返して階層的なデータを取得する」仕組みです。

例えば、会社の組織構造を想像してみてください。ある社員の上司をたどると、その上にもさらに上司がいます。このように「階層」があるデータを扱うとき、従来のSQL(JOINやサブクエリ)では「何階層あるか」が事前に分かっていないと、すべての階層を取得できません。

たとえば3階層までならJOINを3回重ねればいいですが、5階層か10階層か分からない場合、事前に何回JOINすべきか分からず、SQLが書けません。ここで活躍するのがWITH RECURSIVE句です。

WITH RECURSIVEを使うと、初期状態から1階層ずつ再帰的に処理を繰り返し、自動的に全階層を走査できます。つまり「階層の深さが不明でも、すべての親子関係を辿れる」のが最大の強みなのです。

■ WITH RECURSIVE句とは?

WITH RECURSIVE 句は、自己参照(再帰)するようなクエリを記述するためのSQL構文です。以下の2つのパートで構成されます。

パート名 説明
アンカー部(初期値) 再帰のスタート地点となるデータ(例:最上位の社員)
再帰部 アンカーの結果を基に、さらに1階層ずつ下のデータを取得していく

これらを繰り返すことで、SQL自身がループを回すように動作し、階層データを1行ずつ下って取得していくことができます。

■ 基本構造(テンプレート)

WITH RECURSIVE 階層名(列1, 列2, ...) AS (
    -- アンカー部(初期状態)
    SELECT ...
    FROM ...
    WHERE 条件

    UNION ALL

    -- 再帰部(次の階層)
    SELECT ...
    FROM 元テーブル JOIN 階層名
    ON 結合条件
)
SELECT * FROM 階層名;

■ 身近な例え:家系図をたどる

家族の家系図を想像してください。あなたの祖父母を調べ、そこから親→自分→子→孫…と世代を下っていくのが再帰処理のイメージです。1回で全員を見るのではなく、「1ステップずつ下へ下へ」と降りていくのがポイントです。

WITH RECURSIVE句の実行手順と再帰SQLの流れを図で理解する

再帰的SQLがどのように処理を進めていくかは、図でイメージするととても分かりやすくなります。ここでは、WITH RECURSIVE句がどのように「初期状態」から「再帰ループ」を回し、「終了条件」に達するのかを、手順ごとに分けて見ていきましょう。

■ 再帰SQLの処理フロー

以下は、従業員の上司―部下関係を辿る例です。

ステップ1:アンカー部が実行され、最初の行(例:社長)が取得される  
 ↓  
ステップ2:再帰部が実行され、1階層下のデータ(社長の部下)が追加される  
 ↓  
ステップ3:さらにその部下の部下…と繰り返し処理が続く  
 ↓  
ステップ4:新しいデータが取得できなくなるまでループ(データが空で終了)  

■ 処理の順序(テーブルで確認)

フェーズ 実行内容 SQLにおける該当箇所
スタート アンカー部を実行 SELECT ... FROM ... WHERE ...
ループ1回目 アンカー結果とJOINして再帰部を実行 UNION ALL SELECT ... JOIN ...
ループ2回目以降 再帰部を繰り返し実行 同上
終了条件 新しい結果が返らなくなる 自動終了(SQLエンジン判断)

■ 試験で狙われやすいポイント

  • UNION ALL でつなぐ必要がある(UNIONだと重複排除され誤動作)
  • 「アンカー部が1回だけ実行される」点
  • 「終了条件」が暗黙的(= 返す行がなくなる)である点
  • 列の数・型が一致していないとエラーになる

階層の深さが不明なテーブルとは?再帰的SQLが必要になる典型構造

再帰的SQLが真価を発揮するのは、「階層の深さが事前に分からないテーブル」を扱うときです。では、そういった構造とは具体的にどんなものでしょうか?

■ 例:社員テーブル(自己参照)

CREATE TABLE employees (
    emp_id INT PRIMARY KEY,
    name VARCHAR(50),
    manager_id INT -- 上司のemp_id(NULLなら社長)
);
emp_id name manager_id
1 社長 NULL
2 部長A 1
3 課長A1 2
4 リーダーA1 3
5 メンバーA1 4

■ なぜJOINを使う発想になるのか?

このような「上司と部下が同じテーブルに入っている」構造では、自分の上司を知るには、同じテーブルの別の行と“結合”する必要があります。このように、同じテーブルを自分自身と結合する操作を「自己結合(自己JOIN)」と呼びます。

たとえば「各社員とその上司を1行で出したい」場合、以下のようにJOINします:

SELECT
  emp.name AS employee,
  mgr.name AS manager
FROM
  employees emp
LEFT JOIN employees mgr ON emp.manager_id = mgr.emp_id;

さらに「上司の上司」や「上司の上司の上司」まで表示したいときは、JOINを何度も重ねる必要があります:

SELECT
  e1.name AS 自分,
  e2.name AS 上司,
  e3.name AS 上司の上司
FROM
  employees e1
LEFT JOIN employees e2 ON e1.manager_id = e2.emp_id
LEFT JOIN employees e3 ON e2.manager_id = e3.emp_id;

■ なぜ従来のJOINでは限界があるのか?

上記のようなJOINは、あらかじめ「何階層必要か」が分かっていなければ使えません。5階層や10階層になるかもしれないのに、JOINを何回書けばいいか事前に分からない――これがJOINの限界です。

■ WITH RECURSIVEで自動走査!

WITH RECURSIVE hierarchy AS (
    SELECT emp_id, name, manager_id, 1 AS level
    FROM employees
    WHERE manager_id IS NULL

    UNION ALL

    SELECT e.emp_id, e.name, e.manager_id, h.level + 1
    FROM employees e
    JOIN hierarchy h ON e.manager_id = h.emp_id
)
SELECT * FROM hierarchy;

このようにWITH RECURSIVEを使えば、階層が尽きるまで自動で繰り返してくれます。

■ 出力結果のイメージ

上記のクエリを実行すると、以下のような「階層レベル付きの一覧」が得られます:

emp_id name manager_id level
1 社長 NULL 1
2 部長A 1 2
3 課長A1 2 3
4 リーダーA1 3 4
5 メンバーA1 4 5

階層の深さ(level列)があることで、「どの社員がどの階層にいるか」が一目で分かるのも、再帰SQLのメリットです。

■ こうした構造は試験でも頻出!

IPAの応用情報などでは、このような「自己参照の階層構造テーブル」が繰り返し登場します。正確に理解しておきましょう。

なぜ階層構造をSQLで取得するのか?再帰的SQLが求められる実務と試験の理由

そもそも「階層構造をSQLで取得する必要があるのか?」という素朴な疑問は非常に重要です。実務でも試験でも、この能力が求められる理由を整理します。

■ 実務での必要性

シーン 説明
組織図 社長から末端社員までの階層をたどりたい
カテゴリ管理 ECサイトの「カテゴリ→サブカテゴリ→商品」構造
ファイル構造 フォルダ→サブフォルダ→ファイルの一覧取得
ナビ表示 パンくずリストなど、上位から下位へ構造を表示したい

■ 試験での必要性(午後問題)

  • 「親→子→孫ノードを辿るロジック」をSQLで正確に書けるか
  • 「ID/親ID」形式の表を読み取り、再帰構造と認識できるか
  • 「構造をたどる処理の流れ」を日本語で説明できるか

■ 再帰的SQLの価値

単にSQLの文法を覚えるのではなく、「ツリー構造の走査方法」「繰り返し処理の理解」「階層の全体像を出力する力」など、構造的な考え方を身につける訓練になります。

再帰的SQLを使うべき/避けるべきケース│試験対策での判断基準

再帰的SQLは非常に強力な機能ですが、「どんなときでも使うべき」というわけではありません。試験では「これは再帰SQLで解くべきか?」という判断が問われることがあります。このセクションでは、「再帰を使う/使わない」判断基準を実例ベースで整理します。

■ 再帰的SQLが適しているケース

シチュエーション 内容
階層構造の探索 上司―部下、ディレクトリ構造、親カテゴリ―子カテゴリ など
ツリー構造の出力 ノードから全ての子ノードを一覧にする場合
終端まで到達するルートを列挙したい たとえば「A→B→C→D」という経路を1行ずつ確認したいとき

■ 再帰的SQLを避けるべきケース

シチュエーション 理由
階層が深すぎる or データ量が非常に多い 処理時間が長くなり、パフォーマンスに影響
階層構造が不要な集計・JOIN 単純な結合や集計で済むなら、再帰は過剰設計
終了条件が不明確 or ループしそうなデータ 無限ループの危険がある(テストにありがちなトラップ)

■ 試験での「判断のコツ」

  • 問題文に「階層」「構造」「繰り返し」「親子関係」「すべての関連要素を列挙」といったキーワードがあれば、再帰SQLの可能性が高い
  • 表形式で「ID/親ID」の形になっているときはツリー構造を想定する
  • 「再帰を使わないと解けない」問題は限られており、多くは「再帰でも解けるが、非再帰でも可」のパターンがある

■ 試験での“罠”に注意!

  • UNIONUNION ALLの違いを問う選択肢
  • 再帰部で結合条件をミスらせるパターン
  • 終了条件が指定されていない→無限再帰になるケース
  • 列の数が揃っていないエラー(ヒントに注目)

試験で狙われやすい再帰的SQLのひっかけパターンと解き方のコツ

応用情報技術者試験の午後問題では、「SQLの構文そのもの」よりも、「読み違い」や「判断ミス」を誘うようなひっかけ方がよく見られます。再帰的SQLに関しても、典型的なパターンがいくつか存在します。

■ よくあるひっかけパターン

パターン 解説
UNIONを使わせる選択肢 UNION ALLでなければ再帰処理は途中で止まる(重複が消える)
再帰部のJOIN条件にミスがある 親子関係の結び方が逆になっているなど、結果が空になる
終了条件が曖昧 WHERE句がなくループし続ける危険、特にLEVELなどの制御がない場合
列数・型が一致しない アンカー部と再帰部のSELECT句で列の数がずれると即エラー

■ コツ1:アンカーと再帰部の「列名・順序・型」を確認

午後問題ではSQL文の一部だけが与えられ、残りを選択肢から選ぶ形式も多いです。このとき、最も重要なのが「列の一致」です。

アンカーと再帰部のSELECT文で、列数・順番・データ型が同じになっているか?
→ これが一致していないと、エラーになるか、結果が出ないケースになります。

■ コツ2:処理の流れを擬似コード的に書いてみる

-- 例:
1. 最初に「親IDがNULL」のレコードを取得
2. そのIDを使って「子ID = 親ID」のJOINを繰り返す
3. 終了条件は、JOINでマッチしなくなったとき

このように、問題文をSQLだけでなく「日本語の処理手順」に言い換えてみると、見落としが減ります。

■ コツ3:「1回目だけ実行される部分」がどこかを見極める

アンカー部は1回しか実行されません。そのため、そこにWHERE句やLIMIT句があると、その後の再帰処理に直接影響を与えることがあります。

■ 試験テクニック:迷ったらアンカー→再帰→最終SELECTの順に確認

  1. アンカー部:どこから始まっている?
  2. 再帰部:何をJOINしている?
  3. 最終SELECT:何を出力している?

再帰的SQLの理解まとめ│WITH RECURSIVE句で階層データを制す

再帰的SQLは、「階層構造」「ツリー構造」といったデータに強く、WITH RECURSIVE句を用いることで、従来のSQLでは難しかった処理も簡潔に表現できます。ただし、強力な一方で、書き方のルールや使いどころを誤ると結果が得られない、あるいは無限ループやエラーの原因にもなり得ます。

午後試験では「SQLの正確な構文知識」に加え、「処理の流れを追う力」「文脈から再帰が必要かを判断する力」が求められます。以下のポイントを意識しておくと良いでしょう。

■ 再帰SQLの攻略ポイントまとめ

  • WITH RECURSIVEは「アンカー部+再帰部」の2段構成
  • 必ずUNION ALLを使い、列数と型を合わせる
  • アンカー部は1回、再帰部は繰り返し実行される
  • 再帰が必要な構造かどうかは「ID/親ID」型の表をチェック
  • 終了条件やJOIN条件に不備があると意図通りに動かない
  • SQL全体を「手順」や「流れ」で理解するとミスが減る

実務でも再帰的SQLはデータ分析やシステム開発で重宝されるスキルです。応用情報の合格を目指すと同時に、現場でも通用する力をこの機会にぜひ養いましょう。

-ADHDの転職と資格取得