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初心者でもわかる:DNSゾーン情報とメールサーバ(送信・受信)を「住所録と郵便」で理解する

インターネットでメールを送ったり受け取ったりする仕組みは「当たり前」に使っていますが、
その裏側では「DNSゾーン情報」や「送信メールサーバ」「受信メールサーバ」といった専門的な仕組みが動いています。
ただ、これらの用語は少し難しく感じる人が多いのも事実です。

この記事では、DNSやメールサーバの仕組みを住所録と郵便の例えを使って、初めての方でも直感的に理解できるように整理しました。
「メールサーバ=受信サーバだけ?」という疑問や、「送信済みメールはどこに残るの?」といったモヤモヤも、一緒にスッキリさせていきましょう。

結論サマリー

  • ゾーン情報=ドメインの公式「住所録+登記簿」。A/AAAAが住所、CNAMEがニックネーム、MXが郵便局(受信先)。
  • 受信サーバ=郵便局。外部から届くメールを受け取り、ユーザーのメールボックスに保存(IMAP/POP)。
  • 送信サーバ=配達員。ユーザーが出したメールを相手の受信サーバへ中継。本文は保持せず、配送待ちキューのみ一時保存。
  • 保存場所:IMAPなら受信・送信済みともサーバに残る/POPなら端末に残る。SMTPサーバには残さない。
  • レンタルサーバでは送受信ともに「共用」構成が一般的。認証情報で利用者を識別。

DNSゾーン情報とは?(住所録+登記簿)

ゾーン情報は、特定ドメインの「どこに・どうやって」つながるかを世界へ知らせる公式リストです。

住所録(宛先情報)

  • A/AAAAレコード:本名の住所(ホスト名 → IPv4/IPv6のIPアドレス)
  • CNAMEレコード:ニックネーム(別名 → 本名)。
    ※ニックネームに問い合わせると必ず本名の住所(A/AAAA)を調べ直す。
  • MXレコード:郵便局(受信メールサーバ)の宛先。多くは mail.example.com のようなサブドメインを指定。
  • TXTレコード:表札・注意書き(SPF/DKIM/DMARCなど送信正当性の証明)。

登記簿(管理情報)

  • SOA:ゾーンの表紙(管理者、更新番号、同期ルールなど)
  • NS:管轄役所(権威ネームサーバのホスト名)。この役所が住所録の正本を持つ。

メールの流れを一枚で把握(図解)

【DNSゾーン情報】(住所録+登記簿)
  SOA / NS / A・AAAA(住所)/ CNAME(別名)/ MX(郵便局)/ TXT(SPF等)

ユーザー端末 ──SMTP(587/465)──▶ 送信サーバ(配達員)
                                     │ 中継のみ・本文は保存しない
                                     ▼
                               相手ドメインの受信サーバ(郵便局:MXで指定)
                                     │ 受け取ったらユーザーBOXへ保存
                          ──IMAP/POP──▶ 受信閲覧・同期
  

受信メールサーバ(Inbound):郵便局の役割

  • 役割:外部から届いたメールを受け取り、ユーザーごとのメールボックスへ保存。
  • 指定方法:ゾーン情報のMXレコードに書く。
  • 保存:IMAPならサーバに保持/POPなら端末にダウンロード(設定次第でサーバ削除)。
  • レンタルサーバ:共用の受信サーバを複数ドメインで共有し、内部でアカウントごとに振り分け。

送信メールサーバ(Outbound):配達員の役割

  • 役割:ユーザーが送るメールを相手先の受信サーバへ配送。
  • 指定方法:ゾーン情報(MX)には書かない。メールクライアントにSMTPサーバ名を設定。
  • 保存:本文は長期保存しない。配送不能時のみ送信キューに一時保持、成功したら削除。
  • レンタルサーバ:共通のSMTPを利用者で共有。認証情報で利用者を識別。

送信済みメール・受信メールはどこに残る?

IMAPの場合(サーバ保存型)

  • 受信:サーバのInbox
  • 送信済み:サーバのSent(複数端末で同期可能)

POPの場合(端末保存型)

  • 受信:端末に保存(設定によりサーバから削除)
  • 送信済み:端末の送信済みフォルダのみ(サーバには残らない)

SMTPサーバは中継のみで、履歴保存は行いません(ログと一時キューは除く)。

設計の実務ポイント

  • 自前運用:送信の到達率を上げるために SPF/DKIM/DMARC、逆引き(PTR)、固定グローバルIP、25番ポートの扱いに注意。
  • 現実解:受信は自前でも、送信は信頼済みのSMTPリレー(SendGrid/SES等)を使うと運用が安定。
  • 共用環境の留意点:他ユーザーのスパムで送信IPがブラックリスト入りする巻き添えリスク。送信制限(通数/時間)も要確認。

よくある質問(FAQ)

Q. 「メールサーバ=受信サーバ」と考えていい?

A. 文脈上そう呼ぶこともありますが、正確には「受信サーバ+送信サーバ」のセットでメールシステムです。

Q. CNAMEはURLを自動で書き換える?

A. いいえ。CNAMEはDNSレベルの別名で、必ず本名(A/AAAA)に解決しますが、ブラウザのURLはそのままです。リダイレクトはWebサーバ側の設定です。

Q. 送信サーバはゾーン情報(DNS)に書かないの?

A. はい。送信サーバはクライアント設定で指定します。DNS側はSPF/DKIM/DMARC(TXT)で「どのサーバから送信して良いか」を宣言します。

Q. SMTPサーバにメール本文は溜まる?

A. いいえ。中継のみで、配送できない間だけキューに一時保持します。配送完了後は削除されます。

本記事は、初心者がつまずきやすい「DNSとメールの境界」を、住所録と郵便の例えで整理しました。実運用では、到達率・運用コスト・セキュリティを踏まえ、受信と送信の分離やリレーサービス活用を検討するのが現実的です。

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