仕事・キャリアの悩み

「この会社でしか生きていけない」と思ったら危険な理由|会社に人生を握られない生き方<

毎朝、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に揺られながら、

ハル
「もし今、この会社をクビになったら自分の人生はどうなってしまうんだろう」
ハル
「上司に嫌われたら、家族を養っていけなくなる……」
と、言い知れぬ息苦しさを感じていませんか。

数年前の私は、まさにそんなギリギリの精神状態で働いていました。

世間には「さっさと起業して自由になろう!」「フリーランス最高!」といった、キラキラした意識高い系の情報が溢れていますよね。でも、家族がいて、毎月の住宅ローンの引き落としがあって、子どもの教育費もこれからかかってくる現役の会社員にとって、「じゃあ明日から会社辞めます」なんて無責任なリスクは絶対に取れません。「そんな綺麗事、こっちの身にもなって言ってみろよ」と、SNSをそっと閉じる日々でした。

当時の私は、毎日通勤カバンの奥底に、こっそりと「退職願」を入れた茶封筒を忍ばせて出勤していました。

別に、本気でその日に辞めてやろうと企んでいたわけではないんです。ただ、「いざとなったら、これを叩きつけて終わらせることもできるんだ」という、たった一枚の紙切れが、私のすり減った心を守る唯一の「お守り」だったのです。それくらい、「この会社にすがりつくしかない自分」が情けなくて、苦しかったのだと思います。

本稿では、当時の私のように「会社を辞めたいわけじゃないけれど、会社に生殺与奪の権を握られている状況から抜け出したい」と葛藤しているあなたに向けて、私が泥臭く検証してきた「会社に依存しないための生存戦略」を、綺麗事抜きで整理してお伝えします。

これは、会社を辞めるためのノウハウではありません。
あなたが今の会社で、上司の顔色に怯えずに、適当に(良い意味で)やり過ごすための「精神的な防具」を手に入れるための話です。

目次

「この会社でしか生きていけない」と思う状態は危険

「俺にはこの会社しかないんだから、波風立てずに我慢するしかない」。
そうやって自分を納得させようとしているなら、少し立ち止まって考えてみてください。実はその状態、あなたが思っている以上に、精神的にとても危ういバランスの上に成り立っています。

会社の評価が自分の価値そのものになる

かつての私は、半期に一度の人事評価が近づくたびに胃が痛くなっていました。「C評価をつけられたらどうしよう」「同期のあいつよりボーナスが低かったら、自分はダメな人間だ」。そんな風に、いつの間にか「会社からの評価=自分の人間としての価値」だと錯覚してしまっていたんです。

客観的に見れば、会社の評価なんて「その部署の、その期間の、特定の業務における相対的な結果」でしかありません。もっと言えば、上司のさじ加減ひとつでどうにでも転ぶ不確かなものです。それなのに、会社という狭い世界しか見えていないと、その不確かな評価基準に自分の全人格を委ねてしまうことになります。これは、本当に息が詰まる作業でした。自分の価値を他人に決められる人生は、底なし沼のように苦しいものです。

上司との相性で毎日が左右される

「あ、今日の部長、機嫌悪そうだな……」
朝、オフィスに入って上司の顔色をうかがう瞬間から、その日一日の気分が決まってしまう。こんな経験はありませんか?

どれだけ自分が真面目に仕事を頑張っていても、たまたま配属された部署の上司と反りが合わないだけで、毎日の出社が地獄に変わります。会社しか行き場がない状態だと、「この人に嫌われたら私の人生は終わりだ」という極端な思考に陥り、理不尽な要求にも作り笑いで応えるしかなくなります。相手の機嫌という、自分では一切コントロールできないものに人生のハンドルを握られている状態です。かつての私も、上司の足音が近づいてくるだけで動悸がしていた時期がありました。

人事異動や組織変更に怯えるようになる

春先や秋口の「内示」の時期になると、社内がざわつきますよね。
私も昔は、「あの部署に飛ばされたらどうしよう」「今のチームが解体されたら、また一から人間関係を作らなきゃいけない」と、見えない恐怖に怯えていました。

会社員である以上、人事異動は避けられません。しかし、「この会社でしか生きていけない」と思い込んでいると、異動の辞令がまるで「人生の宣告」のように重くのしかかってきます。本来なら単なる「働く場所の変更」に過ぎないはずのものが、自分の意志ではどうにもならない巨大な暴力のように感じてしまうのです。自分の人生の舞台が、見知らぬ役員会議の机上で勝手に決められていく恐怖は、依存状態だからこそ肥大化します。

「辞める」という選択肢が消える

一番恐ろしいのは、心も体も悲鳴を上げているのに、「辞める」というカードが頭の中から完全に消え去ってしまうことです。

過労で倒れる直前の同僚を見たことがあります。彼は「もう限界だ」とこぼしながらも、「でも、俺みたいな年齢で転職なんて無理だし、家族もいるから」と、ボロボロになりながら出社を続けていました。
選択肢が「今の会社で耐え抜く」のただ一つしかない状態は、人を極限まで追い詰めます。「逃げ道」がない密室に閉じ込められているようなものです。私がカバンに退職願を入れていたのも、無意識のうちにこの密室から「心の逃げ道」を作りたかったからに他なりません。

会社に嫌われないことが最優先になる

その結果、仕事の目的が「顧客のため」でも「自分の成長のため」でもなく、「会社(や上司)に嫌われないこと」にすり替わってしまいます。
おかしいと思うルールにも口をつぐみ、無駄な飲み会にも愛想笑いで参加し、自分の本音を押し殺し続ける。そうやって会社の色に染まれば染まるほど、「自分は他では通用しない人間なんだ」という呪縛がさらに強くなっていくという、最悪の悪循環に陥ってしまいます。かつての私も、ただひたすらに「波風を立てない無難な社員」を演じることに全エネルギーを使っていました。

会社だけに依存すると、人生の主導権を失う

なぜ、私たちはここまで会社での出来事に怯え、心をすり減らしてしまうのでしょうか。
色々と失敗と検証を重ねてきた今の私なら、その理由がはっきりとわかります。

それは、今の会社が悪いからでも、あなたのメンタルが弱いからでもありません。
単純に、「依存先が会社という『一つのカゴ』に集中しすぎているから」です。

収入源が会社だけになる

投資の世界には「卵を一つのカゴに盛るな」という有名な格言があります。一つのカゴを落としたら、すべての卵が割れてしまうからです。

これ、私たちの働き方にも全く同じことが言えます。毎月の給料という「たった一つの収入源」を会社に依存していると、万が一会社が傾いたり、理不尽な降格をされたりした瞬間、生活の基盤がすべて崩壊します。
「給料を止められたら明日から生きていけない」。この強烈な事実があるからこそ、私たちは会社に対して圧倒的に弱い立場(=服従するしかない状態)に置かれてしまうのです。過去の私が上司に言い返せなかった最大の理由も、「毎月25日の振り込みが止まったら家族が路頭に迷う」という恐怖でした。

人間関係が会社中心になる

平日は朝から晩まで会社の人と過ごし、週末も会社の同僚とゴルフや飲み会。
一見、充実しているように見えますが、これも実は危険な状態でした。私の過去がまさにそうだったのですが、人間関係が会社の人脈だけで完結してしまうと、話題はどうしても「社内の愚痴」や「誰が出世した」といった内向きなものばかりになります。
そして何より、会社で何かトラブルがあって孤立してしまった時、相談できる相手や逃げ込めるコミュニティが外に一つもないという孤独感に苛まれることになります。会社以外の「利害関係のない友人」がいない状態は、いざという時のセーフティネットがないのと同じです。

評価軸が会社内だけになる

先ほども触れましたが、「社内の評価=自分の価値」という思い込みは、依存先が一つしかないことの典型的な弊害です。
一歩外の世界に出れば、あなたの気配りや、コツコツと資料をまとめる能力を「素晴らしいスキルだ」と評価してくれる場所は必ずあります。しかし、会社という閉鎖空間にしか身を置いていないと、「上司から見てどうか」という一つのモノサシでしか自分を測れなくなってしまいます。私が初めて社外で小さなお金を稼いだとき、「会社の評価だけがすべてじゃないんだ」と肩の荷が下りた感覚は、今でも鮮明に覚えています。

居場所が会社だけになる

「自分を必要としてくれる場所が、このオフィスにしかない」。
そう思い込んでいると、どんなに理不尽な扱いを受けても、その居場所に必死にしがみつくしかなくなります。定年退職した後に、急にやることがなくなって急激に老け込んでしまう方の話を聞くことがありますが、これも「会社以外の居場所」を持たずに何十年も走り続けてしまった結果なのだと思います。私自身、「会社員としての自分」の肩書きを取ったら、何もない空っぽの人間なのではないかと本気で怯えていました。

だから会社の中の出来事が人生全体に見えてしまう

収入、人間関係、評価、居場所。
この人生を構成する重要な要素のすべてを「今の会社」という一つのカゴに放り込んでしまうとどうなるか。

上司のちょっとした不機嫌や、不本意な人事異動といった「会社の中の小さな出来事」が、まるで「自分の人生そのものを揺るがす大事件」のように感じられてしまうのです。
かつての私が通勤電車の中で絶望していたのも、決して私が弱かったからではなく、自分の全人生を会社に預けきってしまっていたからでした。

人生の主導権を会社から自分に取り戻すためには、この「一つへの過剰な依存」を解きほぐしていく必要があります。

私も一時期、鞄の中に辞表を入れて出勤していた

「会社への依存を分散させよう」なんて、まるで分かったような口をきいていますが、少し前の私にはそんな器用な芸当は到底できませんでした。

毎日、片道1.5時間の通勤電車に揺られながら、スマホで「仕事 辞めたい」「転職 30代 限界」と検索してはため息をつく日々。上司の理不尽な詰めにも「申し訳ありません」と反射的に頭を下げ、心の中はどす黒い感情で渦巻いていました。

そんな私が、自分の精神を保つために編み出した、とても歪で、でも当時の私にとっては唯一の「防衛策」があります。
それが、「鞄の中に辞表を入れた茶封筒を忍ばせておくこと」でした。

本当に辞めたかったわけではない

「よし、今日こそあのパワハラ上司の机にこの封筒を叩きつけてやる!」
……そんなドラマみたいな勇気、住宅ローンを抱えたただの平社員の私にあるわけがありません。

朝、家を出る時は「今日こそ言ってやる」と息巻いていても、会社の最寄り駅に着く頃には「やっぱり来月は車検もあるし、ここで辞めたら生活が……」と急に現実に戻される。結局、カバンの奥底に手を入れて、茶封筒のガサガサした感触だけを指先で確かめて、そのままオフィスのドアを開ける。そんな情けない毎日を繰り返していました。

本音を言えば、「本当に辞めたかった」わけではなかったのだと思います。ただ、現状を変える勇気もスキルもない自分への苛立ちを、どうにかしてごまかしたかっただけなのです。

ただ「最悪辞められる」と思いたかった

では、なぜわざわざ辞表なんて持ち歩いていたのか。
それは、「自分にはいざとなれば辞める権利があるんだ」と、自分自身に言い聞かせるための「お守り」だったからです。

理不尽な要求をされても、理不尽に怒鳴られても、カバンの中にあの茶封筒があると思うだけで、「まあ、いざとなればこれを叩きつけて翌日から来ない権利が俺にはあるしな」と、ほんの少しだけ心の中で上司を見下すことができました。
それは本当に小さな、虚勢のようなものでしたが、当時の私にとってはギリギリで正気を保つための命綱でした。

辞表は逃げ道ではなく、選択肢の象徴だった

後になって冷静に振り返ってみると、あの茶封筒は単なる「現実逃避の道具」ではありませんでした。
私が欲しかったのは、会社を辞めるという「結果」ではなく、「辞めるか、残るかを自分で選べる」という「選択肢」だったのだと気づきました。

「辞めたい時に辞められる」というカードを(たとえそれが精神的なハッタリであったとしても)自分の手札として持っている状態。それこそが、会社という閉鎖空間で息継ぎをするための、唯一の換気口だったのです。

辞められない状態が一番苦しかった

私が本当に苦しかったのは、仕事の量が多かったからでも、残業が辛かったからでもありませんでした。
「今の私には、この会社にしがみつく以外の選択肢が一つもない」という、がんじがらめの状況そのものが苦しかったのです。

出口のないトンネルを延々と歩かされているような絶望感。これがあと何十年も続くのかと考えた時の、吐き気にも似た不安。
「辞められない」という思い込みは、確実に人の心を削っていきます。そして恐ろしいことに、削られれば削られるほど視野が狭くなり、さらに「もうここしか生きる場所はない」と頑なに思い込むようになってしまうのです。

人は選択肢があるだけで少し強くなれる

だからこそ、「いつでも辞められる」という選択肢を持つことは、会社員にとって最強の防具になります。
実際に辞めるかどうかはどうでもいいんです。「辞めようと思えば辞められるけど、今は『あえて』残ってやっている」と本心から思えた時、人は見違えるほど強くなれます。

上司の理不尽な一言も、「まあ、最悪辞めるしな」と思えれば、ただの「かわいそうなおじさんの戯言」として聞き流せるようになります。選択肢があるだけで、私たちは会社の中での立ち振る舞いを、自分の意志で変えることができるのです。

会社もいつでも変われる、という意識が最強

さて、ここからが本題です。
「いつでも辞められる」という選択肢が精神衛生上どれほど重要かをお話ししましたが、だからといって「じゃあ、明日会社を辞めてフリーランスになりましょう!」なんて乱暴なことを言うつもりはありません。

私たちが目指すべきは、もっとズルく、もっと賢く、会社を利用し尽くすポジションです。

会社を辞める前提で働く必要はない

世の中の「副業ノウハウ」や「キャリア論」の多くは、「最終的には独立・起業を目指そう!」という前提で語られがちです。でも、これってすごく極端だと思いませんか?

毎月決まった日に、安定して数十万円が振り込まれる。社会保険も半分負担してくれて、有給休暇まである。会社員という身分は、既得権益の塊です。こんなにおいしいプラットフォームを、わざわざ自分から手放す必要はありません。
だから、「辞めるために頑張る」のではなく、「いまの安定した環境をキープしたまま、どうやって心に余裕を持つか」を考えるのが、私たち凡人にとって最もコスパの良い生存戦略なのです。

でも「辞められない」と思い込むのは危険

ただし、その「おいしいプラットフォーム」に居座り続けるためには、一つだけ絶対にやってはいけないことがあります。
それが、「自分にはこの会社しかない」「ここで失敗したら終わりだ」と深く思い込んでしまうことです。

「辞める前提」で働く必要はありませんが、「絶対に辞められない前提」で働くのは、あまりにも危険すぎます。先ほども言ったように、足元を見られ、会社に人生の主導権を完全に握られてしまうからです。

残ることと、しがみつくことは違う

ここでぜひ覚えておいてほしい、重要な線引きがあります。
それは、「会社に残ること」と「会社にしがみつくこと」は、似ているようで全く違うということです。

「しがみつく」というのは、他に選択肢がないから、恐怖心からそこにすがりつくしかない状態。
一方の「残る」というのは、「他に行くこともできるし、一人で稼ぐこともできるけど、いまはここが一番自分にとって都合が良いから、あえて滞在している」という、主体的な状態です。

外から見れば、どちらも「同じ会社で働いている人」に過ぎません。しかし、内面の精神状態は天と地ほどの差があります。

会社に選ばれる側ではなく、会社を選ぶ側でいる

私が泥臭く副業や情報発信を検証し続けてきた最大の理由は、まさにこの「しがみつく自分」から「選んで残る自分」へシフトチェンジするためでした。

「会社に雇ってもらっている」のではなく、「私が私の人生の戦略として、この会社を今のメインの取引先として選んでいる」。
このマインドセットを持てるようになると、会社との関係性は劇的に変わります。理不尽な評価に怯える必要もなくなり、必要な時には堂々と「No」と言えるようになります。だって、最悪その取引先(会社)との契約が切れても、他にも生きていく術があるのですから。

今の会社に残ることも、自分で選んだ結果にする

あなたにも、この状態を目指してほしいと心から思っています。

「住宅ローンがあるから辞められない」
「家族がいるから我慢するしかない」

過去の私はそうやって、すべてを「環境のせい」にして、思考停止に陥っていました。でも、そうやって自分の人生のハンドルを他人(会社や環境)に預けているうちは、本当の安らぎは絶対に訪れません。

「私は今、自分の意志でこの会社に残ることを選んでいる」。
そう胸を張って言えるようになるために、私たちが具体的に何をすべきか。次章からは、その具体的なアクションである「依存先の分散」について、私の痛い失敗談も交えながらお話ししていきます。

自立とは何でも一人でできることではない

「会社に依存しない生き方」なんて言葉を聞くと、過去の私は決まってこう思っていました。
「つまり、会社に頼らずに自分一人の力で稼げる『強い人間』になれってことでしょ? 無理に決まってるじゃん」と。

SNSを開けば、「フリーランスとして独立しました!」「自分の力で月収100万達成!」みたいな、まぶしすぎる成功体験ばかりが流れてきます。そういうのを見るたびに、「自分には特別なスキルもないし、一人で生きていく甲斐性なんてない」と、さらに自己嫌悪に陥るという負のループにハマっていました。

でも、泥臭く色々な働き方を検証していく中で、私は自分の大きな勘違いに気がつきました。私たちが目指すべき「自立」は、決して「一人で生きること」ではなかったのです。

自立=誰にも頼らないことではない

「誰にも頼らず、自分の足だけで立つ」。
これを自立だと定義してしまうと、私たち凡人は永遠に自立なんてできません。だって、一人でできることなんてたかが知れているからです。

私が一時期、「会社に頼らないために!」と意気込んで、睡眠時間を削って何でもかんでも一人で抱え込み、結果的に体を壊しかけたことがありました。その時、ふと気づいたんです。「これ、会社に依存している時より辛いぞ」と。
「誰にも頼らない」という極端な思考は、自分自身を孤立させ、かえって精神的な余裕を奪ってしまう危険な罠でした。

本当の自立は依存先を複数持つこと

ある時、私の価値観を根本からひっくり返す言葉に出会いました。
「自立とは、依存先を増やすことである」
(小児科医の熊谷晋一郎さんの言葉として有名ですね)

これを初めて聞いた時、雷に打たれたような衝撃を受けました。
そうか、今の私が苦しいのは「会社に依存しているから」ではない。「依存先が会社一つしかないから」なのだと。

健常者が「自立」して見えるのは、実は誰にも頼っていないからではなく、「スーパー」「電車」「水道局」「友人」「家族」など、無数のものに少しずつ依存しているから、一つ一つへの依存度が薄まって自立しているように見えるだけだ、という話です。
これ、私たちのキャリア戦略において、とんでもなく重要な考え方だと思いませんか?

一つの依存先を失っても生きていける状態を作る

「会社にしか依存していない状態」というのは、一本の細いロープに全体重をぶら下げているようなものです。そのロープ(会社)が切れたら、真っ逆さまに落ちてしまいます。だから、そのロープを握る手が擦り切れて血が出ても、必死にしがみつくしかありません。

でも、もし自分がぶら下がっているロープが10本あったらどうでしょう。
1本がプツンと切れても、「まあ、あと9本あるし」と、そこまで焦ることはありませんよね。
「会社に怯えない状態」を作るためには、強靭な一本のロープ(自分一人の力)を鍛え上げるのではなく、細くてもいいからロープの数を増やしていくことが大正解だったのです。

会社、家族、友人、副業、資産、スキルを分散させる

私たちが持つべき「ロープ(依存先)」は、多ければ多いほど良いです。
毎月の給料は会社に依存しつつ、週末の楽しみは地元の友人に依存する。心の安らぎは家族に依存し、さらに「月5万円の副収入」という新しい依存先(副業)を作る。

こうやって、自分の人生を構成する要素を少しずつ分散させていくと、不思議なことに、一つ一つの要素に対する「執着」や「恐怖」が薄れていきます。
「会社で上司に理不尽に怒られたけど、週末は趣味の仲間と笑い合えるし、ネット上で私が作ったものを買ってくれるお客さんもいる」。
この分散状態こそが、私がたどり着いた、凡人のための「最強の自立」の形です。

副業は会社以外の依存先を作る最適解

では、どうやって「会社以外のロープ(依存先)」を具体的に増やしていけばいいのか。
手軽に始められて、かつ効果が絶大だったのが、私にとっては「副業」でした。

当時の私は「副業=お金を稼ぐための手段」としか捉えていませんでしたが、実際にやってみて痛感しました。副業の本質的な価値は、お金そのものよりも、「会社以外のコミュニティと評価軸を手に入れられること」にあったのです。

会社以外の収入源ができる

もちろん、お金は重要です。
私も初めて副業で「月1万円」を稼いだ時、会社の給料口座とは別の口座にチャリンと振り込まれた数字を見て、震えるほど感動しました。

「なんだ、たった1万円か」と思うかもしれません。でも、この「会社を介さずに得た1万円」の精神的価値は、会社の給料の10万円アップに匹敵します。
なぜなら、「いざとなれば、自分の力で少しでもお金を生み出せる」という事実が、会社の給料に対する過剰な依存(=命綱)を、ほんの少しだけ緩めてくれるからです。この「月1万円のロープ」があるだけで、会社への恐怖は驚くほど軽減されます。

会社以外の評価軸ができる

私が副業をやって一番救われたのは、これかもしれません。

会社にいると、「上司からの評価」という単一のモノサシでしか自分の価値を測れなくなります。私は会社で「要領が悪い」「もっとテキパキ動け」と怒られてばかりで、完全に自信を喪失していました。
しかし、副業としてブログを書いたり、ネット上で小さなスキルを提供したりしてみると、全く違う評価が返ってきたのです。
「あなたの記事に救われました」「丁寧な対応をありがとうございます」。

会社のモノサシでは「ダメ社員」だった私が、別の場所では「誰かに感謝される存在」になれた。評価軸を分散させたことで、「会社での評価が私の全てではない」と、心から腑に落ちた瞬間でした。

会社以外で通用するスキルが身につく

「自分には会社でしか通用しないスキルしかない」という思い込みも、副業が綺麗に打ち砕いてくれました。

例えば、会社で毎日イヤイヤ作っていた議事録や資料作成のスキル。これ、クラウドソーシングなどのプラットフォームに出れば、立派な「お金になるスキル」として重宝されます。
「あ、私が当たり前のようにやっていたことって、外の世界では価値があるんだ」。
この事実に気づけたことは、私にとって大きな財産になりました。会社の中で何気なくやっている業務も、「これは副業のあの場面で使えるかもしれない」という視点を持つだけで、やらされ仕事ではなく、自分のためのスキルアップに変換できるようになったのです。

会社以外の人間関係が生まれる

副業を通じて、SNSやオンラインのコミュニティに参加するようになると、利害関係の全くない「ナナメの人間関係」がたくさん生まれます。

年齢も、住んでいる場所も、本業の職業も違う人たち。彼らと話していると、「世の中には、今の私の会社とは全く違う常識で生きている人がこんなにいるんだ」と、視野が一気に広がります。
会社の人間関係でトラブって落ち込んだ時も、「まあ、私にはあのコミュニティのみんながいるし」と思える逃げ場(サードプレイス)があることは、強烈な精神安定剤になります。

「会社を変えても何とかなる」という自信になる

収入源、評価軸、スキル、人間関係。
これらを会社以外に「分散」させた結果、私の中に芽生えたのは、「最悪、この会社を辞めて別の会社に行っても、あるいはしばらく休んでも、何とかなるだろう」という、確固たる自信でした。

この自信を手に入れた瞬間、カバンの中の茶封筒(退職願)は、文字通りただの紙切れになりました。
もはや、そんなものに頼らなくても、私の心の中には「副業」という、自分自身で作り上げた強力な「防具」がいくつも装備されていたからです。

会社にしがみついていた私は、こうして「会社に怯えない状態」を少しずつ作り上げていきました。
しかし、この副業の進め方にも、かつての私がどっぷりとハマってしまった「大きな落とし穴」があります。次章では、その失敗談についてお話しします。

副業も一つに依存しない方がいい

さて、ここまで読んで「よし、まずは副業を始めて会社以外の依存先を作ろう!」と思っていただけたなら嬉しいのですが、ここで一つ、過去の私が豪快にハマった「落とし穴」についてお話しさせてください。

「会社に依存するのは危険だ!」と気づいた当時の私は、意気揚々と副業にのめり込みました。そして、ある特定の副業で月に数万円を稼げるようになった瞬間、「これで会社に怯えなくて済む!」と完全に油断してしまったのです。

しかし、その安心感は長くは続きませんでした。

会社一本足が危険なら、副業一本足も危険

当時の私は、特定のクライアントからの業務委託案件(データ入力や簡単なライティング)に全力投球していました。
毎月安定して5万円ほどの報酬が振り込まれるようになり、「この調子でいけば、いずれ会社を辞められるかも」なんて浮かれていた矢先のことです。突然、そのクライアントから「社内体制の変更により、来月で契約を終了させていただきます」という一通のメールが届きました。

その瞬間、目の前が真っ暗になりました。
必死に作り上げた「会社以外の命綱」が、たった一通のメールであっけなく切れてしまったのです。
冷静に考えれば当たり前のことでした。「会社からの給料」という一本足が危険なら、「たった一つの副業」という一本足も同じように危険に決まっています。依存先を「会社」から「特定の副業」にスライドさせただけで、本質的な「依存状態」からは全く抜け出せていなかったのです。

ブログだけに依存しない

この失敗を機に、私は「依存先の分散」を副業の中にも取り入れるようにしました。

例えば、ブログアフィリエイト。これは私が長年取り組んでいるものですが、ブログのアクセス数はGoogleの検索アルゴリズムのアップデート一つで天国から地獄へ真っ逆さまに落ちることがあります。
昨日まで月10万円稼いでいたブログが、翌日には収益ゼロになる。そんな残酷な世界です。「ブログだけで生きていく!」と意気込んで全リソースを注ぎ込むのは、会社の評価だけにすがりつくのと同じくらいハイリスクなギャンブルです。

SNSだけに依存しない

SNSも同じです。
「これからはTwitter(X)だ!」「いや、Instagramの時代だ!」と、一つのプラットフォームのフォロワー数や収益化だけに依存していると、ある日突然のアカウント凍結や、規約変更によって全てを失う危険性があります。
一生懸命育てたアカウントが、運営側の気まぐれ一つで吹き飛ぶ。これもまた、「プラットフォーム(=他者)への過剰な依存」の典型例です。

一つの案件、一つの取引先に依存しない

先ほどの私の失敗談のように、クラウドソーシングなどで一つの取引先からの案件に依存するのも避けるべきです。
そのクライアントの業績が悪化したり、担当者が変わったりするだけで、あなたの副収入はゼロになってしまいます。
「あの人が毎月仕事をくれるから安心」というのは、会社員が「この会社にいれば定年まで安心」と思い込んでいるのと同じ、危険な思考停止です。

小さく複数の仕事を持つことが大事

では、どうすればいいのか。
結論は、「副業もさらに分散させること」です。

ブログで月1万円稼ぎ、SNSのPR案件で月1万円稼ぎ、クラウドソーシングで3社からそれぞれ1万円ずつ稼ぐ。
合計5万円の収入でも、「1つの副業で5万円」と「5つの副業で1万円ずつ」では、精神的な安定度が全く違います。
どこか一つがダメになっても、「まあ、他が残っているし、また新しい柱をゆっくり探せばいいや」と構えることができる。この「何かが途切れても致命傷にならない状態」を、小さく複数組み上げていくこと。それが、真の意味で「何にも怯えない最強の防御陣形」になります。

会社を辞めるためではなく、会社に怯えないために副業をする

ここまで、泥臭い失敗談も交えながら「依存先を分散させる戦略」をお伝えしてきました。
最後に、私が最も強調したい「副業の本当の目的」についてお話しします。

副業は退職準備だけではない

世間一般のイメージでは、副業は「独立・起業するための準備期間」として語られることが多いです。
しかし、ここまで読んでいただいたあなたなら、もうお分かりですよね。私たちが目指すのは、そんな大それた「起業家デビュー」ではありません。

「起業しなければならない」「いつか会社を辞めるために稼がなければならない」。
そうやって自分を追い込んでしまうと、副業自体が「新たなプレッシャー(ストレス源)」になってしまいます。残業で疲れた体にムチ打って、睡眠時間を削ってまで副業にのめり込む。それって、会社で過労死寸前まで働かされている状態と何が違うのでしょうか。

副業は精神的な保険になる

私たち凡人会社員にとって、副業とは「会社で適当に(良い意味で)やり過ごすための精神的な保険」です。

複数の小さな依存先を持ち、会社以外からも必要とされ、少額でも自力で稼げるという自信。
この「見えない防具」を装備して会社に出勤した時、あなたの目に映る職場の景色は劇的に変わるはずです。

会社で無理に評価を取りに行かなくてもよくなる

かつての私は、少しでも上司に気に入られようと、自分が納得していない仕事でも「やります!」と手を挙げ、週末までサービス残業をしていました。評価を落とすことが、何よりも怖かったからです。

でも、副業という「別の評価軸・収入源」を手に入れてからは、「まあ、ここで無理してC評価からB評価に上がっても、給料なんて数千円しか変わらないしな。それなら、定時で帰って副業のブログを書いた方がマシだ」と、スッパリ割り切れるようになりました。
会社の評価を「自分の全て」から「ゲームの一要素」くらいに格下げできたことで、肩の力が抜け、結果的に本業でも焦らず冷静にパフォーマンスが出せるようになるという、嬉しいオマケまでついてきました。

嫌なものを嫌と言える余白ができる

そして何より、「嫌なものを断る勇気」が持てるようになります。

生産性のない飲み会。誰の役にも立たない社内政治のための資料作り。
昔は断れずにヘラヘラ笑って引き受けていましたが、今なら「すみません、今日はちょっと予定(副業)があるので帰ります」と、サラッとかわせるようになりました。
「この会社に嫌われたら終わりだ」という呪縛が解けたことで、自分の時間と精神衛生を守るための「No」が、自然と言えるようになったのです。

人生の主導権を取り戻せる

会社を辞めるか、残るか。
その選択権は、会社や上司が握っているのではありません。複数の依存先を手に入れた「あなた自身」が握っているのです。

「いざとなれば別の場所で生きていける。でも、今は安定した給料と社会保険というメリットを手放すのがもったいないから、あえてこの会社を『利用』して滞在してやっている」。
このマインドセットに到達できた時、あなたは本当に意味で「会社に人生を握られている状態」から抜け出すことができます。

まとめ:「この会社しかない」から「会社も選べる」へ

「この会社でしか生きていけない」

満員電車の中でそう思い詰めていた過去の私は、まさに人生の主導権を完全に会社に明け渡していました。
上司の評価、人事異動、職場の人間関係、会社の業績。自分ではどうにもコントロールできないものに、自分の人生という船の舵を握らせて、荒波に怯えるだけの毎日でした。

でも、泥臭く色々な働き方を検証し、失敗を繰り返してきた今なら、あの頃の私に、そして今同じように苦しんでいるあなたに、はっきりと伝えられます。

本当の自立とは、何でも一人でできる「強い人間」になることではありません。
依存先を複数持ち、「一つに寄りかかりすぎない状態」を作ることです。

会社以外にも、月1万円の収入源を持つ。
会社以外にも、自分を認めてくれる評価軸を持つ。
会社以外にも、利害関係のない人間関係と居場所を持つ。

そのための手段として、副業は私たち会社員にとって最高のツールになります。
もちろん、過去の私のように「一つの副業」にのめり込んで一本足打法になるのは危険です。ブログでも、SNSでも、ライティングでも、小さく稼ぐスキルでも構いません。小さくてもいいから、会社以外に複数の「依存先(ロープ)」を張っていくのです。

繰り返しますが、これは「会社を辞めるための準備」ではありません。
あなたが、今の会社に怯えずに、自分の人生の主導権を取り戻すための「生存戦略」です。

会社に残ることもできる。
会社を変えることもできる。
副業を少しずつ伸ばすこともできる。

そんな風に、人生の選択肢を自分の手のひらに並べられる状態こそが、理不尽な環境を生き抜くための最強の防具になります。

会社もいつでも変われる。
そう思える余裕を持った状態で、あえて「今の会社を都合よく利用して残る」ことを選ぶ。

それこそが、私たち凡人にとって一番賢く、そして一番強い働き方なのだと私は信じています。
まずは小さく、会社以外の「新しいロープ」を一本、探してみませんか。


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